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40年ぶり改正相続法-遺留分侵害額請求権等に関する見直し部分法律案紹介」の続きで、遺留分侵害額請求権等に関する見直し部分法律案紹介です。
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四 遺留分制度の見直し
1 遺留分の帰属及びその割合
(一)兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、2(一) に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の(1)又は(2)に掲げる区分に応じてそれぞれ当該(1)又は(2)に定める割合を乗じた額を受けるものとすること。(第1042条第1項関係)
(1)直系尊属のみが相続人である場合3分の1
(2)(1)に掲げる場合以外の場合2分の1
(二)相続人が数人ある場合には、(一)(1)又は(2)に定める割合は、これらにその各自の法定相続分を乗じた割合とするものとすること。(第1042条第2項関係)
2 遺留分を算定するための財産の価額
(一)遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額とするものとすること。(第1043条第1項関係)
(二)条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って、その価格を定めるものとすること。(第1043条第2項関係)
3 遺留分を算定するための財産の価額に算入する贈与の範囲
(一)贈与は、相続開始前の1年間にしたものに限り、2 の規定によりその価額を算入するものとすること。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、1年前の日より前にしたものについても、同様とするものとすること。(第1044条第1項関係)
(二)民法第904条の規定は、(一)に規定する贈与の価額について準用するものとすること。(第1044条第2項関係)
(三)相続人に対する贈与についての(一)の規定の適用については、(一)中「1年」とあるのは「10年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」とするものとすること。(第1044条第3項関係)
4 負担付贈与がされた場合における遺留分を算定するための財産の価額に算入する贈与の価額等
(一)負担付贈与がされた場合における2(一)に規定する贈与した財産の価額は、その目的の価額から負担の価額を控除した額とするものとすること。( 第1045条第1項関係)
(二)不相当な対価をもってした有償行為は、当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知ってしたものに限り、当該対価を負担の価額とする負担付贈与とみなすものとすること。(第1045条第2項関係)
5 遺留分侵害額の請求
(一)遺留分権利者及びその承継人は、受遺者( 特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下四において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができるものとすること。(第1046条第1項関係)
(二)遺留分侵害額は、1の規定による遺留分から次の(1)及び(2)に掲げる額を控除し、これに(3)に掲げる額を加算して算定するものとすること。(第1046条第2項関係)
(1)遺留分権利者が受けた遺贈又は民法第903条第1項に規定する贈与の価額
(2) 民法第900条から第902条まで、第903条及び第904条の規定により算定した相続分に応じて遺留分権利者が取得すべき遺産の価額
(3)被相続人が相続開始の時において有した債務のうち、民法第899条の規定により遺留分権利者が承継する債務(6(三)において「遺留分権利者承継債務」という。)の額
6 受遺者又は受贈者の負担額
(一)受遺者又は受贈者は、次の(1)から(3)までの定めるところに従い、遺贈(特定財産承継遺言による財産の承継又は相続分の指定による遺産の取得を含む。以下四において同じ。)又は贈与(遺留分を算定するための財産の価額に算入されるものに限る。以下四において同じ。)の目的の価額(受遺者又は受贈者が相続人である場合にあっては、当該価額から1の規定による遺留分として当該相続人が受けるべき額を控除した額) を限度として、遺留分侵害額を負担するものとすること。(第1047条第1項関係)
(1)受遺者と受贈者とがあるときは、受遺者が先に負担する。
(2)受遺者が複数あるとき、又は受贈者が複数ある場合においてその贈与が同時にされたものであるときは、受遺者又は受贈者がその目的の価額の割合に応じて負担する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
(3)受贈者が複数あるとき(?に規定する場合を除く。) は、後の贈与に係る受贈者から順次前の
贈与に係る受贈者が負担する。
(二)民法第904条、2(二)及び4の規定は、(一)に規定する遺贈又は贈与の目的の価額について準用するものとすること。(第1047条第2項関係)
(三)5(一)の請求を受けた受遺者又は受贈者は、遺留分権利者承継債務について弁済その他の債務を消滅させる行為をしたときは、消滅した債務の額の限度において、遺留分権利者に対する意思表示によって(一)の規定により負担する債務を消滅させることができるものとすること。この場合において、当該行為によって遺留分権利者に対して取得した求償権は、消滅した当該債務の額の限度において消滅するものとすること。( 第1047条第3項関係)
(四)受遺者又は受贈者の無資力によって生じた損失は、遺留分権利者の負担に帰するものとすること。(第1047条第4項関係)
(五)裁判所は、受遺者又は受贈者の請求により、(一)の規定により負担する債務の全部又は一部の支払につき相当の期限を許与することができるものとすること。(第1047条第5項関係)
7 遺留分侵害額請求権の期間の制限
遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅するものとすること。相続開始の時から10年を経過したときも、同様とするものとすること。(第1048条関係)
8 その他
民法第1044条を削るものとすること。
六 特別の寄与
1 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び民法第891条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下六において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下六において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができるものとすること。(第1050条第1項関係)
2 1の規定による特別寄与料の支払について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができるものとすること。ただし、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から六箇月を経過したとき、又は相続開始の時から1年を経過したときは、この限りでないものとすること。(第1050条第2項関係)
3 2本文の場合には、家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定めるものとすること。(第1050条第3項関係)
4 特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができないものとすること。(第1050条第4項関係)
5 相続人が数人ある場合には、各相続人は、特別寄与料の額に当該相続人の法定相続分(相続分の指定がある場合は指定相続分)を乗じた額を負担するものとすること。(第1050条第5項関係)
七 その他
その他所要の規定の整備をするものとすること。