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小松亀一法律事務所は、「相続家族」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

相続財産

相続財産に関する費用についての参考判例紹介2

○「相続財産に関する費用についての参考判例紹介1」の続き裁判所判断1です。


亡A━┳━亡E(h7.7.24 死去)
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┏━━╋━━┳━━┓
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養  養  養  長
子  子  子  女
亡  D  被  原
C     告  告



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第3 当裁判所の判断 
1 認定事実 
(1) 亡E死亡の際の経緯
 
ア 亡Eと亡Aは,平成5年に大阪府豊能郡において建てた墓に亡Aが亡Bを含むA家の遺骨を埋葬したことで意見が対立していた(原告本人)。亡Eは,平成7年5月6日,「私の部屋の中の物品は,すべて我が娘原告に渡して保管してもらいたい。私の葬式は,私の貯金を使い,H君と原告に取りしきってもらいたい。私の墓は,原告にたててもらいたい。」旨のメモを残した(甲7)。Hは,原告の夫である(弁論の全趣旨)。 

イ 亡Eは,同年7月24日に死亡した(争いのない事実)。 

ウ 原告は,亡Eの告別式のあった同月25日の夜,亡Aから言われたとして,兵庫県川西市にあった亡Aの自宅から亡Eの遺骨及び香典を持ち帰り,後日,亡Eの荷物を引き取った(甲10)。 
 亡Eの葬儀費用(後記エの香典返しの費用を除く。)及び法要費用は,亡Eの子らが負担したことはなく,亡Eの遺産から支出された(弁論の全趣旨)。 

エ 亡Aは,亡Eが死亡した後の同年8月下旬,兵庫県芦屋市にあった当時の原告の自宅を2度訪れたが,1度目は留守であったため合い鍵で入り,2度目は在宅している原告が鍵を開けなかったため,書置き(甲8)を残して帰った。その書置きには,「今日はあやまりに来ました。すみません。香典袋の住所と金額がわかりましたので大変助かりました。…袋は必ずお返しします。香典返しのことですが,まだ発送してなかったら,私の方で全部発送しようと思いますので,そのことだけは知らせてください。お金はもうありませんので誰かに借りるつもりです。あなたをこんなに追いつめて本当にすみません。…どこでこんなにこんがらかったのでしょう。」旨などが記載されていた。(甲10,乙30) 
 原告は,香典返しを発送し,原告が持ち帰った香典の中からその費用を支出した(弁論の全趣旨)。  

(2) 亡A死亡の際の経緯 
ア 亡Aは,生前,亡Cはすでに死亡し,Dは身体が弱く喘息,糖尿病や甲状腺がんで入退院を繰り返していたこと,原告との間の人間関係には問題があったことなどから,D及び被告に対し,自分の死後に相続人を含め皆に迷惑をかけたくないとして,自分の葬儀やその後の法要を亡Eと同様の方法で行い,その費用はすべて亡Aの預貯金や自宅の売却代金で充てるよう再三依頼し,また,家族の墓がバラバラにならないよう墓を建立して家族の遺骨を一緒に入れて欲しいと話していた(乙30)。 

イ 亡Aは,平成15年7月20日に死亡した(争いのない事実)。 

ウ D及び被告は,この当時,原告の住所や連絡先を知らなかった(乙30)。Dは,亡Aが死亡した日,原告の義兄Iに連絡し,原告に亡Aが死亡したことを伝えてもらった。原告は,その旨の連絡を受けたものの,Dや被告らに一切連絡することもせず,亡Aの葬儀にも出席しなかった(原告本人)。 

エ 被告は,亡Aの死亡後,平成15年7月23日までに預貯金合計733万5032円を解約等により引き出し,同年9月19日に亡Aが受給すべき恩給5万2333円を受領し,もって被告受領金合計738万7365円を取得した(争いのない事実)。 

オ 原告を除くD及び被告を含む法定相続人らは,上記アのとおりの亡Aの生前の意向を踏まえ,Dを喪主とし,香典は受け取らずに亡Eと同様の方法で葬儀や法要を行い,平成15年12月15日までに墓地を確保し,平成17年10月17日までに墓も建て,被告受領金をこれらの費用に充てた。なお,誰が祭祀承継者であるかは明らかではない。(乙30,被告本人,弁論の全趣旨) 

(3) 被告受領金からの支出 
(葬儀費用等)
 
ア 葬儀費用(下記(ア)〜(ニ)) 323万1904円 
(ア) コープこうベクレリ(葬儀費用)123万3172円(乙1の1) 
(イ) コープこうベクレリ(樒,供花,供物)28万1000円(乙1の2)。原告は,親族名での供花,供物が含まれているから,その分は立替金である旨を主張するが,立替金である場合と喪主側が葬儀費用として負担する場合があり,本件では喪主側が葬儀費用として負担したものと認めるのが相当である(弁論の全趣旨)。 
(ウ) 食事代1万7220円(乙1の6) 
(エ) 法礼等42万円(乙12) 
(オ) 院号料等41万円(乙12) 
(カ) 永代供養料50万円(被告本人)。原告は,領収証もなく支出があったとの立証はない旨を主張するが,葬儀に関する支出のすべてについて領収証を残すことが困難であることは周知の事実であり,被告本人尋問の結果により,この支出の事実を認めるのが相当である。 
(キ) 霊柩車4万6200円(乙14) 
(ク) イワサバス2万0500円(乙15) 
(ケ) 火葬料金1万円(乙16) 
(コ) タクシー代6820円(乙17)。原告は,その領収証(乙17)と葬儀との関連性の立証がない旨を主張するが,亡Aの死亡から葬儀の行われた日までの領収証であり,葬儀のために支出であると認めるのが相当である。 
(サ) 貸布団3150円(乙18) 
(シ) お手伝いへの心付け5万円。証拠(乙19,被告本人)によれば,葬儀の受付のお手伝い10人に各5000円の心付けを支払ったと認めるのが相当である。 
(ス) 交通費,食事代等6万8981円。証拠(乙19,30,被告本人)及び弁論の全趣旨によれば,Dが葬儀に関連して,必要な交通費を支出した者に対してその費用を支払い,食事代を支出したものと認めるのが相当である。 
(セ) 駐車場代600円(乙20)。領収証との関連性については,上記(コ)と同じ。 
(ソ) 食事代1万2556円。証拠(乙21〜24)及び弁論の全趣旨によれば,Dが葬儀のために集まった者の食事のために支出したものと認めるのが相当である。原告は,他の食事代と重複している可能性がある旨を主張するが,食事は複数回されるのが当然であるし,他の食事代と重複していることを窺わせる証拠はない。 
(ナ) 雑費1705円。証拠(乙25,26)によれば,葬儀に関連する物品を購入したものと認めるのが相当である。領収証との関連性については,上記(コ)と同じ。 
(ニ) 交通費15万円。証拠(乙30,被告本人)によれば,東京から葬儀に参列したF夫妻,G夫妻及びJ夫妻に対し,交通費として15万円を支払ったものと認めるのが相当である。 
(ヌ) 被告は,諸雑費6万4129円を支出したと主張するが,その額の支出がされたことを示すメモ,計算書等も含めて何らの客観的な証拠も提出しないので(上記の6万4129円という詳細な金額自体をD又は被告が記憶しているとは考え難い。),その額の支出がされたことを認めるに足りる証拠はないというべきである。 

イ 葬儀の際の寺でのお手伝いへの志,食事代 0円 
 被告は,寺でのお手伝いへの志,食事代11万1170円を支出した旨を主張するが,上記ア(ヌ)と同様,この額の支出がされたことを認めるに足りる証拠はないというべきである。 

ウ 死亡時の検死等費用 0円 
 被告は,検死等費用8万4026円を支出した旨を主張するが,上記ア(ヌ)と同様,この額の支出がされたことを認めるに足りる証拠はないというべきである。 

(法要等) 
エ 二七日,三七日,四七日,五七日,六七日法要 2万5000円 
 証拠(乙30)によれば,二七日,三七日,四七日,五七日及び六七日の合計5回,寺に対するお布施として支出されたものと認めるのが相当である。 

オ 四九日法要 15万2530円 
(ア) 法礼等5万円(乙2の5,12) 
(イ) 供花・供物2万円(乙2の3〜5,12) 
(ウ) 会葬御礼品8万2530円(乙2の1・2) 

カ 門徒菓子代 2万0000円 
 証拠(乙3の1)及び弁論の全趣旨によれば,被告が,平成16年5月3日に浄福寺が門徒に配る菓子代として2万円を支出したものと認めることができる。被告は,門徒菓子代として3万円を支出した旨を主張するが,その余の支出がされたことを認めるに足りる証拠はない(被告は,領収証(乙3の2)を提出するが,門徒菓子代の領収証とは認められない。)