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小松亀一法律事務所は、「相続家族」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

遺留分

遺留分減額請求対象財産価値が急騰した場合

○遺留分減殺請求の考え方は大変ややこしくて我々専門家も悩ませます。「遺留分減殺請求のポイント整理」「遺留分算定の具体例考察」で遺留分侵害額の算定について以下のように述べました。

○遺留分侵害額の算定は、以下の方法で行います(最判平成8年11月26日判決)。
@遺留分基礎財産額の確定−相続開始時の財産全体の価額に贈与財産価額を加え、債務全額を控除
Aこれに相続人の個別遺留分率を乗じる
B遺留分権利者自身の特別受益財産額と相続による取得財産額を差し引き
C遺留分権利者自身が相続した債務額を加算する

○以上を算式化すると以下のようになります。
遺留分侵害額=A×B−C−D
A=積極財産額+贈与額−相続債務=純相続財産+贈与額
B=個別遺留分率
C=当該相続人の受贈額+受遺額(=当該相続人の特別受益額)
D=当該相続人が相続によって得た積極財産−相続債務分担額(当該相続人の純相続分)

○シンプルな具体例として被相続人、相続人長男、二男のところ、被相続人は、遺言書で甲土地を長男に相続させるとの遺言書を作成し、平成17年4月1日死去し、この相続開始時の被相続人の遺産は、甲土地(相続開始時時価1億円)と乙土地(相続開始時時価資産2000万円)だけの場合の例を挙げます。相続債務やその他の贈与、遺贈はありません。

○この例での二男の遺留分侵害額は、上記式に当てはめると
A=1億2000万円
B=1/4
C=0
D=2000万円(民法903条2項により乙土地は二男の取得となります)
遺留分侵害額=A×B−C−D=3000万円−2000万円=1000万円
となり、二男は長男に対し、遺留分侵害額/遺留分対象財産価値=1000/1億=1/10を返還せよと主張できることになります。

○これに対し長男は甲土地の価額弁償として1000万円を支払うとの抗弁を提出していたところ、近くに地下鉄駅が建設されることになって急騰し、平成19年6月1日現在、甲土地の時価が3億円になったとします。価額弁償をする場合、その価額算定基準時は現実の弁償時とされていますので、この場合、長男の価額弁償額は3億円の10分の1で3000万円になります。