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小松亀一法律事務所は、「相続家族」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

遺留分

遺留分算定の具体例考察

○「遺留分減殺請求のポイント整理」で遺留分侵害額計算式を以下の通りと述べました。
遺留分侵害額=A×B−C−D
A=積極財産額+贈与額−相続債務=純相続財産+贈与額
B=個別遺留分率
C=当該相続人の受贈額+受遺額(=当該相続人の特別受益額)
D=当該相続人が相続によって得た積極財産−相続債務分担額(当該相続人の純相続分)

※積極財産額も贈与額も評価時期は相続開始時

○今回は、この計算式を以下の具体例に当てはめて検討します。
@当事者;被相続人、相続人は長男、長女、二男の3名
A積極財産;甲土地時価2億円、乙建物時価2000万円、丙土地時価4000万円、預貯金4000万円の合計3億円
B相続債務;2000万円
C贈与額;二男に丁土地時価2000万円の土地(仮に贈与時が10年前で当時の時価1000万円としても、相続時点での時価を再評価する)
D遺言内容;甲土地・乙建物・預貯の合計2億6000万円と相続債務2000万円は長男へ、丙土地は長女、二男に各2分の1を相続させる。

○以下、私なりに解説を試みますが、間違いがあったらご指摘頂ければ幸いです。
二男が長男に遺留分減殺請求する場合の遺留分額具体的計算例は次の通りです。
遺留分算定基礎財産A=積極財産額(甲土地2億円+乙建物2000万円+丙土地4000万円+預貯金4000万円)+贈与額(丁土地2000万円)−相続債務2000万円
=3億円
二男の個別遺留分率Bは、法定相続分3分の1の2分の1で6分の1
3億円×1/6=5000万円−受贈額2000万円−受遺額2000万円=1000万円
となり、二男の最終的な遺留分侵害額は1000万円になります。

○そこで二男は長男に対して預貯金4000万円の内から1000万円を返せと請求できそうですが、民法第1034条「遺贈は、その目的の価額の割合に応じて減殺する。」との規定から、遺贈対象の預貯金だけ選んで減殺請求をすることは出来ず、二男は長男に対し甲土地、乙建物、預貯金の2億6000万円相当の財産から案分比例して1000万円相当財産を返せと言う請求になります。従って各財産に対する請求割合は1000/2億6000即ち1/26を返せと言う請求をすることになります。

○同様に長女の遺留分侵害額は、贈与がありませんので、
3億円×1/6=5000万円−受遺額2000万円=3000万円
となり、現在積極財産に対する割合は、3000万/2億6000即ち3/26になり、長男に対し甲土地、乙建物、預貯金それぞれから3/26を返せと言う請求をすることになります。