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小松亀一法律事務所は、「相続家族」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

遺留分

遺留分減殺請求に対する価額弁償の抗弁のポイント2

○被相続人Aの相続人は長男Bと二男Cの2人だけでAは唯一の遺産である遺言時1億円相当の甲土地をBに相続させるとの公正証書遺言を残し、Bがこの遺言書に基づき甲土地をB名義に所有権移転登記をした場合、Cの遺留分は4分の1ですから、CはBに対し、遺留分として甲土地の4分の1の持分権の移転登記手続をせよと請求することが出来ます。

○これに対しBはCに対し甲土地の価値が8000万円に下落してた場合はその4分の1相当額である2000万円を弁済して持分権移転登記請求を拒むことが出来、これを価額弁償と言います。それではCは当初から持分ではなく持分相当額のお金を返せと価額弁償の請求が出来るかという問題があります。

○これについては民法上、受遺者Bの意思を無視して遺留分権利者Cが価額での弁償を請求できるとの規定はないことから、Cは当初から価額弁償をBに対して請求することは出来ないと一般に解されています(名古屋高判平成6年1月27日判タ860号251頁)。但し、受遺者が価額弁償の抗弁を提出した場合遺留分権利者が価額弁償のみによることの不利益を覚悟して価額弁償のみの請求をすることは認められます(最判昭和51年8月30日民集30巻7号768頁)。

○前記設例で甲土地をCが占有しており、Bが遺言書に基づき所有名義をB名義に移転して、所有者としてCに明渡請求をしたところ、Cが遺留分減殺請求をして4分の1の持分権を有することを理由に使用権があるので返さないと主張し、Bも価額弁償の抗弁を提出しなかったためCの4分の1位の持分権が認められてBの請求が棄却された場合、Bは何時まで価額弁償をして甲土地を完全に取得できるかと言う問題があります。

○これについては受遺者Bは、遺留分権利者Cが遺留分を完全に回復するまで即ち4分の1の持分権移転登記を完了するまでは価額弁償をすることが出来ますが(東京高判昭和59年11月14日判じ1141号76頁)、移転登記が完了した場合は出来ないと解されています。遺留分の回復が判決に基づく強制執行や任意の履行で終了した後も価額弁償を可能とすると紛争の蒸し返しになり無駄だからです。

○前記設例でC遺留分減殺請求権の行使により甲土地の4分の1は当然にCの権利に復帰します。これに対しBが有効な価額弁償した場合、減殺請求による権利移転の効果は遡って消滅し、当初からBの権利に帰属していたとみなされます(最判平成4年11月16日恥1441号66頁)。例えば甲不動産から毎月40万円の賃料が上がっていた場合、Cの遺留分減殺請求権の行使により以降4分の1相当額の10万円はBC間ではCに帰属することになりますが、Bが価額弁償すれば遡って賃料全額をBが取得できます。