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小松亀一法律事務所は、「相続家族」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

相続財産

先祖名義の土地を自分名義に登記したいとき

○相続の問題でよく相談を受ける事例として、以下のような事例があります。
(事案)
相談者Xが、現在住んでいる甲土地は、30年前に亡くなった祖父Aの名義のままになっている。甲土地は、A生前に、AがXの父Bに贈与し、Bが甲土地上にB名義の建物を建てて使用を継続し、Bは生前Xに建物と共に甲土地を贈与し、15年前に亡くなった。
建物はX名義に登記しているが、甲土地は、B以外のXの相続人であるC、DがBに対する登記に協力せず、B死後はXに対する登記も協力せず、祖父Aのままになっている。
これを何とかX名義に登記したい。


○このような事案は実際良くありますが、通常は、Aの相続人がBへの登記に協力し、問題にはなりません。しかし、Aの相続人の中に甲土地をBだけが取得することが面白くなくて、Bへの登記に協力せず、Bとしては自分が使用を継続し、登記が無くても不自由がないため、そのまま放置し、子供のXの代になって建物の増改築工事費捻出のため甲土地に抵当権を設定する必要が生じた場合などに問題となります。亡くなったA名義では抵当権設定登記が出来ないからです。

○この事案では甲土地はAからBに贈与により所有権が移転し、AはBに対し所有権移転登記義務を負っていました。Aの死後、甲土地についてのBへの所有権移転登記義務は、その相続人であるB、C、Dに承継されますが、Bは権利者でもあり、C、DがにB対する所有権移転登記義務を承継します。

○C、DのBに対する所有権移転登記義務は不可分債務とされていますが、仮にCからは任意に移転登記手続の協力が得られるようになった場合、Dに対してのみ請求が出来、C、Dは必要的共同訴訟の関係に立つものではありません(最判昭和36.12.15民集15-11-2865、月報14-4-179)。

○上記事例は単純化していますが、実際例はC、Dが何人も居たり、或いは何れも死亡して相続人が多数に及んだりし、また甲土地についてAからBに贈与があったことを立証する方法がなかったりして、簡単には解決できない場合もあります。

○私の経験では、曾祖父(そうそふ、父の祖父)の名義の土地を現在使用しているXさん名義にするため曾祖父の全国に散らばった50数名の相続人相手に訴えを提起し、判決を得てようやく所有権移転登記を実現した例もあります。曾祖父時代の贈与を立証することは到底不可能であり、このような場合は、時効取得を原因として所有権移転登記手続を求めます。

○このような訴えを出すときは事前に相続人各位に対し、Xさんが現在使用している土地の所有名義をXさん名義に直すためやむを得ず訴えを提起するもので、Xさんの所有に異議のない方は、裁判所に出頭しないで結構ですと言う内容の詳しい事情説明書面を送ります。これによって大部分の方はご納得頂きますが、時に激しく争って来る方もあり、この場合、判決をとるか多少の金銭を支払う和解で解決してきました。