○「
後遺障害等級標準労働能力喪失率と異なる認定判例全文紹介3」を続けます。
************************************************************
三 争点(3)(損害論)について
(1) 治療費・文書料について 713万7854円
《証拠略》によれば、原告は、本件事故の結果、本件事故発生日から症状固定日までの治療費として、713万7854円の損害を被った事実が認められる。
(2) 交通費について 4万1200円
弁論の全趣旨によれば、本件事故の結果、原告には、交通費として、4万1200円の損害を被った事実が認められる。
(3) 入院雑費について 28万9500円
本件事故の結果、原告は、193日間の入院治療を余儀なくされた事実については当事者間に争いはない。よって、原告には、入院雑費として、28万9500円の損害が発生しているというベきである。
(計算式)
1500円×193日=28万9500円
(4) 休業損害について 1395万1814円
《証拠略》を併せれば、以下の事実が認められる。
ア 原告は、本件事故前、C歯科医院において歯科医として勤務し、792万円の収入を得ていた事実が認められ、これを日額に計算し直すと、2万1698円となる。
イ 原告は、本件事故日から平成18年3月31日までの間、C歯科医院を休業し、その後、歯科医として勤務することが困難となったため、退職した。
以上認定の事実に、上記認定のとおり、原告の症状固定日が19年10月1日であることが認められることからすれば、本件事故日から平成19年10月1日までの、643日間にわたる休業損害が、本件事故と相当因果関係が認められる損害として算定されるべきである。
よって、原告の休業損害は、1395万1814円が相当である。
(計算式)
2万1698円×643日=1395万1814円
(5) 後遺障害逸失利益 8118万0792円
上記認定のとおり、原告は、本件事故前、年収にして792万円の収入を得ており、原告に残存する後遺障害については、労働能力喪失率を70パーセント、労働能力喪失期間を27年間とするのが相当であることからすれば、原告の後遺障害逸失利益は8118万0792円が相当である。
(計算式)
792万円×70パーセント×14・6430(27年間に相当するライプニッツ係数)=8118万0792円
(6) 入通院慰謝料について 300万0000円
上記認定のとおり、原告は、本件事故の結果、191日間の入院治療及び実通院日数91日間の通院治療を余儀なくされているところ、本件事故によって原告が負った傷害内容等に鑑みれば、原告の入通院慰謝料は、300万円が相当である。
(7) 後遺障害慰謝料について 700万0000円
上記認定の、原告に残存する後遺障害の内容に鑑みれば、原告の後遺障害慰謝料は、700万円が相当である。
四 過失相殺、既払金の填補及び確定遅延損害金について
(1) 上記認定のとおり、本件事故については、原告にも30パーセントの過失が認められることからすれば、原告の損害については過失相殺を行うことが相当である。また、上記認定のとおり、原告は、労災保険から本件事故による損害の填補として、療養給付、休業給付及び障害給付の支払を受けている事実が認められるが、療養給付については治療費、休業給付及び療養給付については、消極損害に充当されるべきであることからすれば、過失相殺は、それぞれの費目において計算されるべきである。
そうすると、過失相殺後の各損害額は、以下のとおりとなる。
ア 治療費・文書料について 499万6498円
イ 交通費について 2万8840円
ウ 入院雑費について 20万2650円
エ 消極損害について 6659万2824円
オ 慰謝料について 700万0000円
(2) 労災保険金の填補について
上記のとおり、原告は、本件事故の結果、労災保険金から療養給付として708万6904円、休業給付として合計824万3681円及び障害給付として479万7769円の支払を受けている事実が認められる。そして、療養給付については治療費、休業給付及び療養給付については、消極損害に充当されるべきであり、これらの充当を行った後の原告の全損害額は、以下のとおりとなる。
ア 治療費・文書料について 0円
療養給付が、過失相殺後の治療費・文書料を超えていることは明らかである。
イ 交通費について 2万8840円
ウ 入院雑費について 20万2650円
エ 消極損害について 5355万1374円
原告が受領した、休業給付及び障害給付の合計額は、1304万1450円となるところ、これを過失相殺後の消極損害額である6659万2824円に充当した残額は、5355万1374円である。
オ 慰謝料について 700万0000円
カ 合計額 6078万2864円
(3) 任意保険金の填補について
上記認定のとおり、原告は、任意保険金から、合計9万1050円の支払いを受けていることからすれば、任意保険金充当後の残損害額は、6069万1814円となる。
(4) 自賠責保険金の支払い及び確定遅延損害金について
上記認定のとおり、原告は、自賠責保険から、平成20年1月17日に224万円の、平成20年6月27日に392万円の各保険金の支払いを受けている事実が認められる。そして、上記残損害額6069万1814円を元本とすると、本件事故日から平成20年1月17日までの751日間の確定遅延損害金は、624万3774円(小数点以下切り捨て。以下同じ。)となるところ、この確定遅延損害金から平成20年1月17日に支払われた自賠責保険金224万円を控除した残額は、400万3774円となる。また、6069万1814円と400万3774円を積算すると、6469万5588円となるところ、これを元本とする平成20年1月18日から平成20年6年27日までの確定遅延損害金は、143万5710円であり、これと6469万5588円を積算した残損害額は、6613万1298円であり、これから平成20年6月27日に支払われた自賠責保険金392万円を控除すると、残額は、6221万1298円となる。
(5) 弁護士費用について
以上によれば、原告の弁護士費用に相当する損害は、620万円が相当である。
五 まとめ
したがって、原告の総損害額は、6841万1298円となる。
六 よって、原告の請求は、6841万1298円並びに6221万1298円に対する最終の自賠責保険金支払日の翌日である平成20年6月28日から民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払及び620万円及びこれに対する不法行為の日である平成17年12月28日から民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める範囲で理由があるからこれを認容し、その余の請求については理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。(裁判官 新田和憲)