本文へスキップ

小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

任意保険会社への直接請求

加害者請求権消滅時効理由での保険会社への直接請求否認判例全文紹介7

○「加害者請求権消滅時効理由での保険会社への直接請求否認判例全文紹介6」を続けます。
別紙も含めて43頁に及ぶ長文判決ですが、この判決の解説は別コンテンツで行います。


**********************************************

2 争点2(後遺障害及ぴ症状固定日)について
(1)後遺障害

ア 前示のとおり原告が低髄液圧症候群を発症したとは認められないが、前記1(1)で認定した原告の治療及び症状の経過等に鑑みれば、本件各事故が競合したことにより、原告には、頸椎捻挫による頚部受傷後の障害としての将来において回復困難な一定の後遣障害が残存したと認めるぺきであるところ、原告の症状が他覚所見の認められない神経症状であることに照らすと、その後遺障害の程度としては、自賠法施行令別表第二の第14級9号の「局部に神経症状を残すもの」に相当すると認められる。

イ これに対し、原告は,自賠法施行令別表第二の「局部にがん固な神経症状を残すもの」(第12級13号)に該当すると主張するが,前示のとおり、原告の神経症状に他覚所見が伴うものとは認め難いから,その主張は採用できない。

(2)症状固定時期
 ア 前示のとおり原告が低髄液圧症候群を発症したとは認められないこと,東北公済病院宮城野分院の医師が,第1事故(平成17年11月18日)から1年程度を経過した時点で後遺障害診断を行うことが相当であると判断していたこと(前記1(1)キ),中嶋病院の医師が,平成19年2月3日をもって原告の症状が固定したとの診断書を作成していたこと(前記1(1)カ)に鑑みれば,原告の症状固定時期については,これを平成19年2月3日と認めることか相当である。

 イ これに対し,原告は,低髄液圧症候群を発症したことを前提として,症状固定日が平成2 4年4月17日であると主張し,鈴木医師が作成した同旨の診断書(甲40)を提出するが,前示のとおり原告が低髄液圧症候群を発症したとは認められない以上,これらは採用できず,前記アの認定判断を左右しない。

3 争点3(第2事故後の症状につき本件各事故の寄与割合)について
 前記前提事実によれば,本件各事故の間にほ約8か月の時間的間隔がある上,事故の発生場所,加害者が異なることからすると,本件各事故は,社会的に一体の加害行為であるとは認められず(争いがない),前示の原告の治療経過等に鑑みると,本件各事故が競合して原告の症状を生じさせたと認められる。そごで,第2事故の加害者の任意保険会社である被告日新は,原告に対し,第2事故から症状固定日までに生じた原告の症状に関する損害について,第2事故が原告の当該症状に寄与した割合に従って,個別に損害賠償責任を負うというべきである。

 この点,前記1(1)の認定事実によれば,第2事故は,B車前部のバンパー左前角付近が原告車後部のバンパー左角付近に接触した事故であり,原告は,既に第1事故により受傷したところに一定の衝撃を受けたと認められるところ,前示の原告の治療経過等に加えて,訴外Bの任意保険会社である被告日新が,第2事故から症状固定日までの症状について第2事故が一部寄与したことを争っていないこと(甲14の1,弁論の全趣旨),第2事故は,物損事故として処理され (甲14の1,甲30),原告及び訴外Bの双方の認識によってもさほど大きな衡撃ではなかったとされていること,第2事故直後から原告の症状が特別に増悪したことをうかがわせる事情は見当たらないことにそれぞれ鑑み,第2事故後に原告に生じた症状に対する寄与の割合は,第1事故が80%,第2事故が20%と認めるのが相当であり,この割合を不当と認めるに足りる証拠はない。
 以上の認定判断に反する被告らの主張は採用できない。

4 争点4(損害額)について
(1)治療費

ア 東北公済病院宮城野分院分(眼科分。整形外科分は既払につき請求していない。)
(ア)第1事故から第2事故前まで 0円(眼科分。眼科医によって事故と無関係とされており(甲23),第1事故との相当因果関係は認められない。)
(イ)第2事故から症状固定日まで 0円(事故との相当因果関係を認めるに足りる的確な証拠がない。)

イ すずのき接骨院分                 l
(ア)第1事故から第2事故前まで (既払につき請求していない。)
(イ)第2事故から症状固定日まで (既払につき請求していない。)

ウ 中嶋病院分
(ア)第1事故から第2事故前まで (通院しておらず請求していない。)
(イ)第2事故から症状固定日まで 0円(症状固定日までの分は既払につき請求していない。症状固定後の分は相当因果関係のある損害といえない。)

エ 仙台医療セソター分
(ア)第1事故から第2事故前まで (通院しておらず請求していない。)
(イ)第2事故から症状固定日まで 0円(症状固定後の分であるため)

オ のむら内科分
(ア)第1事故から第2事故前まで (通院しておらず請求していない。)
(イ)第2事故から症状因定日まで 0円(症状固定日までの分は既払につき請求していない。症状固定後の分は相当因果関係のある損害といえない。)

カ 東北整形外科分
(ア)第1事故から第2事故前まで (通院しておらず請求していない。)
(イ)第2事故から症状固定日まで 0円(症状固定後の分であるため)

キ 須藤接骨院分
(ア)第1事故から第2事故前まで (通院しておらず請求していない。)
(イ)第2事故から症状固定日まで 0円(症状固定後の分であるため)

ク オーエスワン代(市販の水分補給剤代)
(ア)第1事故から第2事故前まで (請求していない。)
(イ)第2事故から症状固定日まで 0円(症状固定後の分であるため)

ケ 宮城社会保険事務局分(レセプト開示手数料)
(ア)第1事故から第2事故前まで (請求していない。)
(イ)第2事故から症状固定日まで 0円(症状固定後の分であるため。甲10の7,甲20)

コ 治療費のまとめ
(ア)第1事故から第2事故前まで 0円
(イ)第2事故から症状固定日まで 0円

(2)入院雑費(仙台医療センター分)
ア 第1事故から第2事故前まで (入院しておらず請求していない。)

イ 第2事故から症状固定日まで 0円(症状固定後の分であるため)

(3)通院交通費
ア 東北公済病院宮城野分院分
(ア)第1事故から第2事故前まで (既払につき請求していない。)
(イ)第2事故から症状固定日まで 5040円(眼科の通院日を含むが,当該通院日に整形外科にも通院していることから,その場合も相当因果関係のある通院交通費と認める。甲7(枝番を含む。),甲2 3, 弁論の全趣旨)

イ すずのき接骨院分
(ア)第1事哉から第2事故前まで (既払につき請求していない。)
(イ)第2事故から症状固定日まで 1万7280円(甲8の1ないし6,甲24,弁論の全趣旨)

ウ 中嶋病院分
(ア)第1事故から第2事故前まで (通院しておらず請求していない。)
(イ)第2事故から症状固定日まで 4万0150円(甲9の1ないし16,甲2 5, 弁論の全趣旨。なお,症状固定後の分については,相当因果関係のある損害といえない。)

エ 仙台医療センター分
(ア)第1事故から第2事故前まで (通院しておらず請求していない。)
(イ)第2事故から症状固定日まで 0円(症状固定後の分であるため)

オ のむら内科分
(ア)第1事故から第2事故前まで (通院しておらず請求していない。)
(イ)第2事故から症状固定日まで (既払につき請求していない。)

カ 東北整形外科分
(ア)第1事故から第2事故前まで (通院しておらず請求していない。)
(イ)第2事故から症状固定日まで 0円(症状固定後の分であるため)

キ 須藤接骨院分
(ア)第1事故から第2事故前まで (通院しておらず請求していない。)
(イ)第2事故から症状固定日まで 0円(症状固定後の分であるため) 

ク 通院交通費のまとめ
(ア)第1事故から第2事故前まで 0円
(イ)第2事故から症状固定日まで 6万2470円(寄与の割合に従い,第1事故が8.0%相当の5万円,第2事故が20%相当の1万2470円)