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小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

交通事故重要判例

平成24年7月31日横浜地方裁判所判決紹介5

○「平成24年7月31日横浜地方裁判所判決紹介4」の続きで、裁判所の結論前半です。



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4 後遺障害の内容、程度
 前記2(1)で認定した本件事故後の原告の症状・治療経過等によると、原告には、本件事故により、頸部受傷後の頭痛、後頸部痛、背痛などの神経症状が残存したことが認められる。そして、前記2(1)クによると、原告は、平成21年10月27日ころに休職した以降は、仕事をすることができず、また、鎮痛作用のかなり強い鎮痛剤を継続的に使用しているのであって、その痛みの程度は著しいと考えられる。前記2(4)のとおり、原告は、脳脊髄液減少症を発症した疑いが相当程度あるから、原告の上記症状は、脳脊髄液減少症による可能性が相当程度ある。また、仮に、そうでないとしても、原告の現在の神経症状が上記のとおり重いものであることは明らかであり、原告には、本件事故前に既往症があったとは認められないことや前記2(1)アのとおり本件事故の態様は、原告が意識を失うようなものであったことなどを総合すると、原告の現在の神経症状は、本件事故によるものと認めることができる。
 その程度については、その症状の内容からすると、自賠法施行令別表第二第9級10号「神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」に該当すると認めるのが相当である。

5 損害
(1) 治療関係費

 治療関係費は、平成20年1月17日の症状固定までの分については、本件事故と相当因果関係のある損害と認められる。
 前記2(4)のとおり、原告には、脳脊髄液減少症の疑いが相当程度ある上、既に認定した原告の症状や治療経過からすると、脳脊髄液減少症の治療関係費に限っては、症状固定日以降のものについても、将来の治療費として認めることが相当である(原告の主張は、その旨のものと善解することができる)。

ア 治療費(平成18年11月1日以降)
(ア) B病院
 証拠(略)と弁論の全趣旨によると、原告は、平成19年11月19日及び同年12月27日に、脳神経外科で治療を受け、その費用等は8,610円であったことが認められる。同額を必要かつ相当な治療費と認める。
 証拠(略)と弁論の全趣旨によると、原告は、平成23年10月12日まで、麻酔科で通院治療を受けたこと、平成18年11月以降に支払った治療費は、17万8,295円であったことが認められる。証拠(略)によると、平成20年1月17日以降の同麻酔科での治療は、脳脊髄液減少症に関する治療であったと認められる。これらのことに照らすと、上記17万8,295円については、必要かつ相当な治療費と認める。

 証拠(略)によると、原告は、平成19年6月26日〜平成22年7月8日(通院日数49日)、精神科で治療を受け、その費用等は7万9,885円であったこと、平成20年1月17日以降の治療は、脳脊髄液減少症に伴う不眠等の症状の緩和のための治療であったことが認められる。これらのことに照らすと、上記7万9,885円については、必要かつ相当な治療費と認める。

 証拠(略)によると、原告は、平成19年3月29日〜同年4月21日、神経内科で治療を受け、その費用は1万4,880円であったと認められる。同額を必要かつ相当な治療費と認める。

 証拠(略)によると、原告は、平成19年9月14日、眼科で治療を受け、その費用は1万0,250円であったと認められる。同額を必要かつ相当な治療費と認める。
 証拠(略)によると、原告は、平成20年9月18日、同年10月1日、同月23日及び平成21年4月23日、耳鼻科で治療を受け、その費用は、1万1,910円であったこと、これらの治療は、脳脊髄液減少症に関する治療であったことが認められる。これらについては、必要かつ相当な治療費と認める。
 証拠(略)によると、原告は、平成19年7月及び8月並びに平成20年7月及び8月に、麻酔科で入院治療を受けたこと、平成20年1月17日以降の入院治療は、硬膜外ブロック治療及びRI脳槽シンチグラフィー検査のための入院治療であり、脳脊髄液減少症及びそれに伴う症状のための治療であること、これらの治療等の費用の合計額は44万7,490円であり、健康保険による支払分を控除した残額は17万1,200円であることが認められる。同額を必要かつ相当な治療費と認める。

(イ) B病院関連の薬剤費
 証拠(略)によると、原告は、平成19年6月以降、薬剤費の一部負担金として、合計35万6,150円を支出したこと、平成20年1月17日以降に処方された薬剤は、脳脊髄液減少症に関する治療のための薬剤であったと認められる。したがって、同額を必要かつ相当な薬剤費と認める。

(ウ) L接骨院
 同接骨院での施術が必要であると認めるに足りる十分な証拠はない。 したがって、損害とは認められない。

(エ) E病院
 証拠(略)によると、原告は、平成20年9月及び10月に、E病院での治療の費用として1,870円を支出したことが認められるが、この治療が脳脊髄液減少症に関する治療であったと認めるに足りる証拠はない。したがって、損害とは認められない。

(オ) C病院
 証拠(略)によると、原告が支出した脳脊髄液減少症に関する治療のための通院治療費は、16万0,895円であると認められる(別紙7のとおり。)。
 証拠(略)によると、原告は、平成20年11月及び12月と平成22年6月に、脳脊髄液減少症及びそれに伴う症状の治療のため入院し、その費用として、32万8,540円を支払ったと認められ、同額を必要かつ相当な治療費と認める。

(カ) Dクリニック
 証拠(略)によると、原告は、Dクリニックに通院したことが認められるが、その治療の内容が明らかでないから、同クリニックの治療費は、相当因果関係のある損害とは認められない。

イ 入院雑費(平成18年11月1日以降)
 証拠(略)によると、原告は、B病院では@平成19年7月30日〜同年8月10日(12日間)、A平成20年7月23日〜同月31日(9日間)、B同年8月18日〜同月19日(2日間)、C病院ではC同年11月29日〜同年12月4日(6日間)、D平成22年6月1日〜同月3日(3日間)、それぞれ、入院したと認められる。また、前記ア(ア)、(オ)のとおり、上記@〜Dの入院は、脳脊髄液減少症の治療等のための入院であると認められる。
 以上より、入院雑費は、4万8,000円と認める(1,500円×32)。