○「
一人暮らしの老人の休業損害・逸失利益を認めた判例紹介1」の続きで、過失割合を除いた争点です。
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三 争点
争点は、本件事故の態様及び責任原因(過失割合)並びに一審原告らの損害額であり、この点に関する当事者の主張は、次のとおりである。
(1)本件事故の態様及び責任原因(過失割合)
(中略)
(2)一審原告らの損害額
(一審原告ら)
ア 一審原告X1の損害額
@治療費(81万4840円)
内訳 下都賀総合病院分 7350円+63万1120円
高田整形外科病院分 4150円+12万2920円
日本大学医学部附属板橋病院分 2万0410円
帝京大学医学部附属病院分 1万6280円+1万2610円
A入税雑費(16万9500円)
日額1500円が相当であり、入院期間は113日間であるから、上記の金額となる。
B付添看護料(295万2000円)
一審原告X2は、症状固定時までの間、一審原告X1に毎日付き添っていた。近親者付添費は日額6000円が相当であり、本件事故日から症状固定日までの期間は492日であるから、上記の金額となる。
C休業損害(396万0936円)
一審原告X1は、本件事故当時、78歳で主婦として家事労働に従事していたから、その基礎収入は、平成11年賃金センサス女子労働者学歴計の65歳以上の平均賃金293万8500円によるべきである。休業期間は本件事故日から症状固定日までの492日間であるから、上記の金額となる。
D逸失利益(1272万1941円)
一審原告X1の基礎収入は、前記のとおり293万8500円とすべきであり、後遺障害等級が併合第二級であるから、その労働能力喪失率は100パーセントである。また、一審原告X1は、症状固定時80歳の女性であり、80歳の女性の平均余命は約10年であるから、労働能力喪失期間はその二分の一の5年間とするのが相当である。その場合のライプニッツ係数は、4・3294であるから、上記の金額となる。
E介護費用(3704万5566円)
一審原告X1の後遺障害の内容・程度にかんがみれば、一審原告X1について、症状固定後も介護の必要性がある。一審原告X1を介護している一審原告X2は、現在、年間260日(週5日×52週間)就労しているから、就労日においては職業人の介護が必要であり、職業人の介護料金は一週間当たり8万0146円が相当である。また、残りの年間105日は一審原告X2が介護に当たることになるが、近親者介護の日額は6000円が相当である。一審原告X1の平均余命である10年間のライプニッツ係数は7・7217であるから、次のとおり、上記の金額となる。
(8万0146円×52+6000円×105)×7.7217=3704万5566円
F傷害慰謝料(400万円)
前記のとおり、一審原告X1の入院期間は113日、通院期間は379日であるから、傷害慰謝料は400万円が相当である。
G後遺障害慰謝料(2500万円)
本件事故の態様、一審被告の過失の重大性、一審原告X1の重篤な脳障害等に照らすと、後遺障害慰謝料は2500万円が相当である。
H損害のてん補 (805万0677円)
内訳 政府保障事業金 731万9577円 (平成13年2月26日給付)
一審被告の既払金 63万1120円 (@の下都賀総合病院分) 10万円(丙五の三の雑費分)
I損害のてん補後の金額 (7861万4106円)
@ないしGの損害額合計8666万4783円からHのてん補金額を控除すると、上記の金額となる。
J弁護士費用(780万円)
Iの金額の約10パーセントに当たる上記金額が相当である。
K小計(8631万4106円)
IとJの合計額は、上記の金額(請求元金内金額)となる。
L確定遅延損害金 (91万0432円)
一審被告が自賠責保険に加入していなかったため、一審原告X1は、平成13年2月26日、政府保障事業からHの731万9557円を受領した。この731万9557円に対する本件事故日である平成10年9月3日から給付日である平成13年2月26日まで(908日間)の年五分の割合による確定遅延損害金は、上記の金額となる。
M 総計(8722万4538円)
KとLの合計額は、上記の金額(請求元金総金額)となる。
イ 一審原告X2の損害額
@近親者慰謝料(200万円)
一審原告X1は、本件事故により併合第二級という死にも比肩すべき重篤な後遺障害を有しているから、その娘であり、かつ、現実に一審原告X1の介護をしている一審原告X2の精神的苦痛は大きく、これを慰謝するには200万円が相当である。
A弁護士費用(20万円)
@の金額の10パーセントに当たる上記金額が相当である。
B 総計(220万円)
@とAの合計額は、上記の金額となる。
(一審被告及び参加人)
ア 一審原告X1の損害額
一審原告X1の損害額は争う。Bの付添看護料について、一審原告X1の入院中、一審原告X2が病院から付添看護をするよう指示された証拠はなく、また、付添看護を必要とする状況にはなかった。また、一審原告X1の通院中、常時介護が必要な状態ではなかったから、通院期間中の介護料は二分の一程度を算定すべきである。なお、近親者付添看護費は日額3000円が相当である。Cの休業損害及びDの逸失利益について、一審原告X1は、本件事故当時、一人暮らしをしていたものであって、家事労働は自らの生活を維持するための日常的行動というべきであるから、無職者と評価されるべきである。また、休業損害及び逸失利益の算定に際しては、基礎収入額65歳以上の平均賃金よりも低い金額を適用すべきである。Eの介護費用について、一審原告X1は、病院における治療及び機能回復訓練により、日常生活動作が相当程度改善されており、食事、排泄、身の回りの動作をほぼ自力で行うことができる状況であるから、介護の必要性は乏しいというべきである。また、一審原告X2が多忙のため職業人の介護を必要とするとはいえない。なお、介護費用の日額は3000円が相当である。
一審原告X1が、Hのとおりの損害のてん補を受けたことは認める。なお、そのほかに、一審被告は、雑費及び見舞金として6万円を支払った。
イ 一審原告X2の損害額
一審原告X2の損害額は争う。同原告に損害はない。