○「
関節可動域の測定は極めて難しい−特に胸腰部」で、「
胸腰部屈曲(前屈)の正しい動作については良く理解出来ませんが、いずれにしても関節可動域測定は、難しいと言う事をシッカリ認識する必要があります。 」と記載し、胸腰部屈曲(前屈)可動域測定法の無知を白状しておりましたが、今般、ようやく、私の疑問を解決する文献を発見して読み、少しは判ったような気がしてきました。
○その文献は、平成21年5月に東京駅近くの丸善で購入していた協同医書出版社発行「
関節可動域測定法−可動域測定の手引き【改訂第2版】」です。この著作は、私が購入した関節可動域制限に関する文献の中では、その測定方法について最も詳しいものです。協同医書出版社HPでの解説は、次の通りです。
徒手筋力検査(MMT)とともにリハビリテーションの基礎であり,正確性が要求される関節可動域測定.その測定の際に必要となる基本的な知識を網羅している.まず,各関節の基本的測定肢位,固定方法,正常な最終域感,角度計の当て方について,大きな写真とともに詳細な解説がなされており,臨床場面においてすぐに活用できる.
また,改訂第2版では新たに各関節の構造,骨運動,関節運動,年齢と性差の影響,信頼性と妥当性などについて,多くの文献を用いての解説がなされ,より包括的な書となっている.
巻末には日本語版への付録として日本整形外科学会,日本リハビリテーション医学会による「関節可動域表示ならびに測定法」を収録している.
○交通事故事件を扱っていると各関節可動域制限に苦しんでいる被害者の方が多いところ、その制限程度について自賠責後遺障害診断書に記載されていない例も多くあり、整形外科医には、この関節可動域制限に余り注意を払っていない方もおられ、また、整形外科医でも関節可動域測定等障害に係る医学的所見や検査結果等の記載方法が分かりづらいとの多くの医師の声に応えるべく発刊された書籍として
労災保険後遺障害診断書作成手引きVol.1、同Vol2があります。しかし、私には、この手引きでも説明が簡潔すぎてなかなか判りづらい面がありましたが、「
関節可動域測定法−可動域測定の手引き【改訂第2版】」は解説が詳細で前者よりは判りやすいと感じています。
○問題の胸腰部関節可動域ですが、同著では、豊富な写真入りで詳細に解説しています。ポイントだけ記載すると以下の通りです。
図11-1胸腰椎屈曲の最終可動域。前屈したときの骨盤の前傾を防ぐために、検者は被験者の骨盤を固定する。
図11-4胸腰椎伸展の最終可動域。検者は骨盤後傾を防ぐために左手を骨盤前面、右手を骨盤後面に当てる。被験者のバランスに問題があったり、下肢の筋力の低下がある場合は、腹臥位または側臥位のいずれかで測定を行うこともできる。
図11-7胸腰椎側屈の最終可動域。検者は骨盤の側方傾斜を防ぐために被験者の骨盤に両手を当てる。
図11-11胸腰椎回旋の最終可動域。被験者は背当てがない低い腰掛けに座ることによって、妨げられないで脊柱の動きを行うことができる。検者は骨盤の回旋を防ぐために被験者の腸骨陵上に手を当てる。
○以上の通り胸腰部関節可動域測定の一番のポイントは
「骨盤」の「前傾」、「後傾」、「側方傾斜」、「回旋」を「防ぐ」こと、即ち「骨盤の完全固定」になるようです。骨盤をシッカリ押さえて、完全に固定して、前屈、後屈、側屈、回旋を行うようですが、この骨盤完全固定が結構難しいもので、検者によっては不完全だと正確な測定にはならないように感じます。
○交通事故被害者から、各種関節可動域についての実際の測定方法を確認してみると、結構、いい加減になされている場合も多そうで、その測定結果が余り信用されないのも頷けます。そこで私は、交通事故被害者の方には、「
労災保険後遺障害診断書作成手引きVol.1」或いは「
関節可動域測定法−可動域測定の手引き【改訂第2版】」の必要部分をコピーして渡して、改めて正確に測定して貰うようにアドバイスしています。