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小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

交通事故医学の基礎等

驚異のプラシーボ(ノーシーボ)効果紹介

○「RSDからCRPSへ−痛みのメカニズム」で、ネットで調べて判りやすいと感じた「加茂整形外科医院第1回痛みのメカニズム」というページの要約を掲載していますが、以来、加茂淳医師の著作を購入して勉強し、更に、同医師の心療整形外科と題するブログも出来るだけ読むようにしています。

○同医師は、「筋骨格系の痛みの殆どは筋性疼痛(MPS)です。」と断言され、「椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、頸椎症、肩関節周囲炎、胸郭出口症候群、頸椎症性神経根症、緊張型頭痛、顎関節症、変形性関節症。すべり症、分離症、坐骨神経痛、テニス肘、モルトン病、手根管症候群、骨盤輪不安定症、腰椎不安定症、腱鞘炎、足底腱膜炎、むち打ち症、打撲、捻挫・・・・・
これらの痛み・しびれはすべてMPSなのです。その痛みの生じるメカニズムは同じです。
」と説明されており、私自身、この加茂医師の見解には大いに魅力を感じております。そして交通事故による傷害後発生した筋性疼痛(MPS)は、正に事故によって生じたもので、事故との因果関係を認めて然るべきと確信しております。

○しかし残念ながら、自賠責保険実務は勿論のこと、裁判実務でも殆どの場合、自賠責見解の跡追いで、器質損傷モデルに縛られて、骨折・脱臼・神経損傷等器質損傷が認められない限り、交通事故被害患者が、如何に厳しい疼痛に悩まされ、過酷な状況に追い込まれていようとその症状と事故とは因果関係がない一蹴されるのが現実です。勿論、長い裁判闘争の結果、患者の厳しい状況を裁判官が理解して、自賠責保険見解をある程度是正してくれることはありますので、訴えを提起する価値は大いにあります。

○この筋性疼痛(MPS)を強調される加茂医師のブログは、心療整形外科と表題をつけているように人間の「心」を重視しており、私も強く共感しておりますが、平成23年11月26日「プラセボこそ神の贈り物」と題する記事に感動というか感激しましたので、引用して紹介します。なお、プラシーボ効果とは、プラシーボ(Placebo)の語源はラテン語の「I shallplease」(私は喜ばせるでしょう。)に由来し、そこから患者さんを喜ばせることを目的とした薬理作用のない薬のことを指すようになり、プラシーボ効果(反応)は、このような薬理作用のないものによりもたらされる症状や効果のことを言うそうです。

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第二次世界大戦前のことだが、かつてヨーロッパでこういう実験が行なわれた。

ある国にブアメードという名の健康な身体に恵まれた死刑囚がいた。この死刑囚はある医師から、医学の進歩のために命を捧げてほしいと持ちかけられた。「人間の全血液量は体重の10%が定説となっているが、我々は10%を上回ると考えているので、ぜひそれを証明したい」というのだ。

彼はその申し出を受け入れ、間もなく実験が開始された。目隠しをされてベッドに横たわった彼は、血液を抜き取るために足の全指先を小さく切開された。足元には容器が用意され、血液が滴り落ちる音が鳴り響く実験室の中で、1時間毎に累積出血量を聞かされた。

やがて実験開始から5時間が経ち、総出血量が体重の10%を越えたと医師が大喜びした時、この死刑囚は死亡していたという。

ところが、この実験、実は血液を抜き取っていなかったのだ。彼にはただの水滴の音を聞かせ、体内の血液が失われていると思い込ませただけだったのである。これを「プラシーボ」に対して「ノーシーボ効果」という。

人間のこころは不思議だ。治ると信じることで「プラシーボ」が現れるように、治らないと信じることで「ノーシーボ」という現象が生まれる。

現代の医療はどうなんだろう?心の問題を軽視したため、多くの「ノーシーボ効果」を生み出してないだろうか?検査、検査で疲れている患者に、どこどこが悪い、と権威を持った医者に言われると、たいていの人は悪い所がなくても、「ノーシーボ効果」という病気を生み出してしまわないだろうか?やはり人間の心とは不思議だ。


思い込むとやけどする

ニューヨークのコロンビア大学医学部のハーバート・スピーゲルが実験したことだ。彼はイマジネーションを利用する実験で、米国陸軍のある伍長を被験者にした。彼は、この伍長に催眠術をかけて催眠状態にしたうえで、その額にアイロンで触れる、と宣言した。しかし、実際には、アイロンのかわりに鉛筆の先端で、この伍長の額に触れただけだった。

その瞬間、伍長は、「熱い!」と叫んだ。そして、その額には、みるみるうちに火ぶくれができ、かさぶたができた。数日後にそのかさぶたは取れ、やけどは治った。この実験は、その後四回くり返され、いつもまったく同じ結果が得られた。

さて、五度目の実験の時には、状況はやや違っていた。この時には伍長の上官が実験に同席していて、この実験の信頼性を疑うような言葉をいろいろ発していた。被験者に迷いや疑惑を生じさせる状況のもとでおこなわれたこの時の実験では、もはや伍長にやけどの症状が現れることはなかった。

スピーゲルは、健康や病気、また、病気からの回復にはさまざまな要因が影響をおよぼし合うと考えている。生理的、心理的、そして社会的な諸要因が相互に関係をもちながら、わたしたちの内部で働いていると言っているのだ。プラシーボ効果を理解するためには、心と体、そしてその両者の関係を促進したり制限したりする第三の要因としての環境状況を考えにいれる必要がある。そして、これら三者を結びつけ活性化するものとして、著者は、言葉のもつ重要性に着目したいと思う。

「心の潜在力プラシーボ効果」 広瀬弘忠 より