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小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

人身傷害補償担保特約

人身傷害補償担保特約最高裁判決紹介-具体的結論

○「人身傷害補償担保特約最高裁判決紹介-代位の範囲等」を続けます。

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5(1) 前記事実関係等及び上記4で説示したところによれば,訴外保険会社は,本件保険金5824万6898円とAの損害金元本7045万3997円との合計額1億2870万0895円が,本件事故によりAが被った損害である前記2(2)の7828万2219円を上回る部分である5041万8676円の範囲で,Aの損害金元本の支払請求権を代位取得し,その限度で第1審原告らが第1審被告らに請求することができるAの損害金の残元本の額が減少することとなる。そして,前記2(3)のAの損害金の残元本6128万3796円から上記の5041万8676円を控除すると,第1審原告らが第1審被告らに請求することができるAの損害金の残元本は,1086万5120円となる。

(2)ア そうすると,第1審原告X1の請求は,以下の金員の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないから棄却すべきである。

(ア)上記Aの損害金の残元本の2分の1である543万2560円及び前記2(3)のAの損害金の残元本6128万3796円に対する本件事故日から本件保険金支払日までの遅延損害金の2分の1である381万1348円

(イ)固有の損害金元本270万円及びこれに対する本件事故日から本件保険金支払日までの遅延損害金33万5835円

(ウ)上記(ア)の543万2560円及び上記(イ)の270万円の合計813万2560円に対する本件保険金支払日の翌日から支払済みまでの遅延損害金

イ また,第1審原告X2の請求は,以下の金員の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないから棄却すべきである。

(ア) 上記ア(ア)と同じ

(イ) 固有の損害金元本160万円及びこれに対する本件事故日から本件保険金支払日までの遅延損害金19万9013円

(ウ) 上記ア(ア)の543万2560円及び上記(イ)の160万円の合計703万2560円に対する本件保険金支払日の翌日から支払済みまでの遅延損害金

ウ 以上の次第で,原審の前記判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,第1審原告ら及び第1審被告らの各論旨はいずれも理由がある。そこで,以上に説示したところに従い,原判決中第1審原告らに関する部分を主文第1項のとおり変更することとする。

 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官宮川光治の補足意見がある。

 裁判官宮川光治の補足意見は,次のとおりである。
 本件約款の人身傷害条項は,自動車事故によって被保険者が死傷した場合に所定の基準により算定された損害の額に相当する保険金を支払うという傷害保険を定めるものである。同保険では,被保険者は迅速な損害?補を受けることができるのであるから,判決による遅延損害金をも?補している賠償責任条項とは異なって,損害金元本に対する遅延損害金を?補していない。保険代位の対象となる権利は,保険による損害?補の対象と対応する損害についての賠償請求権に限定されるのであるから(対応の原則),原審が本件保険金について民法491条を準用し損害金元本に対する本件事故日から本件保険金支払日までの遅延損害金に充当するとしたことは,相当でない。

 被害者に過失がある場合において,保険金を支払った保険者が代位取得する損害賠償請求権の範囲については,諸説がある。法廷意見は,人身傷害保険の趣旨・目的に照らすといわゆる裁判基準差額説と呼ばれている見解が合理的であるとするものであるが,本件約款の人身傷害条項においては損害や保険金を過失割合に応じて按分するという考えを採っていないこと,保険法25条1項が一部保険に関していわゆる差額説を採用したことにも相応すること,そして,そもそも平均的保険契約者の理解に沿うものと認められることから,支持できると思われる。

 本件約款の人身傷害条項は,賠償義務者から既に取得した損害賠償金の額等がある場合は,保険金の額はそれらの合計額を差し引いた額とすると定めている。これを字義どおり解釈して適用すると,一般に人身傷害条項所定の基準は裁判基準を下回っているので,先に保険金を受領した場合と比較すると不利となることがある。そうした事態は明らかに不合理であるので,上記定めを限定解釈し,差し引くことができる金額は裁判基準損害額を確保するという「保険金請求権者の権利を害さない範囲」のものとすべきであると考えられる。
 (裁判長裁判官 金築誠志 裁判官 宮川光治 裁判官 櫻井龍子 裁判官 横田尤孝 裁判官 白木勇)