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判例タイムズ2011/07/01号交通事故訴訟実務座談会紹介4」の続きです。
●和解について
先ず和解案の提示時期ですが、東京地裁裁判官は、原告の主張、被告の反論、原告の再反論が終了した時点が一応の目安とされ、大阪地裁裁判官は、交通事故の場合書証がかなりたくさん出てくる関係で(書面証拠が出そろい)人証尋問に入る前とされています。
※私の感想では、当事者双方の主張と書面による立証が出そろった段階で、取り敢えずの和解案が出されるとの印象です。
私の場合は、主張の隔たりが大きくおよそ和解は無理と思われる事例以外は、一応の主張・書面立証終了時点で、積極的に裁判官に和解勧告を出されることをお願いしています。裁判官の出す和解案によって裁判官のそれまでの心証を推測できるからで、それまでの主張・立証の不備・不足点も明らかになるからです。
和解案提案方法は、東京地裁交通専門部の裁判官の中でも、裁判官によってまちまちとのことです。書面による提案が100%も居れば0%もおり、書面を作成する場合も、ワープロ文書或いはエクセル文書で損害項目毎に金額だけ或いは提案理由込み等色々なタイプが居るとのことで、大阪地裁でも同様とのことです。
※私の感想も同様で、事件の内容にもよりますが、判決書の当裁判所の判断とほぼ同じ内容で、そのまま判決になりそうな詳しい和解案を出してくれた例もありますが、多くは、結論にごく簡単な理由をメモ程度につけたものです。多くの裁判官は書面で出してくれますが、事案によっては裁判官の大まかな心証を披露して頂き、その心証に基づき当事者同士で遣り取りされたいとの和解案を出されたこともあります。私の場合、事前の保険会社提案を
交通事故事件原告被告主張損害比較表として訴状に添付しており、この表に従って裁判所の考える金額を口頭で伝えて頂く形での和解案を得たこともあります。
いずれにしても和解案を頂くことで裁判所心証を相当程度推測できますので、訴訟途中経過確認と言う意味で和解案は重要です。
和解案の内容については、東京地裁裁判官の各種文献での基準は一応参考にはするが、基準通りではない方が多い、事案によっては、和解による適切な解決をするために、想定される判決内容とは異なる和解案を提案することもあるとの言葉が印象的でした。また弁護士費用・遅延損害金の取扱も一律ではなく、念頭には置くが、事案に応じて個別具体的に最終的な和解案を考えるとのことです。大阪・名古屋の裁判官もほぼ同様であるとし、東京・大阪地裁各交通部統括判事がそろって、基準はある程度の目安に過ぎない、事案によっては基準と異なることもあり得ることを強調していたのが印象的でした。
※事前に決めたマニュアルに杓子定規に当てはまらない限り、一切例外は認めないとのが自賠責と保険会社との基本姿勢です。このような自賠責の姿勢とは一線を画し、具体的個別的事案毎にその事案にあった適切な解決を目指すのが、裁判官の姿勢と思われますが、現実には、自賠責認定に相当拘束されている裁判官が多いのが残念なところです。
しかし、被害者である原告側の裁判官に対する説得力が弱ければ、裁判官に伝えたいことが伝わりません。裁判官が自賠責認定に拘束されすぎていると感じる場合は、被害者側としての裁判官に対する説得力が不足していると考え、如何にして裁判官に伝えたいことを伝えるかを、創意・工夫する研鑽を積む必要があります。