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小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

過失相殺・損益相殺・消滅時効

所得補償保険金は休業損害の賠償から控除できるか

○この「所得補償保険金は休業損害の賠償から控除できるか」と言う論点については可否両説がありましたが、平成元年1月19日最高裁判決によって決着を見ました。

○商法第662条は「損害カ第三者ノ行為ニ因リテ生シタル場合ニ於テ保険者カ被保険者ニ対シ其負担額ヲ支払ヒタルトキハ其支払ヒタル金額ノ限度ニ於テ保険契約者又ハ被保険者カ第三者ニ対シテ有セル権利ヲ取得ス」と定めます。この規定は例えば交通事故のように第3者の行為によって損害が発生し保険金が支払われた場合保険金を支払った保険会社が支払った保険金の限度で被害者の加害者に対する損害賠償金を代位取得する保険者代位を定めています。

○所得補償保険は昭和49年4月から発売され現在は相当普及し、私自身弁護士に成り立ての頃から加入し、37歳の時耳の手術で3週間程入院加療したとき1ヶ月の休業が認められ1ヶ月分の所得補償保険金を頂き随分助かった経験があります。

○私の場合病気休業ですから第3者に損害賠償請求できませんが、交通事故で休業した場合、事故の加害者に休業損害を賠償請求できます。この場合最初に保険会社から所得補償保険金を受領すればその分の損害賠償請求は加害者たる第3者に出来るのかどうかが問題になります。

○交通事故による傷害で入院し、生命保険契約を締結して傷害・入院給付金を受け取った場合、加害者にはこれを控除することなく請求出来るかどうかは、昭和55年5月1日最高裁判決が「生命保険契約に付加された特約に基づいて被保険者である受傷者に給付される傷害保険金又は入院保険金については、商法662条所定の保険者の代位の制度の適用がなく、右受傷者が保険者から支払を受けた場合であつても、その限度で第三者に対する損害賠償請求権を失うものではない」とし、控除不要で決着しています。

○被害者にしてみれば生命保険も所得補償保険も自ら保険料を支払って獲得した保険金だから何れも控除することなく加害者に請求できて然るべきと思いますが、残念ながら所得補償保険金については平成元年1月19日最高裁判決は「所得補償保険は、損害保険の一種であり、第3者の不法行為によって障害を蒙り所得補償保険を支払った保険会社は、商法662条の規定により支払った保険金の限度で被害者の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得し、その結果被害者は受け取った保険金の限度で損害賠償請求権を喪失する」としました。

○原則、生命保険契約に基づき受領した保険金は加害者に対する賠償金とは無関係ですが、損害保険契約に基づき受領した保険金は賠償金から控除されると覚えておけばよいでしょう。但し、損害保険でも搭乗者傷害保険金は控除されないことは「損益相殺の基本−搭乗者傷害保険金の例」で述べたとおりです。