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小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

過失相殺・損益相殺・消滅時効

損益相殺の基本-搭乗者傷害保険金の例

○損益相殺とは交通事故の被害者または死亡事故の場合の相続人がこの事故を原因として何らかの利益を得た場合、その利益相当額を損害賠償額から控除することです。基本は、基本編6.損益相殺に記載していますが、相殺される理由は、利益の負担者がその限度で被害者の損害賠償請求権を取得(代位)するため、あるいは被害者が二重の利益を取得することは公平の精神に反するためと説明されています。

○控除すべきかどうかの基準としては
①その給付が損害の填補を目的としているか
②その給付原因自由と事故に因果関係があるか
③給付の趣旨から見て損害額から控除することが妥当か
④その給付に損害賠償制度と調整規定(代位、求償等)があるか
⑤その給付の費用負担者は誰か
⑥負担した費用との対価性があるか
などがあります。

○良く問題になる搭乗者傷害保険金を例に上記基準を検討します。
①損害填補が目的かどうかについては、最高裁判例は、搭乗者傷害保険金は保険契約者及びその家族、知人等が被保険自動車に登場する機会が多いことに鑑み、搭乗者又はその相続人に定額の保険金を給付することによって、これらの者を保護しようとするものであるとして損害填補性を否定しています(最判h7.1.30)。

②給付原因と事故の因果関係はあり、③給付の趣旨からすると①の最判の考えでは控除は妥当でないとなり、④その給付には保険金を支払った保険会社に代位、求償等の調整約款はなく、⑤費用負担者は保険契約者であり加害者とは限らず、⑥負担した費用即ち搭乗者傷害保険料と保険金との間には対価性があります。

①乃至⑥の基準を総合的に見て搭乗者傷害保険金は原則として損害賠償請求権から控除の対象にはならい即ち損益相殺する必要はないとなりますが、下級審には特に加害者が搭乗者傷害保険料を支払っていた場合、搭乗者傷害保険金支払は加害者の誠意の表れとして、被害者の精神的苦痛を軽減するものとしてその一部を慰謝料から控除する例があります。

「搭乗者傷害保険と慰謝料」記載の通り、東京三会交通事故処理委員会編損害賠償の諸問題Ⅱの東京地裁民事27部裁判官を囲む座談会での竹内裁判官レポート(同書214頁)によれば、搭乗者傷害保険金による慰謝料減額について「一概にどの程度の減額が相当であるかを論ずることは困難であり、事案毎に個別的に検討しなければならず」、「搭乗者傷害保険金の50%を超える減額は妥当でない」と述べ、同書218頁に別表として裁判例を数例上げ、1300万円の搭乗者傷害保険金を受領した上での慰謝料2000万円請求に対し、慰謝料を当時の赤い本基準1800万円から300万円減額した1500万円と認定した裁判例を紹介しています。

搭乗者傷害保険金の損益相殺については加害者の誠意の表れと評価できるかをケースバイケースで判断するしかありません。