○「
離婚後前妻が再婚したにも拘わらず養育料請求してきた場合」に、「
前妻再婚後も、実父の養育料支払義務が残るとの説明は、完全に誤りと言い切れない面もあります。それは前妻の養育料支払を取り決めた調停調書に基づく実父の給料を差押について実父が前妻は再婚し実父の養育料支払義務が消滅していると請求異議の訴えを出したのですが、養子縁組の届出は請求異議の事由に該当しないとして棄却された例があるからです(平成16年12月27日東京地裁判決)。」と記載していました。この判例全文が欲しいとのリクエストがありましたので、2回に分けて紹介します。
先ず当事者の主張までです。
*****************************************************
主 文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は、被告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
1 被告の原告に対する東京家庭裁判所平成11年(家イ)第6515号夫婦関係調整調停申立事件(以下「本件調停事件」という。)の執行力ある調停調書の正本第3項(以下「本件債務名義」という。)に基づく強制執行は平成15年3月15日分以後許さない。
2 被告は、原告に対し、160万3724円及び平成16年11月17日(訴えの変更申立書送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 本件は、原告が、かつて原告の妻であった被告に対し、両者間の子らは、被告の再婚相手と養子縁組をしたから、被告が原告に対して有していた養有料の支払請求権は、上記養子縁組をした日以降分については消滅したとして、その消滅した部分について、本件債務名義に基づく強制執行の不許の裁判と、既に行われた強制執行により原告が取得し金員は法律上の原因を欠くとして不当利得に基づく返還を求め、被告が、本件は、実体法上一義的に明瞭に消滅変更した場合には当たらず、請求異議訴訟の訴えにより債務名義の執行力を排除できる場合には当たらない旨主張して争った事案である。
2 前提事実
以下の事実は、証拠(甲1ないし4、7ないし9)及び弁論の全趣旨により容易に認定し得る事実である。
(1) 原告(昭和41年○月○日生)と被告(昭和42年○月○日生)は、その間に、A(平成2年○月○日生)、B(平成5年○月○日生)及びC(平成7年○月○日生。以下この3名を「原被告間の子」ともいう。)が出生したが、平成12年2月24日、本件調停事件において調停離婚した。
(2) 本件債務名義は、前項の調停調書正本に表示された債権の1つであり、その債権は、原告は、被告に対し、原被告間の子らの養育料として、平成12年2月から同人らが各満20歳に達する月まで、一人につき毎月末日限り、長男A名義の普通預金口座に振り込んで支払うというものである。
(3) 原告は、平成14年11月6日、D(昭和41年○月○日生。以下「D」という。)と婚姻届出し、同月19日、DとEとの間の子であるF(平成3年○月○日生)及びG(平成5年○月○日生)と養子縁組届出をし、同月30日、Dとの間にHが出生している。
(4) 平成15年3月14日、被告はI(昭和33年○月○日生。以下「I」という。)と婚姻届出し、原被告間の子らはいずれもIと養子縁組届出をした(以下「本件養子縁組」という。)。
(5) その後、被告は、本件債務名義に基づき、原告の給与及び賞与に対し、債権差押命令を申立て(当庁平成15年(ル)第5524号、同年(ル)第10852号及び平成16年(ル)第4016号)、債権差押命令を得ている。
(6) 被告の原告に対する債務名義としては、他に離婚に伴う慰謝料(322万円)に係る本件調停調書の正本第4項があり、前項の平成16年(ル)第4016号は、その一部(15万円)を併せて請求債権として申し立てたものである。
3 争点
(原告)
(1) 本件養子縁組をした以上、原被告間の子に対し、第一次的に扶養義務を負うのは、養親たるIであり、このことは一義的かつ明瞭であるから、実体法上、本件養子縁組の日に被告の養育料請求権は消滅した(有斐閣「注釈民法(25)」551頁、一粒社「新家事調停読本」381頁各参照)。
これは、本件債務名義成立後に発生した請求異議事由である。
(2) 被告は、原被告間の子らがIと養子縁組をした旨原告に告知せず、家庭裁判所に申立てることもなく、強制執行の申立てを漫然と反復して行ったのであり、本件において、原告に対し家庭裁判所の審理を先行させるべきである旨主張するのは、信義に反する。
(3) 原告は、被告の強制執行により、その家計が逼迫を来たし、職場からリストラさえ示唆された。本件訴訟の目的は被告の不当な執行の排除に尽きる。
(4) 被告が差し押さえた原告の給与及び賞与は、原被告間の子とIとの養子縁組の日の翌日から平成16年8月分(ただし内金89049円)までの160万3724円であり、これらにつき、被告が利得する法律上の原因はない。
(被告)
(1) 原告の主張(1)は争う。
本件は、一義的かつ明瞭に消滅する場合には該当しない。
(2) 仮に、養育費の減額が認められるにしても、それは家庭裁判所において、各家庭の状況等を詳細に調査し、個別具体的な状況に即し、慎重な判断が行われるべきであり、地方裁判所における請求異議訴訟で判断されるべきものではない。
(3) 被告のした強制執行は本件債務名義に基づくものであり、不当執行には当たらない。
(4) 争う。