○平成25年4月22日付の後記日経新聞ニュースを見て暗澹たる気持になりました。離婚事件を受任すると最も問題になり、また、心配になるのが養育料の確保です。10年前までは、いくら家裁の調停で養育費支払いを約束させても、その約束通り、養育費を支払う例は、5人の内1人も居ないのが現実です、現実は大変厳しいのが実際です、離婚に当たっては、養育費がなくても一人で子供を育てる覚悟が必要ですとアドバイスせざるをえませんでした。
○このような厳しい養育費支払状況を是正するため平成16年の民事執行法大改正で、給料差押執行について、貸金等一般の債権は月額給与28万円以下の部分は4分の1まででしたが、養育料債権については月額給与33万円以下の部分の2分の1まで拡張され、且つ、将来の養育料差押も可能になりました。
○そして私自身不勉強でしたが、「
養育料債権ついての間接強制−H16民事執行法改正の目玉政策一例」記載の通り、金銭債権については間接強制が出来ないとの一般論のところ、養育料債権については間接強制の制度が出来て、実際、「
養育料債権ついての間接強制−1日5000円の間接強制金認定例」記載の通り、この間接強制制度を利用して、養育費支払遅滞1日について5000円の間接強制金支払を認められた例もありました(平成19年9月3日横浜家裁決定、家庭裁判月報60巻4号90頁))。
○これらの平成16年民事執行法改正によって養育費支払状況は相当改善されているとばかり思っていたのですが、現実はまだまだ厳しそうです。後記記事によると厚労省調査の結果「
離婚母子家庭で養育費を受けている割合は昭和58(1983)年の11.3%から平成10(98)年は20.8%まで増えたが、その後は横ばいで平成23(2011)年は19.7%だった。」とのことです。この数字では、養育費支払状況改善のための平成16年民事執行法大改正は殆ど効果を上げていないことになります。
○私の感じる最大の離婚抑止力は経済的困窮ですが、離婚を抑止するため経済的圧力を維持するなんて社会制度は本末転倒と思います。後記記事では、「
海外には、不払いがあると国が立て替え払いし、取り立てる制度を持つ国もある。」とありますが、日本でもこのような制度の創設を考えるべき時期に来ているように思います。
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母子家庭、養育費支払い2割どまり「食費切り詰め」
日経新聞2013/4/22 11:30
離婚による母子家庭が増える中、父親から養育費を受けているのは約20%と低迷している。国はあの手この手の施策で支払いを促すが大きな効果は見えず、子供が離れて暮らす親からも愛され「生活を保障される権利」は、守られていないのが実情だ。
「食費を切り詰め、財布とにらめっこの毎日」。千葉県に住む女性(27)はため息をつく。長女(5)と長男(2)を連れて2年前に離婚。元夫は月4万円の養育費を約束したが、支払われたのは1度だけだ。
今は生活保護を受け、時給850円のスーパーのパートが生活の支え。「来年春には娘が小学校に入り、お金もかかる。これからどうしよう」
厚生労働省が5年に1度実施する調査によると、1983年に約71万世帯だった母子世帯の推計数は2011年には約123万世帯まで増加した。10年時点の平均年収はわずか291万円。11年の調査対象のうち、離婚が原因の母子家庭は80.8%を占めた。
一方、離婚母子家庭で養育費を受けている割合は1983年の11.3%から98年は20.8%まで増えたが、その後は横ばいで2011年は19.7%だった。
国は、養育費が滞れば将来分まで差し押さえできるとした改正民事執行法を04年に施行。昨年4月施行の改正民法は離婚時に子供の利益を最優先して、養育費の金額や、親子の面会交流の頻度などを決めるよう規定。離婚届にはこの2点を決めたかを記入するチェック欄が新設された。
だが決めなくても提出は可能で、法務省によると、昨年4〜12月に未成年の子がいる夫婦の協議離婚は約9万6千件あったが、決めたと記入したのはいずれの欄も54%だけだった。
4月19日を「よういくの日」と銘打ち、離婚家庭の子の権利を守る活動をするNPO法人Wink(東京)理事長の新川明日菜さん(25)は「別れるときは感情的になり『自分一人で育てる』などと思いがち。離婚届を出す前に将来かかる教育費などをビデオで見せ、養育費は絶対必要という意識を持ってもらう仕組みがあればいい」と話す。
東北大大学院の下夷(しもえびす)美幸教授(家族社会学)は「海外には、不払いがあると国が立て替え払いし、取り立てる制度を持つ国もある。離婚は個人の問題とされがちだが件数も増えており、子供の権利を守るために支払いを確保する制度づくりが重要だ」と話している。〔共同〕