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40年ぶり改正相続法-相続の効力等に関する見直し部分の条文紹介」の続きで、相続の効力等に関する見直し部分の法律案の紹介です。
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二 遺産分割等に関する見直し
1 婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の遺贈又は贈与
婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について民法第903条第1項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定するものとすること。(第903条第4項関係)
2 遺産の分割前における預貯金債権の行使
各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の3分の1に当該共同相続人の法定相続分を乗じた額(同一の金融機関に複数の口座を有している場合には、標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して金融機関ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができるものとすること。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなすものとすること。(第909条の2関係)
3 遺産の一部分割
(一)共同相続人は、民法第908条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができるものとすること。(第907条第1項関係)
(二)遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができるものとすること。ただし、遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合におけるその一部の分割については、この限りでないものとすること。(第907条第2項関係)
4 遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲
(一)遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができるものとすること。(第906条の2第1項関係)
(二)(一)の規定にかかわらず、共同相続人の一人又は数人により(一)の財産が処分されたときは、当該共同相続人については、(一)の同意を得ることを要しないものとすること。(第906条の2第2項関係)
三 遺言制度に関する見直し
1 自筆証書遺言の方式の緩和
(一)民法第968条第1項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(同法第997条第1項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しないものとすること。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならないものとすること。(第968条第2項関係)
(二)自筆証書( (一)の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じないものとすること。(第968条第3項関係)
2 遺贈義務者の引渡義務等
(一)遺贈義務者は、遺贈の目的である物又は権利を、相続開始の時( その後に当該物又は権利について遺贈の目的として特定した場合にあっては、その特定した時)の状態で引き渡し、又は移転する義務を負うものとすること。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従うものとすること。(第998条関係)
(二)民法第1000条を削除するものとすること。
3 遺言執行者の権限の明確化
(一)遺言執行者の任務の開始
遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならないものとすること。(第1007条第2項関係)
(二)遺言執行者の権利義務
(1)遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有するものとすること。(第1012条第1項関係)
(2)遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができるものとすること。(第1012条第2項関係)
(三)特定財産に関する遺言の執行
(1)遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が五1(一)に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができるものとすること。(第1014条第2項関係)
(2)(1)の財産が預貯金債権である場合には、遺言執行者は、(1)に規定する行為のほか、その預金又は貯金の払戻しの請求及びその預金又は貯金に係る契約の解約の申入れをすることができるものとすること。ただし、解約の申入れについては、その預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合に限るものとすること。(第1014条第三項関係)
(3)(1)及び(2)の規定にかかわらず、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、その意思に従うものとすること。(第1014条第四項関係)
(四)遺言執行者の行為の効果
遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生ずるものとすること。(第1015条関係)
(五)遺言執行者の復任権
(1)遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができるものとすること。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従うものとすること。(第1016条第1項関係)
(2)(1)本文の場合において、第三者に任務を行わせることについてやむを得ない事由があるときは、遺言執行者は、相続人に対してその選任及び監督についての責任のみを負うものとすること。(第1016条第2項関係)
五 相続の効力等に関する見直し
1 共同相続における権利の承継の対抗要件
(一)相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、法定相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができないものとすること。( 第899条の2第1項関係)
(二)(一)の権利が債権である場合において、法定相続分を超えて当該債権を承継した共同相続人が当該債権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては、当該債権に係る遺産の分割の内容)を明らかにして債務者にその承継の通知をしたときは、共同相続人の全員が債務者に通知をしたものとみなして、の規定を適用するものとすること。(第899条の2第2項関係)
2 相続分の指定がある場合の債権者の権利の行使
被相続人が相続開始の時において有した債務の債権者は、民法第902条の規定による相続分の指定がされた場合であっても、各共同相続人に対し、法定相続分に応じてその権利を行使することができるものとすること。ただし、その債権者が共同相続人の一人に対してその指定された相続分に応じた債務の承継を承認したときは、この限りでないものとすること。(第902条の2関係)
3 遺言執行者がある場合における相続人の行為の効果等
(一)遺言執行者がある場合には、民法第1013条第1項の規定に違反してした行為は、無効とするものとすること。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができないものとすること。(第1013条第2項関係)
(二)民法第1013条第1項及び(一)の規定は、相続人の債権者(相続債権者を含む。)が相続財産についてその権利を行使することを妨げないものとすること。(第1013条第3項関係)