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小松亀一法律事務所は、「相続家族」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

相続人

相続財産管理人の実務基礎の基礎

○一人暮らしのAさんが財産を有しながら死去し、その相続人が判明しない場合、相続財産は法人とされ、この場合、利害関係人又は検察官の請求で相続財産管理人を選任しなければならず、相続財産管理人が選任されると、家庭裁判所は、遅滞なくこれを公告しなければなりません。この公告は第1回目の相続人捜索を兼ねています。その条文は以下の通りです。
第951条(相続財産法人の成立)
 相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。
第952条(相続財産の管理人の選任)
 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任しなければならない。
2 前項の規定により相続財産の管理人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なくこれを公告しなければならない。


○この相続財産管理人選任手続が取られるのは、Aさんが残した財産について法律上の利害関係を有する利害関係人、殆どはAさんの特別縁故者として財産分与を求める人か、Aさんに貸金等の債権がありその財産からの回収を求める人が請求した場合です。検察官も利害関係人として請求出来ますが、おそらくはAさんが生活保護を受けていたが死後財産が発見された場合などに生活保護費を支給した市町村からの要請で行われるものと思われます。

○相続財産管理人が選任されると不在者の財産管理人に関する規定が準用され、相続財産管理人は、財産調査に入って財産目録を作成し、家庭裁判所や請求のあった相続債権者等に報告するなどの義務を負います。その条文は以下の通りです。
第953条(不在者の財産の管理人に関する規定の準用)
 第27条から第29条までの規定は、前条第1項の相続財産の管理人(以下この章において単に「相続財産の管理人」という。)について準用する。
第954条(相続財産の管理人の報告) 相続財産の管理人は、相続債権者又は受遺者の請求があるときは、その請求をした者に相続財産の状況を報告しなければならない。


○相続財産管理人の職務は概ね次の通りです。
@前記952条の公告後2箇月以内に相続人があきらかにならなかったときは、遅滞なく、すべての相続債権者及び受遺者に対し、2箇月以上の期間を定めてその期間内にその請求の申出をすべき旨を公告し、限定承認の際の清算手続きの規定(928乃至935条)に従い、優先権ある債権者、期間内申出がありまたは既判明の債権者・受遺者、期間後に申出があった債権者・受遺者の順に配当する。
この公告は、第2回目の相続人捜索を兼ねています。
Aこの配当をしてもなお相続財産が残り、相続人が明らかでないときは、家庭裁判所に対し、6箇月以上の期間を定めて最終の相続人捜索公告をすることを請求し、この期間に相続人が現れないときは、相続人不存在が確定します。相続人がいても、この期間内に申出をしないと相続人としての権利を行使できなくなります。

これらの条文の規定は次の通りです。
第957条(相続債権者及び受遺者に対する弁済)
 第952条第2項の公告があった後2箇月以内に相続人のあることが明らかにならなかったときは、相続財産の管理人は、遅滞なく、すべての相続債権者及び受遺者に対し、一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、2箇月を下ることができない。
2 第927条第2項から第4項まで及び第928条から第935条まで(第932条ただし書を除く。)の規定は、前項の場合について準用する。
第958条(相続人の捜索の公告)
 前条第1項の期間の満了後、なお相続人のあることが明らかでないときは、家庭裁判所は、相続財産の管理人又は検察官の請求によって、相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、6箇月を下ることができない。
第958条の2(権利を主張する者がない場合)
 前条の期間内に相続人としての権利を主張する者がないときは、相続人並びに相続財産の管理人に知れなかった相続債権者及び受遺者は、その権利を行使することができない。


○この958条による相続人の最終捜索公告をしても所定期間内に相続人が現れず、かつ、958条の3による特別縁故者に対する相続財産分与手続も終え、なお相続財産が残った場合、これは国庫に帰属します。この国庫帰属がもったいないということで、特別縁故者として財産分与を求める人が相続財産管理人選任請求をすることが多いのですが、この特別縁故者については別コンテンツで説明します。条文は以下の通りです。
第958条の3(特別縁故者に対する相続財産の分与)
 前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者被相続人の療養看護に努めた者 その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
2 前項の請求は、第958条の期間の満了後3箇月以内にしなければならない。

第959条(残余財産の国庫への帰属)
 前条の規定により処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する。この場合においては、第956条第2項の規定を準用する。