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小松亀一法律事務所は、「相続家族」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

遺言書

遺言執行者といえども預金払戻には訴えが必要?

○相続開始により被相続人財産(遺産)は相続人に承継されますが、その承継の仕方は、先ず被相続人の意思即ち遺言での指定が優先され、被相続人の意思がない即ち遺言がない場合は法定相続分を基準として最終的には相続人全員の協議による合意即ち遺産分割協議の成立で決まります。遺言の場合は、遺留分減殺請求によって一部修正される場合もあります。

○遺言では、遺言の執行について執行者を定めて、遺産分配の具体的手続をさせることが出来、遺言執行者は、民法第1012条で「遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。」と規定されており、遺産分配に関する一切の手続を遺言執行者が行うとの建前になっています。しかし通常遺言執行で最も大きな財産処分である不動産の相続登記は遺言書があれば遺言執行者の関与なく相続による移転登記が可能で、実は、意外に遺言執行者のやることがありません。

○遺言執行者の業務で重要なものは、相続人名義預金の払戻ですが、これも銀行によっては相続人全員の実印押印・印鑑登録証明書添付同意書を要求し、遺言執行者だけでは払戻が出来ない場合も結構あります。相続預金の払戻に関しては、銀行にもよりけりですが、二重請求の危険を考慮して慎重すぎるところが多くあります。

○平成24年1月25日東京地裁判決例は、自筆証書遺言で遺言執行者に指定された甲弁護士が、家庭裁判所での検認手続を経て、株式会社三菱東京UFJ銀行に遺言書に従った預金372万円の払戻を請求したところ、同銀行は、相続人全員の相続届出への署名とおそらく実印による押印を要求して、遺言執行者単独での預金払戻を拒否しました。

○相続事案は,被相続人Aは離婚した妻Bとの間に子C、D、Eが、相続開始時妻Fとの間に子G、その他H女との間に子I,Jが居て、最初の遺言には、Gに5分の1、I、Jに各5分の2ずつ相続させる等の内容で、二度目の遺言は、I、Jを認知する等の内容で、Aは平成23年4月死去し、相続人は妻F、子C、D、E、G、I、Jの7名でしたが、C、D、Eは相続を放棄しました。

○甲弁護士は、三菱東京UFJ銀行の払戻拒否姿勢に対し、その理由を文書で回答されたい等の要請をするも無視されて、甲弁護士も頭に来たのでしょう、乙弁護士を代理人として、第一次的には同銀行の預金払戻拒否は不法行為に該当し預金同額372万円と乙弁護士に依頼したことによる弁護士費用30万円の合計402万円の損害賠償請求を、第二次的には預金372万円の払戻請求の訴えを提起しました。