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小松亀一法律事務所は、「相続家族」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

扶養

扶養の基礎-扶養・扶け合いに関する条文整理

○民法の扶養問題は、結構奥が深くて難物です。

関係する条文は以下の通りです。

第877条(扶養義務者)
 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
2 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、3親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。

第752条(同居、協力及び扶助の義務)
 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

第760条(婚姻費用の分担)
 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。

第766条(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)
 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者その他監護について必要な事項は、その協議で定める。協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、これを定める。

第730条(親族間の扶け合い)
 直系血族及び同居の親族は、互いに扶け合わなければならない。


○先ず扶養とは、一定の親族関係にある者の間で、種々の理由で経済的に自立できない者がいる場合、経済的に援助出来る者が生活費を給付したり、引き取って衣食住の現物給付を行うことと説明されています。前者金銭扶養は強制執行が可能ですが、後者引取扶養は強制による実現はできません。

○一定の親族関係ですが、先ず夫婦間の扶養義務は、前記752条、762条に定められています。親子については未成熟子扶養と老親扶養の2種があり、いずれも先ず877条の直系血族として定められ、未成熟子扶養に関しては、婚姻中は760条、離婚後は766条の問題にもなります。

○老親扶養に関しては、単なる金銭的援助だけではなく、介護が問題になります。介護とは、身体的・精神的能力が劣り通常の生活行動ができない者に対し、通常の生活行動ができるように援助することですが、通常の引取扶養の程度を遙かに越える負担の重い労働であり、その法的根拠は扶養義務ではなく、介護サービス提供契約の締結にあるとされています(上野雅和「老親介護をめぐる諸問題」谷口知平先生追悼1・家族法322頁)。

○扶養義務には、中川善之助博士が昭和3年に提唱の次の2類型が、現代でも通用しています。
生活保持義務;自分の生活を保持するのと同程度の生活を被扶養者にも保持させる義務
これは一杯の茶碗のご飯を分けても与えるもので夫婦・未成熟子扶養が適用されます。
生活扶助義務;自分の生活を犠牲にしない限度で、被扶養者の最低限の生活扶助を行う義務
これは一杯の茶碗のご飯は自分が食べ、余っているご飯を与えればよいと言うもので、成熟子の老親扶養、兄弟姉妹間、特別事情での3親等内親族間が適用になります。
この中川二類型論に対しては、戦後、色々批判が出ていますが、基本的には現在も維持されており、解釈の基準になっています。

○上記のように条文を概観して730条はどこに意義があるか検討すると「同居の親族」の内配偶者、直系血族、兄弟姉妹、3親等内親族については、それぞれの条文に「扶養義務」が明示されており、それ以外の「同居親族」だけの問題になります。
親族とは
第725条(親族の範囲)
 次に掲げる者は、親族とする。
1.6親等内の血族
2.配偶者
3.3親等内の姻族

と規定されていますので、これを超える4乃至6親等の「同居」の親族になり、従兄弟・従姉妹(いとこ)あるいは祖父母の兄弟姉妹などが同居している場合に「扶け合わなければならない」との解釈が問題になる余地がありますが、現実には、これらの親族が「同居」する例は、現代は殆どないと思われます。