本文へスキップ

小松亀一法律事務所は、「相続家族」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

遺言書

日本に居住する外国人が遺言をする方法1

○日本に居住する外国人Aさんから、日本と本国の両方に財産を持っているが、日本国内に所有している不動産についての遺言書を書き換えたいとの相談メールが英文で入って困惑してしまいました(^^;)。これまで全く経験したことのない相談だったからです。英国旅行記1」記載の通り、20年前にスコットランドのソリシターと大の友人になったことがありますが、彼も今は日本に居ないため、調査が必要になりました。以下、備忘録です。

○まず外国とまたがった法律行為の準拠法を定める法律は確か「法例」だったと思って「法庫」で調べると「法例」は平成18年に廃止されて、新たに「法の適用に関する通則法」が制定され、平成19年1月1日から施行されていました。また外国人の遺言に関する法律としては、「遺言の方式の準拠法に関する法律」があり、これも平成18年に改正がなされていました。

○外国人の遺言に関係する条文は以下の通りです。
「法の適用に関する通則法」
第4条(人の行為能力)
 人の行為能力は、その本国法によって定める。
2 法律行為をした者がその本国法によれば行為能力の制限を受けた者となるときであっても行為地法によれば行為能力者となるべきときは、当該法律行為の当時そのすべての当事者が法を同じくする地に在った場合に限り、当該法律行為をした者は、前項の規定にかかわらず、行為能力者とみなす。
3 前項の規定は、親族法又は相続法の規定によるべき法律行為及び行為地と法を異にする地に在る不動産に関する法律行為については、適用しない。

第36条(相続)
 相続は、被相続人の本国法による。

第37条(遺言)
 遺言の成立及び効力は、その成立の当時における遺言者の本国法による。
2 遺言の取消しは、その当時における遺言者の本国法による。

第41条(反致)
 当事者の本国法によるべき場合において、その国の法に従えば日本法によるべきときは、日本法による。ただし、第25条(婚姻の効力)(第26条第1項及び第27条において準用する場合を含む。)又は第32条(親子間の法律関係)の規定により当事者の本国法によるべき場合は、この限りでない。

「遺言の方式の準拠法に関する法律」
第1条(趣旨)
 この法律は、遺言の方式の準拠法に関し必要な事項を定めるものとする。

第2条(準拠法)
 遺言は、その方式が次に掲げる法のいずれかに適合するときは、方式に関し有効とする。
1.行為地法
2.遺言者が遺言の成立又は死亡の当時国籍を有した国の法
3.遺言者が遺言の成立又は死亡の当時住所を有した地の法
4.遺言者が遺言の成立又は死亡の当時常居所を有した地の法
5.不動産に関する遺言について、その不動産の所在地法

第3条 遺言を取り消す遺言については、前条の規定によるほか、その方式が、従前の遺言を同条の規定により有効とする法のいずれかに適合するときも、方式に関し有効とする。


○上記関係条文によると、在留外国人が日本国内に有する不動産について遺言をする場合、
@遺言の方式は日本民法相続法の規定が
A遺言の成立と効力は、成立当時の外国人本国法の規定が
適用されることになります。
但し、当事者の本国法に日本法によるべきときと定められている時、これを「反致」と呼ぶそうですが、日本法によることになり、その外国人本国法の調査が必要になります。