○当事務所が扱う交通事故訴訟事件は、ここ20年程は、解決まで長期間かかる後遺障害等級を争う訴訟事件が殆どです。事務所経営的には、示談交渉で簡単・短期間で解決する事件を多数扱うのが一番効率的なのですが、そのような事件は最近激減しています。交通事故専門を謳う弁護士HPが山のように増えて、当事務所HPは、全く目立たなくなったからで、多くの弁護士に受任を断られたような難しい事件が集まります。
○後遺障害等級を争う訴訟事件は、殆どがシビアな医学論争を伴います。保険会社側は、保険会社の専属スタッフによって医療記録も専門用語・英文字等は翻訳して貰い、更に専属顧問医師を抱えて保険会社主張べったりの意見書を作成し、その意見書を元に主張を展開します。
○これに対し被害者側では専属スタッフ・顧問医師などおりません。圧倒的に不利な立場でしたが、苦しんでいるお客様の状況を拝見するとなんとしても訴訟で勝ちたいと思い、当事務所では、先ず医療記録は全てデジタルデータ化して桐ファイルでデータベース化します。その過程で専門用語解読のための医療専門用語辞典数冊を駆使し、専門用語は、()付で翻訳後を入れます。これらの作業は事務局が慣れてシッカリやってくれます。この医療記録データベースを丹念に読み込むのが弁護士業務第一歩です。
○脊髄(頚髄案件が最も多い)を中心に脳・精神障害・目・肩・肘・腕・手・股関節・膝関節・足関節・手足指関節等殆どの身体の色々な部位の後遺障害が争いになり、その事件の都度、必要な医学文献専門書を買い込みます。医学文献専門書は平均1~2万円もし、それが軽く100冊以上に貯まっています。
○医学専門書を読んでも基礎的医学教育を受けていない弁護士ではなかなか理解出来ず、準備書面等に使えるように読み込むには相当の時間がかかり土日等時間を殆ど取られてしまい、訴訟事件は割りに合わないと実感します。苦労して準備書面にまとめても、裁判官からはそれは小松弁護士の意見ですね、専門医師の意見書を出して下さいと言われて終わります。
○そこで仙台にも私立大学医学部ができると聞いたとき、医学部に入り直そうかと真剣に考えたこともありました。しかし、難聴の身体障害を抱え、更に加齢による白内障進行等を考慮し、諦めました。せめてあと20年若ければ医学部を目指したと負け惜しみを言っていました(^^;)。しかし、以下の記事を見ると医学部も大変です。弁護士稼業の片手間では、到底、つとまりません。
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これが医学部大量留年の驚くべき実態だ
文春オンライン2018年3月21日 9時30分
異常な医学部受験ブームのために、医師になるモチベーションの低い人や、医師に向かない人たちが医学部に入ってくるようになりました。そのために、一部の医学部では別の問題も抱えています。それは「留年」です。
とくに一部の私立大学では、大量の留年が発生しています。ある私立大学を卒業した研修医は、私の取材に次のような衝撃的な事実を打ち明けてくれました。
「ストレートに国試に受かったのは3分の1」
「私の大学は同級生が120人いたのですが、1年目で20人ほどつぶれました(筆者注・留年のこと)。ストレートに6年間で卒業して、医師国家試験(国試)に合格できたのは40人ぐらいではないでしょうか。最終的に80人は国試に合格できると思いますが、他の人たちはいつの間にか転部して医学部から消えたり、卒業できずに放校されたりします」
その大学では卒業はできたものの、医師国家試験に受からず浪人している学生が200人ほど溜まっているという話も、ある医学教育関係者から聞きました。医学部に入りさえすれば、誰もが簡単に6年で卒業して医師になれるわけではないのです。
そもそも、医学部は1単位でも必修科目を落とせば、留年させられてしまいます。他学部では多少試験に落ちても、規定の単位数をクリアしていれば、進級することができます。なので、サークルにバイトに遊びにと、青春を謳歌している学生がたくさんいます。
「医学部がこんなにシビアな世界だと思っていなかった」
しかし、医学部ではあまり遊ぶ余裕はありません。医学の専門教育が前倒しされたので、1年生からしっかりと勉強する必要があります。受験勉強が終わりホッとしたのもつかの間、国試に受かるまで6年間ずっと怠らずに精進する覚悟が求められるのです。前出の研修医も、次のように吐露していました。
「大学に入るまで、医学部がこんなにシビアな世界だとは想像もつきませんでした」
実は同じ私立でも、大学によって大量に留年が発生するところと、そうでないところに大きく分かれています。とくに医師国家試験の合格率が高い大学では、「1学年約100人のうち6年で卒業できないのは2、3人」というほど留年が少ないのです。なぜ、そんなにも差が出るのでしょうか。
医師国家試験の合格率が高い大学の特徴
それは「医師になる」というモチベーションの違いなのではないかと思います。医師国家試験の合格率が高い大学は、授業料が免除される代わりに9年間の地方勤務が義務づけられる自治医科大学や、授業料を大幅に下げて偏差値がトップクラスになった順天堂大学など、優秀で「医師になる」というモチベーションの高い学生が集まる大学が多いのです。医学部関係者によると、医学部1年目から成績がいい学生は、卒業するまでずっとその成績を維持する傾向が強いそうです。
「医師にさえなれればいい」という開業医の子弟たち
一方、大量留年が発生している大学は、かつて「金を積めば入れる」と揶揄された70年代に設立された私立の新設校に見受けられます。そうした大学でも偏差値が上昇し、現在では裏口入学はほとんどできなくなったと言われています。大手予備校・河合塾の大学入試サイトKei-Netで確認すると、私立大学医学部の偏差値は最も低い大学でも62.5となっています。単純比較はできませんが、これは早稲田や慶應の理工系学部と同程度の偏差値です。つまり、早稲田・慶應かそれ以上の学力がないと、どの医学部にも入れないのです。
それに、私立の新設校でも留年が減り、国試合格率をアップさせているところがあります。優秀な学生が集まるようになったので、大学側のやり方次第で留年や国試浪人を減らせる可能性もあります。ただ、まだ以前の雰囲気が残っている大学もあるようなのです。私立大学出身で国立大学の医局に入った医師が、次のように語ってくれました。
「国立大学の医師たちはみんな海外の論文を一生懸命読むなど、よく勉強していると感じました。一方、僕の母校では開業医の子弟が多いせいか、『医師にさえなれればいい』という感じで、試験に受かる以上の勉強はしない学生が多かったと思います」
私大医学部生はベンツやポルシェ、教授は国産車
また、国立大学出身で、ある新設私立大の教授になった医師も、次のように話してくれたことがあります。
「大学の駐車場にベンツやポルシェが停まってるでしょ。あれは全部、学生たちの車なんですよ。やっぱり、私大の医学部に入れるのは開業医とか裕福な家庭の子が多いよね。教授のほうが安月給で、僕なんて国産車ですよ」
裕福な学生が多くてモチベーションが低いうえに、まわりも勉強熱心でないために、そうした大学では大量留年が発生してしまうのかもしれません。
学生を留年させるのは、大学側にも事情があります。国試合格率が低いと、文科省から補助金が削減されてしまうリスクがあるのです。見かけの合格率を高めるために、国試に受かりそうにない学生は簡単に卒業させません。
20人留年させれば1億円収入が増える
それに、医学部関係者から、こんな噂も聞きました。一部の大学では「経営的な思惑もあって、学生を留年させているのではないか」というのです。私立大学医学部の学費は、6年間で2000万円から高いところで4000万円以上かかります。1年間の学費が500万円だとすると、20人留年させれば、それだけで1億円も収入が増えるのです。
「授業料稼ぎ」の真偽は不明ですが、医学部に合格したと喜んだのもつかの間、留年を繰り返されたとしたら、保護者はたまったものではありません。そのうえ国試浪人されたら、国試予備校に通うのにも数百万円の授業料がかかります。大金を叩(はた)いたのに、もし医師になれなかったら……想像しただけでも悲劇です。
留年は一部の私立大学だけの問題ではありません。東京大学をはじめとする難関大学でも、解剖実習のテストのためにひたすら人体の部位を覚えるのがバカらしくなって転部したり、臨床実習がうまくいかず引きこもって留年してしまう学生がいると聞きました。
2017年の東大医学部の国試合格率は平均以下
ちなみに、2017年の東京大学医学部の国試合格率は88.9%で、80校中46位と平均点レベルです。しかも既卒者(国試浪人)を見ると15人中6人しか合格していません。最難関の医学部と言っても、入ってしまったら「並」の学生になってしまうのです。
医学部では「よき臨床医」を育てる目的が重視されるようになりました。そのため、低学年のうちから、高齢者や障害者の施設で介護体験などをする「アーリー・エクスポージャー(早期体験学習)」や、数人のグループで自発的に学習をする「PBLチュートリアル」といった、他者と触れ合ったり、多くの人と協同作業したりする授業が増えました。
このような教育内容に興味を持って取り組める人でないと、医学部での勉強は続きません。「自分は苦手だな」と思う人は、受験はやめたほうが無難なのです。
※編集部:文春オンラインの連載でおなじみの鳥集さんの最新刊『医学部』が3月20日、文春新書より発売になりました。5回にわたり新刊の読みどころや話題のトピックスを紹介します。(鳥集 徹)