○日弁連の会員は、全員が
日弁連交通事故相談センターに所属し、同センター発行交通事故相談ニュースが配られます。この交通事故相談ニュース平成28年10月1日発行第37号に平成27年12月17日開催相談担当者研修会報告として第二東京弁護士会所属横田高人弁護士の「後遺障害等級認定について」と題する論文が掲載されています。
○その中の「第2 局部の神経症状の後遺障害認定について」が参考になり、以下、紹介します。
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第2 局部の神経症状の後遺障害等級認定について
1 はじめに~12級、14級、非該当の区別
局部の神経症状については、12級13号に「局部に頑固な神経症状を残すもの」、14級9号に「局部に神経症状を残すもの」とされているのみであり、具体的な区別は、解釈に委ねられている。
実務上、これらの区別は、以下のようにされていると思われる。
(1)12級と14級の区別
実務上、
12級は「障害の存在が医学的に証明できるもの」であり、
14級は「障害の存在が医学的に説明可能なもの」あるいは「医学的には証明できなくとも自覚症状が単なる故意の誇張でないと医学的に推定されるもの」
と区別して認定するという運用がなされていると考えられる。
ここで「医学的に証明しうる」とは、いわゆる他覚的所見が存在することを意味しているが、この他覚的所見存在するといえるために、どの程度の所見が存在しなければならないかについて議論がある。
この点、各画像所見が他覚的所見に該当することには争いがないが、各種神経学的検査所見の評価は慎重になされる必要がある。
一般に、患者の意志と無関係に結果の得られる検査法と、患者の応答や協力が不可欠な検査法では、前者の方が客観性が高く、診断価値が高いと言える。これに対し、圧痛点や頚椎の有痛性可動域制限や知覚検査、筋力検査には、患者の理解と協力が不可欠であり、患者の意志に左右されることから客観性は低いと言われている。
反射検査についても、病的反射所見は客観性が高いと言えるが、ホフマン反射等の伸長反射は必ずしも病的とはいえないとの指摘や、絶対的なものではなく他の多くの臨床症状及び検査に加えることによってはじめて価値が出るものであるとの指摘がある。
このように、訴えられている症状に対して、どのような検査所見が、どの程度揃っているかを慎重に評価して、医学的証明あるいは説明の有無を判断していくことが重要である。
(2)14級と非該当の区別
「医学的に説明可能」という基準がクリアされるために留意する点は3点ほどあると思われる。
①症状の一貫性
事故当初から症状固定時まで、診断書上で症状が一貫していることが要求されることが多い。
事故当初に診断書に記載されなかった症状がある場合には、その理由について、合理的に説明をする必要がある。例えば、事故から2週間以上たって症状が発症したとか、初めて通院したとか、という場合に、それまでも痛かったけど、我慢していたという程度の説明では足りないように思われる。
②将来においても回復が困難と認められるか否か
診断書等において、症状が軽減していることが明らかに認められる場合に、事故状況等も勘案した上で、非該当にされるケースも散見される。
③常時性
例えば、「雨の日に痛い」という場合に、常に残存する後遺障害ではないとして、非該当になってしまうケースもある。