○「
行政書士有料メール相談料弁護士費用等補償保険金請求が棄却された裁判例1」を続けます。
弁護士費用特約では、法律相談費用も保険金として支払が認められ、標準的約款は、「
当会社は、被保険者が対象事故によって被った被害について、保険金請求権者があらかじめ当会社の同意を得て法律相談を行う場合に法律相談費用(法律相談の対価として弁護士、司法書士または行政書士に支払われるべき費用をいいます。以下同様とします。)を負担したことによって被る損害に対して、この特約の規定に従い、法律相談費用補償特約により支払われた保険金の額を超える額について、法律相談費用保険金を支払います。」とされます。
○法律相談についての標準的約款は次の通りです。
(3)法律相談
法律上の損害賠償請求に関する次の行為をいいます。ただし、口頭による鑑定、電話による相談またはこれらに付随する手紙等の書面の作成もしくは連絡等、一般的に当該資格者の行う相談の範囲内と判断することが妥当である行為を含みます。
(イ)弁護士が行う法律相談
(ロ)司法書士が行う、司法書士法第3条第1項第5号および同項第7号に規定する相談
(ハ)行政書士が行う、行政書士法第1条の3第3号に規定する相談
○行政書士法第1条の3第3号は次の通りです。
第1条の3 行政書士は、前条に規定する業務のほか、他人の依頼を受け報酬を得て、次に掲げる事務を業とすることができる。ただし、他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項については、この限りでない。
(中略)
三 前条の規定により行政書士が作成することができる書類の作成について相談に応ずること。
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2 争点及び争点に関する当事者の主張
本件の争点は,原告に支払われるべき弁護士費用等補償保険金,医療保険金及び後遺障害保険金の額である。
(原告の主張)
(1) 弁護士費用等補償保険金について
原告は,C行政書士との間において,eメールにより回数無制限で交通事故相談を受けることができる旨の契約を締結し,相談に対する報酬として,前提事実(4)に記載されたもののほか,平成22年9月から平成24年9月までの間に別紙のとおり毎月2万円ずつ支払った。
したがって,被告は原告に対し,未払額の合計50万円及びこれに対する別紙の備考欄に弁護士費用特約分と記載された各支払日以降の遅延損害金を支払うべきである。
(2) 医療保険金について
原告は,本件事故後,平成21年11月6日からA外科整形外科に通院して治療を受けた。通院開始日から平成22年5月4日まで180日間における実通院日数は143日であるから,原告に支払われるべき医療保険金の合計額は143万円となり,これから既払分の45万円を控除した98万円が未払である。
原告は,平成24年4月11日に後遺障害の認定を受けるまで,就労をする上で少なくとも14%以上の支障があり,上記143日間は平常の業務に従事できる状態ではなかったから,原告に支払われるべき医療保険金は,上記のとおり既払分を含めて143万円である。
(3) 後遺障害保険金について
原告の後遺障害等級は12級であり,これに対する保険金支払割合は10%であるから,原告に支払われるべき後遺障害保険金は100万円となる。
原告について素因減額の対象となる事情はない。
(被告の主張)
原告の後遺障害等級が12級であり,その場合の保険金支払割合が10%であることは認めるが,その余の主張はいずれも否認ないし争う。
(1) 弁護士費用等補償保険金について
行政書士は,官公署に提出する書類や権利義務に関する書類,事実証明に関する書類を作成することを生業とする職業であり,法律事件に関して法律事務を取り扱うことはできない(弁護士法72条)。本件において自賠責保険金請求書を作成することは権利義務に関する書類の作成として行政書士の行う業務の範囲と認められる可能性があり,その場合,当該手続に関連して行う相談も行政書士の行う業務の範囲ということにはなろう。
しかし,延べ25か月間にわたる相談で50万円を請求するのは,明らかに過大な請求というべきであり,これは,Bに対する損害賠償請求への関与(これは法律事件に関して法律事務を取り扱うもので,行政書士の業務の範囲外となる。)についての報酬を含んでいるとみざるを得ない。
旧日本弁護士報酬等基準規程を参考にすると,自賠責保険金の被害者請求に関連する相談料として相当性が認められ得るのは6万8800円までであり,その他の相談を含めても,弁護士費用等補償保険金の対象として適正な費用は10万円を超えない。
(2) 医療保険金について
原告は,平成22年1月10日に就労復帰しており,平常の業務に従事することができる程度になおったといえるから,医療保険金算定の対象となる実通院日数は同月9日までの51日である。したがって,原告に支払われるべき医療保険金は,既払分を含めて51万円を超えない。
(3) 後遺障害保険金について
本件事故は,ごく軽微な事故であって原告の身体に外力が波及したとは考え難い。また,腰椎椎間板ヘルニアに起因する左下肢症状等は,事故直後にはみられず,事故の約半年後に出現しているから,腰椎椎間板ヘルニアと本件事故との間に相当因果関係があるとはいえない。
仮に,腰椎椎間板ヘルニアと本件事故との間に相当因果関係があるとしても,本件事故がごく軽微な事故であることや,椎間板ヘルニアの認められた部位に椎間板の変性所見が認められることからすれば,原告の既往症が大きく寄与しており,搭乗者傷害条項の6条に従い,5割以上の素因減額がなされるべきである。