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小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

交通事故重要判例

同一部位14級後遺障害等級に関する画期的判決全文紹介1

○世の中には、全て貰い事故として、数年おきに数回、追突事故に遭いむち打ち症を繰り返し発症する不幸な方が結構居ます。一度追突事故で頸部痛等で後遺障害14級を認定されると、その後の追突事故で同一部位について後遺障害等級14級は認定されないのが自賠責保険の扱いででした。しかし、平成26年8月28日横浜地裁判決は、この扱いを打ち破りました。判決全文を2回に分けて紹介します。

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主  文
1 被告は,原告に対し,329万8240円及びこれに対する平成24年11月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は,これを10分し,その3を原告の負担とし,その余は被告の負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

 被告は,原告に対し,482万7240円及びこれに対する平成24年11月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
 本件は,原告が運転する普通乗用自動車(以下「原告車」という。)と被告が運転する普通乗用自動車(以下「被告車」という。)との間の交通事故(以下「本件事故」という。)に関し,原告が本件事故によって損害を被ったと主張して,被告に対し,民法709条に基づき,損害賠償金482万7240円及びこれに対する本件事故日である平成24年11月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

1 前提事実(争いのない事実,証拠(甲6,8ないし11)及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる事実)
(1) 本件事故について

ア 日時 平成24年11月25日午前6時頃
イ 場所 横浜市西区みなとみらい5丁目1番3号
ウ 加害車両 被告が運転する普通乗用自動車(被告車)
エ 被害車両 原告が運転する普通乗用自動車(原告車)
オ 事故態様 原告車が青色信号に従って交差点に進入したところ,左側から赤色信号を無視した被告車が当該交差点に進入し,原告車側面に衝突したことによって,原告車が横転し,一回転し大破,全損となった。 (以上(1)について,争いのない事実)

(2) 責任原因
 被告は,交差点に進入するに当たり,信号を確認し,赤色信号に応じて停止する義務があるにもかかわらずこれを怠り,赤色信号を無視して交差点に進入し,本件事故を惹起させたものであり,民法709条に基づき,原告が被った損害について賠償責任がある。
 (以上(2)について,争いのない事実)

(3) 原告が負った傷害
ア 傷病名
 頸椎捻挫,頸部神経根症,腰椎捻挫,右坐骨神経痛,右第8,9肋骨骨折
イ 原告の通院状況
(ア) 原告は,平成24年11月25日から平成25年2月6日まで,横浜市立みなと赤十字病院に通院した(通院実日数6日)。
(イ) 原告は,平成24年11月28日,社会保険蒲田総合病院に通院した。
(ウ) 原告は,同月26日から平成25年2月12日まで,上田整形外科に通院した(通院実日数24日)。
(エ) 原告は,同月16日から同年7月23日まで,みたに整形外科クリニックに通院した(通院実日数63日)。
 (以上(3)について,争いのない事実)

(4) 別件事故について
ア 原告は,平成16年9月12日に発生した交通事故(以下「別件事故1」という。)によって,腰椎捻挫及び頸椎捻挫の傷害を負い,平成17年7月26日に症状固定となり,腰痛及び長時間座位困難の神経症状について,損害保険料率算出機構によって,「局部に神経症状を残すもの」として自動車損害賠償保障法施行令(以下「自賠法施行令」という。)別表第2(以下「後遺障害等級表」という。)の第14級第9号に該当すると認定された(甲8,9)。

イ 原告は,平成20年11月11日に発生した交通事故(以下「別件事故2」という。)によって,頸椎捻挫の傷害を負い,平成22年1月18日に症状固定となり,頸椎捻挫後の右上肢しびれの症状について,損害保険料率算出機構によって,「局部に神経症状を残すもの」として後遺障害等級表の第14級第9号に該当すると認定された(甲10,11)。

(5) 本件事故における原告の後遺障害等級認定手続
 原告は,平成25年11月1日,自動車損害賠償責任保険(以下「自賠責保険」という。)の後遺障害等級認定手続において,以下のとおり,自賠責保険における後遺障害には該当しないと判断された。
ア 頸部受傷後の頸部痛,右上肢痛・しびれ等の症状については,後遺障害等級表の第14級第9号を超える等級には該当しないと判断されるが,@右上肢しびれについては,別件事故2の受傷に伴う右上肢しびれが後遺障害等級表第14級第9号に該当すると認定されており,これを加重したものとはいえず,後遺障害には該当しない,A頸部痛の症状については,将来においても回復が困難と見込まれる障害とはいえず,後遺障害には該当しないと判断された。

イ 腰部受傷後の腰部痛,右下肢痛等の症状については,後遺障害等級表の第14級第9号を超える等級には該当しないと判断されるが,B腰部痛については,別件事故1の受傷に伴う腰痛,長時間座位困難との症状が後遺障害等級表の第14級第9号に該当すると認定されており,これを加重したものとはいえず,後遺障害には該当しない,C右下肢及びしびれの症状については,将来においても回復が困難と見込まれる障害とはいえず,後遺障害には該当しないと判断された。

 (以上アイについて,甲6)

(6) 損害のてん補
 原告は,本件事故に関し,被告の保険会社から治療費等370万3594円の支払を受けた(争いのない事実)。

2 争点
 本件の争点は,@本件事故による原告の後遺障害の有無及び程度,A原告の損害額である。

3 争点に関する当事者の主張
(1) 争点@(原告の後遺障害の有無及び程度)について

[原告の主張]
 原告は,別件事故1及び別件事故2において,腰痛や右上肢のしびれの症状について,後遺障害等級表の第14級第9号に該当する後遺障害が残存したものの,本件事故当時(平成24年11月25日)において,腰痛の症状は消失しており,右上肢のしびれの症状も改善していたこと,本件事故は原告車両が1回転するほどの衝撃が生じていることからすれば,原告は,本件事故によって,右上肢,腰部痛及び右下肢に後遺障害等級表の第14級第9号に該当する後遺障害を負ったというべきである。

[被告の主張]
 同一部位の後遺障害については,後の事故による後遺障害の内容と程度が,以前の事故における後遺障害とその内容及び程度を異にしない場合には,後の事故によって後遺障害が残存したものとは認められないところ,本件事故は,別件事故1から8年,別件事故2から4年しか経過していない上,別件事故1及び別件事故2による症状が加重された事実は認められず,当該症状が寛解後,本件事故により悪化したことを裏付ける他覚的所見もないことからすれば,原告の神経症状は,後遺障害等級表の第14級第9号には該当しない。

(2) 争点A(原告の損害額)について
[原告の主張]
ア 治療費 205万4649円
イ 通院交通費 8万6970円
ウ 休業損害 156万1975円
エ 後遺障害逸失利益 86万8240円
 原告は,後遺障害等級表の第14級第9号に該当する後遺障害が残存しており,少なくとも5%の労働能力の喪失が認められるところ,原告の本件事故前年の所得は401万0813円であり,労働能力喪失期間は5年といえることから,次の計算式のとおり,原告の逸失利益は,86万8240円となる。
 (計算式)401万0813円×5%×4.3295(5年に対応するライプニッツ係数)=86万8240円
オ 通院慰謝料 132万円
カ 後遺障害慰謝料 220万円
 原告は,本件事故により,後遺障害等級表の第14級第9号に該当する後遺障害を負っており,全身の広範囲に神経症状が残存しており,慰謝料としては,220万円が相当である。
キ 弁護士費用 43万9000円
ク 合計 482万7240円
 原告の損害は,上記アないしキの合計から前記前提事実(6)の既払金を控除した後の残額である482万7240円となる。

[被告の主張]
ア 治療費 認める
イ 通院交通費 認める
ウ 休業損害 認める
エ 後遺障害逸失利益 争う
オ 通院慰謝料 争う
カ 後遺障害慰謝料 争う
キ 弁護士費用 争う