○夜間、信号のある市街地交差点で、青信号で交差点を進行する加害乗用車の右から左方に横断する被害者運転の自転車に気付かず衝突させた事案で、被害者信号無視での横断であるも、加害車も時速30km以上の速度違反、前方不注視の重大な過失があるとして、双方の過失割合を5:5と認めた平成15年9月30日大阪高裁判決(交民集36巻5号1161頁)の判断部分を紹介します。
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(3) 本件事故の態様
ア 前記争いのない事実等及び証拠(略)によれば、本件事故の態様について、次のとおり認められる。
(ア) 本件事故現場は、別紙図面記載のとおり、ほぼ南北に通じる2車線の道路とほぼ東西に通じる5車線の道路が交差する、信号機により交通整理の行われている市街地の交差点である。
道路状況は、アスファルト舗装されており、本件事故当時路面は乾燥しており、速度は時速60kmに規制されていた。
(イ) Aは、平成11年8月29日午前3時35分ころ、普通乗用自動車を前照灯を点灯させて運転し、本件事故現場付近の道路を東から西に向かい進行し、本件事故現場付近の交差点に差しかかった際、同所は道路標識により最高速度が60km 毎時と指定された道路であったから、速度を調節して前方左右を注視し、進路の安全を確認しつつ進行すべき注意義務があるのにこれを怠り、交通閑散であった上、対面する信号機の信号が青色を表示しているのに気を許して前方左右を注視せず、漫然時速約90ないし100kmの高速度で直進しようとした過失により、折から進路前方を右方から左方に横断中のB運転の自転車に気付かず、別紙図面記載Aの地点でアの地点のBを初めて発見したがそのまま同図面記載の×の地点で同自転車に自車右前部を衝突させて同人を自車ボンネット上に跳ね上げた上路上に転倒させた。
(ウ) Aは、本件事故を惹起したのに、停止して豊次を救助することなく、そのまま現場から逃走した。
イ 上記認定事実によれば、Aには、時速30km以上の速度違反、前方不注視の重大な過失があるが、Bにも赤信号無視の過失があり、その他本件事故発生が夜間であること、Bが老人であることなどの諸事情も認められる。
(4) 過失相殺及び損害のてん補
上記の事故態様からすれば、5割の過失相殺を認めるのが相当であるから、前記の損害額から5割を控除すると、Bの残損害額は1596万6892円〔更正決定 1596万5092円〕となり、控訴人Cの葬儀費用相当の残損害額は44万8883円(円未満切捨て)となる。
ところで、控訴人らは、前記のとおり、平成14年2月1日に1079万4097円の支払を受けているが、その充当関係については、甲5の記載内容からしても、控訴人らの損害額元本に弁済の指定充当(民法488条1項)をしたものと認められる から、これをBの損害額元本に充当すると、Bの残損害額元本は、517万27 95円〔更正決定 517万0995円〕となる。しかし、前記のとおり、保障金請求権についても請求の日の翌日である平成12年12月1日(甲4によれば、本件請 求の日が平成12年11月30日であることが認められる。)から平成14年2月1 日までの428日間についても、民法所定年5分の遅延損害金が発生するものであるから、上記支払日までの確定遅延損害金は、Bの損害額について、93万6141 円〔更正決定 93万6035円〕となる。