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小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

過失相殺・損益相殺・消滅時効

赤信号自転車過失割合に関する平成23年3月8日名古屋地裁判断紹介1

○夜間交差点における衝突事故の過失割合について左折先行車に続き直進した加害車両が6割、押しボタンを押さず赤信号を無視して横断歩道を進行した被害自転車走行者が4割と認定した平成23年3月8日名古屋地裁判決(自保ジャーナル・第1852号)の判断部分を紹介します。歩行者用信号が赤信号であったことは原告の過失の程度を定める際に考慮すべき事情であり、本件事故の態様、原告及び被告の過失の内容などを総合考慮すべきとしています。


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1 争点(1)(過失割合)について
(1) 証拠(略)によれば、本件事故の態様が以下のとおりであったと認められ る。

ア 本件交差点は、被告車の進行してきた北西から南東に向かう片側1車線の道 路(以下「被告進行道路」という。)と、原告車の進行してきた北東から南西に向かう中央線の引かれていない幅員約4.4mの道路(以下「原告進行道路」という。)が交わる交差点である。

 被告進行道路の制限速度は時速約40kmであり、その両側には幅員約3.4mの歩道がそれぞれ設けられており、各歩道と車道の境目に設置されている縁石から車道外側線までは約0.6m、各車線の幅員はそれぞれ約3.0mである。被告進行道路の本件交差点南東側には横断歩道及び押しボタン式の歩行者用信号機(以下「本件歩行者用信号」という。)が設置されており、被告進行道路には車両用信号機が設置されている。原告進行道路には一時停止の規制がされているものの、原告進行道路を進行する車両に対しては信号機による交通整理はされていない。

イ 原告車は、原告進行道路を北東から南西へ向かって本件交差点に差しかかった。被告車は、被告進行道路を北西から南東へ向かって時速約40kmで進行して本件交差点付近に差しかかった。被告車の前を先行車が進行しており、被告車の先端と先行車の後端との距離は、被告が本件交差点の存在に気付いた時点(原告車との衝突地点から約44m手前の地点)で、約16.9mであった。その際、先行車は左にウインカーを出し、減速していたため、被告車も減速した。

ウ その後、先行車は更に減速して本件交差点において原告進行道路の北東方向へ左折した。被告車が時速約30kmで本件交差点に進入したところ、原告車が原告進行道路から本件交差点に進入しており、原告車に気付いた被告がブレーキをかけたものの、原告車の右側面に被告車の前面が衝突した。
 本件事故時、被告車の対面信号は青信号であり、本件歩行者用信号は赤信号であっ た。

エ 衝突後、被告車は衝突位置から約4.9m進行した地点で停止した。また、原告は衝突位置から南側に約7.7m離れた位置に原告車は衝突位置から南側に約86m離れた位置に、それぞれ倒れた。

(2) 原告車が本件交差点に明らかに先入していたか
ア 原告は、原告車が本件交差点に明らかに先入していたと主張する。
 証拠(略)によれば、衝突地点において被告車は車線の中央線寄りの位置にいたこと、本件事故時における原告車の前輪の先端の位置は被告進行道路の中央線を約03m越えた場所の付近であることが認められる。そして、被告進行道路の歩道と車道の境目に設置されている縁石から車道外側線までは約0.6m、各車線の幅員はそれぞれ約3.0mであるから、原告車が本件交差点に進入した後、衝突までの間に進行した距離は約3.9mであると認められる(交差点とは、2以上の道路が交わる部分であるところ、ここでいう道路は車道を指すから、被告進行道路北東側に設置されて いた歩道の延長線上の部分は交差点に含まれず、この部分を含めて7.31m進行していたという被告の主張は採用できない。)。

イ 仮に原告車の速度を時速10kmとすると、3.9mの距離を進行するのに要する時間は約1.4秒となる。
 被告車は、本件交差点に進入した際は時速約30kmであったところ、衝突地点から衝突後の被告車の停止位置までの距離が約4.9mであり、時速30kmの車両の一般的な制動距離が約11.3mであることから考えると、被告車は、原告車と衝突する前にブレーキをかけていたこととなるので、衝突の約1.4秒前から衝突までの被告車の平均速度は時速30kmを下回っていたと認められる。そうすると、衝突の約1.4秒前に被告車がいた地点の衝突地点からの距離は、時速30kmの車両の一般的な制動距離である11.3mよりも短い距離である可能性が高い(仮に平均速度が時速20kmとすると、1.4秒間に進行する距離は約7.8mである)。

ウ そして、証拠(略)の記載内容から、被告進行道路の衝突地点から北西に11.3mの地点は停止線付近であると認められ、原告車が本件交差点に進入した際に被告車は少なくとも停止線付近に到達していたという位置関係からは、原告車が本件交差点に明らかに先入したとはいえない。

(3) 被告に著しい不注意があったか
 原告は、被告は3秒以上もの長時間、先行車に気をとられて原告車を見落としており著しい過失があると主張する。しかし、本件事故が夜間の事故であり、証拠(略)によれば本件交差点付近が明るい場所とはいえないこと、被告は原告車が被告進行道路に進入した直後には原告車に気付いていることなどを考慮すると、被告には本件交差点に進入する際に左右の確認が不十分であった過失が認められるものの、その程度が著しいとまでは評価できない。

 また、被告車が停止した位置が中央線寄りの位置であったことを踏まえると、被告は先行車が左折しきるのを待たずにその右側を進行しようとしたことがうかがわれるが、対向車線にはみ出して進行する程度に至っていたわけではなく、この点をもって著しい過失ということはできない。