○「
加害者請求権消滅時効理由での保険会社への直接請求否認判例まとめ6」で「任意保険会社へ約款第6条(3)号に基づいて直接請求が出来ることが前提で、(中略)消滅時効が中断されていない点を力説し、高裁は3人で審理するのだから、形式論理解釈ではない具体的に妥当な結論になるであろうと期待しました。ところが、高裁判決は私にとって更に驚愕の判決でした(^^;)。」としていた、驚愕の平成26年3月28日仙台高裁判決全文を4回に分けて紹介します。この判決についての説明は別コンテンツで行います。
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平成26年3月28日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成25年(ネ)第408号損害賠償請求控訴事件(原審・仙台地方裁判所平成21年(ワ)第933号、同第1090号)
主 文
1 本件各控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人三井住友海上火災保険株式会社は、控訴人に対し、149万円を支払え。
3 被控訴人三井住友海上火災保険株式会社は、控訴人に対し、控訴人が訴外Aに対する損害賠償請求権を行使しないことを同人に対して書面で承諾することを条件に、1686万9712円及び内1420万8688円に対する平成24年10月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 被控訴人共栄火災海上保険株式会社は、控訴人に対し、149万円を支払え。
5 被控訴人日新火災海上保険株式会社は、控訴人に対し、控訴人が訴外Bに対する損害賠償請求権を行使しないことを同人に対して書面で承諾することを条件に、313万2763円及び内295万6522円に対する平成24年10月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
6 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人らの負担とする。
7 仮執行宣言
第2 事案の概要
1 控訴人は、普通乗用自動車(以下、控訴人が運転していた同自動車を「控訴人車」という。)を運転中、平成17年11月18日、訴外Aが運転する普通貨物自動車(以下、訴外Aを「訴外A」と、同人運転車両を「A車」という。)との間で交通事故(以下「第1事故」という。)を、平成18年7月3日、訴外Bいく子が運転する普通乗用自動車(以下、訴外Bを「訴外B」といい、同人運転車両を「B車」という。)との間で交通事故(以下「第2事故」といい、第1事故と合わせて「本件各事故」という。)を発生させた。
本件は、控訴人が、(1)第1事故について、@被控訴人三井住友海上火災保険株式会社(以下「被控訴人三井住友」という。)に対する自動車損害賠償保障法16条に基づく損害賠償額(以下「自賠法の損害賠償額」という。)の支払請求として同法施行令の定める後遺障害保険金額の不足分149万円の支払、及び、AA車に関する一般自動車総合保険(以下「任意保険」という。)契約上の直接請求権に基づく損害賠償として、訴外Aに対する損害賠償請求権を行使しないことを同人に対し書面で承諾することを条件に、1686万9712円及び内1420万8688円に対する平成24年10月10日(被控訴人三井住友から第1事故について自賠法の損害賠償額が支払われた日の翌日)からの法定遅延損害金の支払を求め、(2)第2事故について、B被控訴人共栄火災海上保険株式会社(以下。「被控訴人共栄」という。)に対する自賠法の損害賠償額の支払請求として同法施行令の定める後遺障害保険金額の不足分149万円の支払、及び、C被控訴人日新火災海上保険株式会社(以下「被控訴人日新」という。)に対する任意保険契約上の直接請求権に基づく損害賠償として控訴人が訴外Bに上記Aと同趣旨の承諾をすることを条件に313万2763円及び内295万6522円に対する同年10月6日(被控訴人共栄から第2事故に係る自賠法の損害賠償額が支払われた日の翌日)からの法定遅延損害金の支払を求めた事案である。
原審は、控訴人の請求を全部棄却したため、これに不服の控訴人が控訴した。
2 「前提事実」及び「争点及び争点に対する当事者の主張」は、次のとおり原判決を改めるほかは、原判決「事実及び理由」中、第2の1及び2に記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 原判決11頁19行目「(第1章第6条A項)、同項(3)号」を「(第1章6条2項。以下では第1章の記載を省略する。)、同項3号」と、24行目「同項(3)号」を「同項3号」と各改める。
(2) 原判決12頁1行目「同項(1)号」を「同項1号」と、6行目「同項(3)号」を「同項3号」と各改める。
(3) 原判決12頁9行目「(被告三井住友の主張)」を「(被控訴人三井住友及び同日新の主張)」と改める。
3 当審における当事者の主張
(1) 控訴人の主張
ア 控訴人は、本件各事故が競合したことにより低髄液圧症候群を発症したものであり、これを否定した原判決には事実認定の誤りがある。
控訴人が低髄液圧症候群を発症したことは、控訴人のMRI検査の結果、大脳の下垂の疑いだけでなく、連続した硬膜造影が見られることや、RI脳槽脊髄腔撮影画像上、腰椎部において左右非対称の漏洩像が見られることから明らかである。また、原判決は控訴人に起立性頭痛がなかったことを前提とし、これを重視した判断をしているが、控訴人に起立性頭痛はあったし、そもそも、起立性頭痛の有無は診断基準として頼ることができないものである。
イ 被控訴人三井住友及び同日新による消滅時効の援用を認めた上、本件約款25条の適用を認めた原判決には誤りがある。
控訴人は、本件訴訟を提起し、任意保険会社に対する直接請求権を行使することによって、実質的に訴外人らに対する請求権を行使している。被控訴人三井住友及び同日新は、本件約款によって、訴外人らの損害賠償債務について併存的債務引受をし、同人らの連帯債務者となっているのであるから、本件訴訟の提起によって、訴外人らに対する消滅時効は中断したものである。したがって、本件において本件約款25条の適用はない。
(2) 被控訴人三井住友及び同日新の主張
ア 控訴人は、低髄液圧症候群を発症しておらず、自賠法の損害賠償額に未払はない。
イ 本件約款6条2項は、被害者が加害者に対して有する具体的な損害賠償請求額が確定した以降の被害者救済のための規定であり、これが確定しない段階で、保険者に損害賠償額の確定手続や支払を強いる規定ではない。控訴人は、被保険者に対し、同号所定の承諾書面を提出していないから、同号の支払条件は成就していない。