○私は、平成18年9月11日初稿「
被害者の保険会社に対する直接請求−可能な3要件」記載の通り、「
被害者の任意保険会社に対する直接請求根拠たる約款6条A(3)の『損害賠償請求権者が被保険者に対する損害賠償請求権を行使しないことを被保険者に対し書面で承諾した場合』は(1)、(2)の判決の確定や書面による示談成立を待つまでもなく、任意保険会社に直接請求が出来るはずです。」として、平成19年1月19日、共栄火災海上保険株式会社に対する訴えを第一号として、以来、交通事故に基づく損害賠償請求訴訟は、原則として、約款6条A(3)による保険会社への直接請求方式で行ってきました。
○おそらくこの「損害賠償請求権者が被保険者に対する損害賠償請求権を行使しないことを被保険者に対し書面で承諾」しての保険会社に対する直接請求での訴え提起は、それまで殆ど例がなかったと思われ、当初、この形式での訴え提起に疑問・懸念を示す裁判官も居ました。しかし、当初、この請求方式に強く異を唱える保険会社側代理人も登場せず、何しろ、自動車総合保険約款に記載しているとおりの要件事実を記載していましたので、この請求方式での請求自体は問題にされず、和解や判決に至っていました。
○ところが、平成21年5月1日、直接請求方式第8件目の提起になるA保険株式会社に対する訴えに対し、A保険顧問弁護士B氏が、A保険の代理人として、この「損害賠償請求権者が被保険者に対する損害賠償請求権を行使しないことを被保険者に対し書面で承諾」しての保険会社に対する直接請求は、これまでの交通事故訴訟の常識を覆し、交通事故訴訟のあり方の根本を覆すもので、到底、認められるものではないと、敢然と立ち塞がり、直接請求可否論争が発生しました。
○私としては、自動車総合保険約款通りの請求であり、どうして、これほど問題にされるのか、奇異の感を持ちながら、その後も、直接請求方式交通事故訴訟を提起し続けました。ところが、直接請求方式第16件目の提起になるD共済組合連合会に対する訴えに対し、D組合顧問弁護士E氏が、先のB氏と同様、小松弁護士独自の特異な信念によるかような形式の直接請求は、到底、認められないと敢然と立ち塞がり、ここでも直接請求可否論争が発生しました。ここまで16件の直接請求訴訟で、この方式に最後まで異議が出されたのはこの2件だけでした。
○私は、その後も懲りずに、交通事故訴訟は原則として、「損害賠償請求権者が被保険者に対する損害賠償請求権を行使しないことを被保険者に対し書面で承諾」しての保険会社に対する直接請求で行っており、平成26年4月現在、40件近い直接請求訴訟を提起し、この直接請求方式訴訟数は、平成19年1月の第一号以来、50数件となっております。この中で、この直接請求自体が本格的に争われたケースは、第8件目のA保険・B弁護士と、第16件目のC共済組合・D弁護士だけでした。
○交通事故訴訟は、大半は、裁判官から和解勧告が出されて、和解で解決しますが、第16件目のC共済組合・D弁護士との直接請求可否論争を含む交通事故訴訟は、請求方式自体が厳しく争われたため和解の余地がなく、判決が出され、直接請求自体は問題なく認められ、控訴されることもなく、決着しました。この判決は、「
保険会社(共済)への直接請求が激しく争われた例の初判決1」で紹介したとおりです。
○私が、保険会社に対する直接請求方式にこだわる理由は、実に素朴なものです。「
ある交通事故事件の顛末−予想外自賠責認定が始まり」で紹介した訴訟事件での経験がきっかけでした。この事件は、平成16年10月の交通事故で右眼を強打して、それまで1.5あった視力が0.05まで落ちて殆ど見えなくなり、主治医からは外傷性視神経損傷で回復可能性がないとの診断書が出され、問題なく、「1眼の視力が0.06以下になったもの」として後遺障害9級1号の後遺障害該当するはずと確信して後遺障害認定申請をしました。ところが、自賠責は局部神経症状としての14級後遺障害しか認めませんでした。その理由は、視力が0.05まで落ちた右眼に器質的損傷がないので、交通事故による傷害とは因果関係が認められないとされました。
○そこで平成17年12月、右眼視力低下が後遺障害等級9級に該当するとして、加害者相手に訴えを提起しました。当然のごとく加害者任意保険会社のT海上火災保険の顧問弁護士が、加害者代理人と称して登場し、被害者の視力低下は詐病だと断定するT保険顧問医(私から言わせると御用医)の5通に渡る意見書を錦の御旗に徹底的に争われました。そして平成16年10月の事故以来平成22年10月の最終解決まで実に6年の歳月を経過しました。この間、被害者は右眼が殆ど見えなくなったためそれまで生業としていた大工仕事が出来なくなり、大変な経済的苦境に陥り、加害者はその苦境を気の毒がって律儀に盆暮れ欠かさず挨拶の贈答品を贈り、謝罪し続けました。
○そのとき被害者は、加害者に対し、私はあなたに何の恨みもない、あなたの誠意は良く判っているので、もう盆暮れの挨拶もせずに結構です、兎に角、私の真の敵は、私を詐欺師扱いにする保険会社ですと言い続けました(別コンテンツに続けます)。