○「
日弁連交通事故相談センターと
交通事故紛争処理センター1」の続きです。
日弁連交通事故相談センター(相談センターと略します)と
交通事故紛争処理センター(紛センと略します)は似たような名前で紛らわしく一般の方にはどちらも同じと思っている方も多いかと思われます。
しかし両者は全く別の組織で相談センターは日弁連が独立した組織として創設し、運営財源は国(国土交通省)からの補助金、日弁連・弁護士会・弁護士・関係団体・国民からの寄付金などで運営され、紛センは、総理府(現在の内閣府)所管の組織で運営財源は、内外の損害保険会社、JA共済連、全労済、交協連、全自共、共済連等からから拠出されています。いずれも実際運営に当たるのは弁護士で、私もいずれの組織にも属していたことがありました。
○相談センター・紛センの違いについて、相談センターHPに
「
Q18公益財団法人交通事故紛争処理センターとの違いはなんですか?
A18 交通事故紛争処理センターは主として”和解あっ旋”を行っているのに対して、当センターでは治療中でも面接相談・電話相談を無料で行っています。」
と記載されていますが、相談センターでも”示談あっ旋”を行っています。相談センターは、「相談」と表示されているとおり、「相談」が主で、”示談あっ旋”は、紛センの”和解あっ旋”程利用されていません。
○紛センの”和解あっ旋”が相談センターの”示談あっ旋”より遙かに利用されている理由は、”あっ旋”不調に終わった場合の審査による裁定の拘束力の違いのためです。いずれも”あっ旋”が不調に終わると、”審査”の申出が出来、審査(委員)会での審査結果である裁定がなされます。この裁定結果について、被害者が同意した場合、支払義務者である保険会社・共済等が拘束されるかどうかが重要です。
○紛センHP
「審査会による審査」には、「
4.申立人は裁定には拘束されませんが、申立人が裁定に同意した場合には、保険会社等は、審査会の裁定を尊重することになっていますので、和解が成立することになります。」と記載されているとおり、紛センの「審査」結果は、保険会社・共済等殆どが拘束されます。
○しかし、相談センターHP「
示談が不成立に終わったとき」に「
審査結果について被害者側が同意するかどうかは自由である一方、被害者側が審査結果に同意した時は、相手方の共済は審査意見(評決)を尊重することになっています。」と記載しているとおり、
相談センターの審査結果に拘束されるのは「共済」だけで、肝心の保険会社は拘束されません。従って相談センターの「審査」は、最も割合の大きい保険会社を拘束できず、この点で効力が弱いのです。
○相談センターでの「
審査の申し出が可能となる9共済」は以下の通りです。
1. 全労済(全国労働者共済生活協同組合連合会)の「マイカー共済」に加入。
2. 教職員共済生協(教職員共済生活協同組合)の「自動車共済」に加入。
3. JA(農業協同組合)の「自動車共済」に加入。
4. 自治協会(全国自治協会)・町村生協(全国町村職員生活協同組合)の「自動車共済」に加入。
5. 都市生協(生活協同組合全国都市職員災害共済会)の「自動車共済」に加入。
6. 市有物件共済会(全国市有物件災害共済会)の「自動車共済」に加入。
7. 自治労共済生協(全日本自治体労働者共済生活協同組合)の「自動車共済」に加入。
8. 交協連(全国トラック交通共済協同組合連合会)の「自動車共済」に加入。
9. 全自共(全国自動車共済協同組合連合会)の「自動車共済」、全自共と共済連(全国中小企業共済協同組合連合会)の「自動車共済(共同元受)」に加入。
○相談センターでは、相当以前から、保険会社に対し、相談センターの「審査」結果を尊重するとの合意形成の申出をしているのですが、保険会社側がこれに応じず、おそらく、現在は相談センターも保険会社説得を諦めていると思われます。保険会社相手の相談センターでの”示談あっ旋”は保険会社が同意しない場合、あとは裁判をだすしかありませんが、紛センの”和解あっ旋”は、保険会社が同意しなくても、”審査”を申し立て、”裁定”がでると保険会社はこれを拒否できませんので、実質判決を得たと同じ効力を持ちます。そのため紛センの”和解あっ旋”は大いに利用され、相談センターの”示談あっ旋”は余り利用されない状況が続いています。