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小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

交通事故関連傷病等

神経症状と神経麻痺・しびれ・痛みの違いについて

○自賠責保険後遺障害等級第14級に「局部に神経症状を残すもの」と言う後遺障害が定義されています。この「神経症状」とは、追突事故によるむち打ち症即ち外傷性頚椎捻挫後の頚部・背部・頭部等に生じる痛み、しびれ、麻痺等が典型とされています。この14級の神経症状は、神経系統の障害の存在が「医学的に説明可能なもの」とされており、むち打ち症被害者ご本人は、追突事故のせいだと確信していても、「医学的に説明が可能でない」と言う理由で後遺障害非該当とされることも多々あります。

○自賠責保険後遺障害等級第12級に「局部に頑固な神経症状を残すもの」と言う後遺障害が定義され、「頑固な」と形容されるためには、神経系統の障害の存在が、「医学的に説明可能」なだけでなく、更に「他覚的に証明される場合」とされています。実は、交通事故訴訟で、この神経症状後遺障害を第14級から第12級以上の挙げることが最も困難で、多大な労力を要し、労力を費やしても目的を達せられないことが殆どで、正に労多くして益少なしの典型です。ですから、交通事故専門を自称するサイトでも「むち打ち症」のみは扱わない、或いは、後遺障害等級11級以下しか扱わないと当初から宣言する例があります。要するに手間暇ばかりかかった上にお金にならない仕事だから受けないと言うことです。

○実は、「神経症状」と言う言葉ですが、医学的にはどのように定義されているのでしょうか。ネットで調べると、平成25年10月21日時点では、MSゲートウエイというサイトの以下の解説しか見当たりません。
神経症状とは
中枢神経系の各領域はそれぞれ身体の違う部位に結びついています。
人が何かの動作を行うとき、脳では様々な機能をコントロールしています。たとえばコンピューターを使うときには、手でマウスをどのように動かすかという電気信号を出しています。また、文章を読んでいるときには、眼に記録した画像を処理するような指示を出しています。
脳や脊髄が病気や怪我などによって障害された場合、その部位によって生じる症状が決まります。例として、脊髄の障害では感覚の麻痺と手足の脱力や膀胱障害などが起こります。視神経の障害では、視覚の焦点や色覚に問題が起こることがあります。
この他、脳の障害によって起こる症状としては、次のようなものがあります。
脱力、痙縮、こわばり、手足が重いなどの運動機能障害
しびれ感、痛み、そう痒感、灼熱感などの感覚の異常
脳や脊髄の大きな障害にもかかわらず症状がまったく発現しないということもあります。しかし一般的には、障害された領域が広い程、症状が発現する確率は高くなります。


○上記説明では、良く判りませんが、神経症状とは、神経が正常な状態でなくなり、何らかの症状を起こすのではと、思われます。「加茂淳整形外科医師」「トリガーポイントブロックで腰痛は治る!ーどうしたら、この痛みが消えるのか?」71頁以下に「麻痺」、「しびれ」の説明があります。これによると「麻痺」とは「神経麻痺」のことで神経が何らかの原因で正常に機能せず、「知覚鈍麻」、「知覚脱出」を起こし、神経が麻痺して触っても針で突いても、「感覚が鈍い(鈍麻)」、「感覚がない(脱出)」ことを言うそうです。

○これに対し「しびれ」は、神経は正常に機能しており、その原因は筋肉のこわばりによる血行障害とのことで、例えば長い間正座して足がしびれるのは、筋肉のこわばりに起因して血管が圧迫されて起こる現象で神経障害ではないとのことです。この説明では、「しびれ」は神経症状ではないと言えそうです。むち打ち症の方の訴えの典型に手のしびれがありますが、「麻痺」としての「知覚鈍麻」、「知覚脱出」をしびれと表現する場合があり、「麻痺」か「しびれ」かをじっくり観察する必要があるとのことです。

○また、同著によれば、痛みによる筋力低下が、「麻痺」と表現される例も圧倒的に多く、注意を要するとのことです。筋肉の痛みによるしびれや筋力低下を、神経麻痺と勘違いする医師が少なくないそうです。問題は、この筋肉の痛みをどうやって客観的に診断するかです。訴訟では、その異常が客観的に目に見える形となっている即ち器質損傷がないと異常とは評価されず、損害賠償の対象になりません。誠に理不尽です。