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小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

その他交通事故

最高裁に覆された東京高裁判決一部紹介1

○「高裁判断を覆した平成23年4月26日最高裁判決全文1」で紹介した最高裁によって覆された高裁判決を探していましたが、今般、ようやく全文を入手しました。平成21年1月14日東京高等裁判所判決です。判例時報・判例タイムズ等有名判例集には掲載されていませんでした。全文で2万字近くにも及ぶ長文判決です。この2万字近い長文高裁判決を覆した最高裁判決の字数は、その4分の1の約5000字で、高裁が詳細な理由で認定した結論をアッサリ覆しています。

○その覆された高裁判決の一部を紹介します。679万6544円の請求に対し201万5674円の支払を認めていますが、先ず主文・控訴の趣旨と事案概要・判断結論部分です。

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主文
1 原判決を次のとおり変更する。
2 被控訴人は、控訴人に対し、201万5674円及びこれに対する平成16年1月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 控訴人のその余の請求を棄却する。
4 訴訟費用は、第1、2審を通じ、これを3分し、その2を控訴人の、その余を被控訴人の負担とする。
5 この判決は、第2項に限り、仮に執行することができる。

第一 控訴の趣旨
 1 原判決を取り消す。
 2 被控訴人は、控訴人に対し、679万6544円及びこれに対する平成16年1月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第二 事案の概要(略語等は、原則として、原判決に従う。)
1 本件は、被控訴人が開設するY病院(以下「被控訴人病院」という。)精神神経科を受診した控訴人が、被控訴人病院の丙川医師(丙川医師)には、控訴人を人格障害であると誤診し、また、治療行為をする意思もないのに誤診に係る病名を控訴人に告げたり、その上で治療を拒否する態度を示すなど違法な行為があったなどと主張し、被控訴人に対し、診療契約上の債務不履行又は不法行為(使用者責任)に基づく損害賠償及びこれに対する丙川医師の診療を受けた日である平成16年1月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

 原審は、丙川医師が控訴人をBPD(「境界性パーソナリティ障害」・「境界性人格障害」)と判断したことに誤りはなく、また、控訴人が被控訴人病院を受診した当時PTSD(「外傷後ストレス障害」)であったとはいえないので、丙川医師には控訴人がPTSDである可能性を見逃した過誤があるということはできないし、PTSDを念頭において問診等をしなければならなかったということもできず、さらに、BPDの病名告知を初診時から行うという医学的見解があること及び控訴人の診療を2回目の診察日に終了させるつもりであったとしても、控訴人が両親等と来院すればBPDの治療を行う可能性もあったことからすれば、丙川医師が、同日、控訴人に対し人格障害であると告知したことをもって違法であるということはできず、さらに、丙川医師の診療における言動が、客観的に違法と評価し得る程度に威圧的であり、人格を否定するようなものであったかどうかは明らかではない、と判断し、控訴人の請求を棄却したため、控訴人が控訴した。

2 前提となる事実並びに争点及びこれに関する当事者の主張は、原判決を次のとおり訂正するほかは、原判決の「事実及び理由」第二の1及び2に摘示されたとおりであるから、これを引用する。

(原判決の訂正)
(1)16頁7行目の「54万6130円」を「56万6910円」と、9行目の「13万9300円」を「16万0080円」と訂正する。
(2)16頁22行目の「384万円」を「381万9220円」と、24行目の「200万円」を「197万9220円」と、17頁2行目の「200万円」を「197万9220円」と訂正する。

第三 当裁判所の判断
 当裁判所は、控訴人が、平成16年1月30日において被控訴人病院精神科を受診した当時、過去においてストーカー等の被害にあったことがあり、PTSDを発症する可能性がある状態であり、このような患者に対しては、患者に安心感を与え、暖かい受容的な態度で接する必要があるにもかかわらず、丙川医師は、控訴人をBPDと短絡的に診断し、控訴人の状態を考慮することなく「人格障害」との病名を告知し、控訴人の人格を否定するような発言をしたものであり、しかも、丙川医師は、当時、控訴人につきBPDの治療を進める予定ではなかったことからすれば、この病名告知行為は、そもそも治療行為としての必要性がなく、かつ、患者の状態を観察した上で必要な時機にその病名を告知すべき義務を怠ってされたものであり、控訴人は、丙川医師による「人格障害」との病名の告知行為とそのほかの人格否定的な発言から自己の主体的意思ないし人格を否定されるという再外傷体験を受ける結果となり、これによりPTSDを発症する結果となったものであるから、被控訴人病院における丙川医師の上記行為は、診療契約上の債務不履行ないし不法行為を構成するものと判断する。その理由の詳細は、次のとおりである。