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小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

過失相殺・損益相殺・消滅時効

違法駐車過失責任−平成13年12月18日東京地裁判決紹介2

○「違法駐車車両過失責任−平成13年12月18日東京地裁判決紹介1」を続けます。

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第三 争点に対する判断
一 本件事故発生の責任について

(一)甲九の1〜3、乙1、3、原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、本件事故の発生に至る経緯として、次の事実を認めることができる。

(1)原告は、平成11年8月13日午後8時00分ころ、原動機付自転車を運転し、東京都町田市忠生四丁目21番26先路上を、町田街道方面から図師町方面に向かい、時速約30kmの速度で走行していた。

(2)本件道路は、町田街道のバイパス道路であり、幅員3・9mのグリーンベルトを挟んで、片側幅員は6・0mであり、終日駐車禁止とされていた。本件道路は平坦な直線道路で、見通しを妨げるものはなかった。

(3)被告Bは、同日午後7時55分ころ、自宅近くの賃借駐車場から被告車両を出し、返却予定のビデオを取りに行くために、本件道路上の当時の自宅前に被告車両を駐車させた。被告車両は、車幅が1・69m、高さが1・50mであり、色は白と茶のツートンカラーであった。被告車両は、非常点滅表示灯、尾灯その他の灯火をつけていなかった。

(4)当時は、夜間である上、雨が少し強く降っており、視界が悪かった。ちなみに、本件事故現場に比較的近接した相模原地域雨量観測所における観測データによれば、本件事故当日の午後7時から8時までの1時間の降雨量は四mm、午後8時から9時までの1時間の降雨量は八mmであった。

(5)本件道路の両側には、街路灯が約40m間隔に設置されていたが、街路樹が繁っていたため、これに遮られて、街路灯は道路全面を照射してはいなかった。

(6)同年9月12日に行われた実況見分の際の指示説明によれば、原告は、前方左側端に駐車している被告車両を22・3m手前で発見し、13・6m手前の地点で、危険を感じて原告車両のブレーキをかけたが、原告車両がバランスを崩し、転倒滑走して被告車両の後部左側に衝突した、とされている。この距離は、原告が、事故当時の記憶に基づいて、おおよその位置関係を指示説明し、これを警察官が計測したものである。

(二)以上の事実によれば、本件事故は、駐車中の被告車両を約22m先に発見した原告が、これとの衝突を回避しようとして原告車両のブレーキをかけた際、雨で路面が滑りやすくなっていたこともあって、原告車両がバランスを崩して転倒滑走した結果、発生したものであり、第一次的には、原告の不適切な運転操作によるものである。原告は、時速約30kmで走行していたものであり、被告車両を発見後、適切な減速措置とハンドル操作をとっていれば、被告車両との衝突を回避することができたと考えられる。

(三)他方、道路交通法45条一項は、車両は、道路標識等により駐車が禁止されている道路の部分等においては駐車してはならないと規定し、また、同法52条一項、同法施行令18条は、車両が夜間道路に在るときは、前照灯、車幅灯、尾灯その他の灯火をつけなければならないと規定している。しかし、以上に認定したとおり、被告Bは、本件事故当時、駐車禁止規制のされている町田街道のバイパス道路に、夜間、非常点滅表示灯、尾灯その他の灯火をつけることなく、被告車両を駐車させていたものである。そして、本件道路では、街路樹に遮られて街路灯は道路全面を照射しておらず、被告車両が駐車していた辺りは、薄暗い状況であった(乙1・15丁の写真参照)。また、被告車両は白と茶のツートンカラーであるが、夜間、駐車中の被告車両を後方から認識することは、必ずしも容易とはいえない(乙1・21丁の写真参照)。加えて、本件事故当時は、本件事故現場付近は、少し強めの雨が降っており、視界が相当悪くなっていた。
 このように、夜間、しかも、降雨により視界が相当悪くなっていた時に、非常点滅表示灯、尾灯等の灯火を全くつけることなく、薄暗い路上に違法に車両を駐車させることは、他車両の通行の危険を招来する行為であって、原動機付自転車を運転して道路の左端を走行してきた原告が、被告車両との衝突を避けようとして転倒した本件事故の発生については、被告Bの側にも少なからぬ責任がある。

(四)したがって、被告Bには、民法709条、自賠法三条に基づき、本件事故により原告に発生した損害を賠償する責任がある。Yらの免責の抗弁は、理由がない。そして、以上に認定した事実を総合すると、双方の過失割合は、原告65:被告B35と認めるのが相当である。

二 原告の損害額について
(一)治療関係費 合計33万8500円

(1)治療費 22万3940円
 甲八によれば、原告は、治療費として、多摩丘陵病院に15万8140円、こぶち整形外科クリニックに5万4210円、日本医科大学付属多摩永山病院に少なくとも1万1590円の合計22万3940円を支払ったことが認められる。これに対し、町田市民病院における治療については、本件事故との相当因果関係を認めるに足りる証拠はな
い。

(2)装具代 4万5520円
 甲八によれば、原告は、仙骨骨折により骨盤帯(軟性)の装用を必要と診断され、装具代として4万5520円を支払ったことが認められる。

(3)入院雑費 3万2500円
 入院雑費としては1日1300円が相当であるから、入院25日間の入院雑費は3万2500円となる。

(4)通院交通費 3万6540円
 原告本人尋問の結果によれば、原告は、こぶち整形外科クリニックに通院するために片道210円の通院交通費を要したことが認められる(日本医科大学付属多摩永山病院への通院に要した交通費は、証拠上明らかではない。)。したがって、通院交通費としては、次のとおり3万6540円を認める。
 (210円×二)×87日=3万6540円

(二)入通院慰謝料 130万0000円
 入院25日、通院五か月余り(通院実日数97日)の治療を要する傷害に対する慰謝料としては、130万円を相当と認める。

(三)後遺症慰謝料 550万0000円
 併合11級の後遺障害に対する慰謝料としては、後記の外貌の醜状障害を慰謝料の加算事由として評価した分を含めて、550万円を相当と認める。

(四)後遺障害による逸失利益 836万6117円
 原告は、平成12年2月14日に症状固定し(当時17歳)、自算会から、顔面挫創による外貌の醜状障害(後遺障害等級12級14号)、仙骨骨折に伴う骨盤骨の変形障害(同12級五号)の後遺障害の認定を受けた。そして、原告本人尋問の際に当裁判所が直接見分したところによれば、現在では、顔面の傷痕はさほど目立たなくなっており、これが原告の労働能力に直接的な影響を及ぼすことはないものと考えられる。ただし、傷痕の部位、原告の年齢、原告が就労前であること等を考慮すると、これを後遺症慰謝料の加算事由として評価するのが相当であるから、前記のとおり、後遺症慰謝料として合計550万円を認めることとした。

 そうすると、原告については、仙骨骨折に伴う骨盤骨の変形障害により14%の労働能力を喪失したものとして、本件事故に遭わなければ稼働し得たと考えられる18歳から67歳までの49年間について逸失利益を算定するのが相当である。そして、平成11年賃金センサスによる女子労働者の学歴計・全年齢平均賃金345万3500円を基礎収入として逸失利益を算定すると、次のとおり836万6117円となる(円未満切り捨て。以下同じ。)。なお、症状固定時点の現価を算定するため、ライプニッツ係数は、50年の係数から1年の係数を控除したものを使用した。
 345万3500円×0・14×(18・2559−0・9523)=836万6117円

(五)小計 1550万4617円

(六)過失相殺
 前記の過失割合に従い、過失相殺として、(五)の損害額から65%を控除すると、残額は542万6615円となる。
 1550万4617円×(1−0・65)=542万6615円

(七)損害の填補
 損害の填補として、既払の自賠責保険金327万7000円を控除すると、残額は214万9615円となる。

第四 結論
 以上によれば、原告の本訴請求は、被告らに対し(被告C保険に対しては、原告の被告Bに対する判決が確定することを条件として)、各自、214万9615円及びこれに対する本件事故の後である平成12年4月17日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容することとし、その余は失当として棄却することとして、主文のとおり判決する。
 (裁判官 河邉義典)