本文へスキップ

小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

事故及び損害調査書

交通事故刑事事件記録閲覧に関連する最近の変化

○「交通事故刑事事件記録閲覧に関連する重要判例紹介−はじめに」の続きです。
交通事故被害者の加害者側に対する民事損害賠償請求事件で、必須の書類は、平成6年9月22日初稿の「交通事故事件処理必要書類」記載の通り、事故の特定のために、
□事故証明書(所管の公安委員会交通安全センターでとれます)
□加害者の刑事事件記録(原則として誰でも所管の検察庁で確定刑事事件を閲覧できます。民事損害賠償事件で使用する旨、伝えて許可を得れば謄写もできます。刑訴法53条

です。

○上記の通り、刑事事件記録については、平成6年当時、刑事事件記録は、民事損害賠償事件で使用する旨伝えれば、問題なく記録全部について閲覧・謄写が出来ました。ところが、ここ1,2年と思われますが、検察庁の方針が変わったらしく、民事損害賠償事件で使用する旨伝えただけでは、閲覧すら許可されなくなりました。

○不許可理由としては刑事確定訴訟記録法第4条(保管記録の閲覧)の「4.保管記録を閲覧させることが犯人の改善及び更生を著しく妨げることとなるおそれがあると認められるとき。5.保管記録を閲覧させることが関係人の名誉又は生活の平穏を著しく害することとなるおそれがあると認められるとき。」に該当するとの理由しか推測出来ません。実際、「交通事故刑事事件記録閲覧に関連する重要判例紹介全文刑事事件記録閲覧に関連する重要判例紹介全文」では、「本件判決書の閲覧を許可した場合には,Cらとの間の民事裁判において本件判決書の内容が明らかにされ,被告人両名の前科の存在及びその内容並びに本件会社関係者が犯行に関与した事実が不特定多数の者の知るところとなるおそれがあるとして,法4条2項4号及び5号の閲覧制限事由に該当すると認めた。」とされています。

○当事務所で平成23年に受任した事件で、刑事事件記録閲覧謄写申請をして当初拒否された事件が2件あります。一つは飲酒運転による重大被害事故で過失の悪質・重大さを立証するため飲酒状況の解明が必要であり、もう一つは、被害者が赤信号横断したため発生したとされる重大被害事件であり、被害者は事故の衝撃で事故前後の記憶はなくなっているが,自分は絶対に赤信号を渡るようなことはしないと主張し、いずれも刑事事件記録の閲覧・謄写の上の精査が必要な事件でした。

○両事件とも、当初、担当事務官から閲覧すら拒否され、私自身が,担当検事と直接話をすると、閲覧・謄写が必要な理由を具体的に記載した書面の提出を要請されました。やむなくその書面を作成し提出すると、ようやく、閲覧・謄写が許可され,事務員が謄写に行きましたが、何と、飲酒事件では飲酒に関連する記述部分が、横断歩道赤信号進行とされる事件では、過失割合に関連する記述部分が、いずれも黒く塗りつぶされていました。

○刑事確定訴訟記録法第8条(不服申立て)によると「当該請求に基づく保管検察官の保存又は閲覧に関する処分に不服があるものは、その保管検察官が所属する検察庁の対応する裁判所にその処分の取消し又は変更を請求することができる。」とありますが、訴え提起後、裁判所に黒塗りのない刑事記録全文について検察庁への文書送付嘱託申立をすることにして、この不服申立まではしませんでした。まもなく、両事件とも第1回期日が始まりますが、裁判所の対応が楽しみなところです。