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小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

事故及び損害調査書

交通事故刑事事件記録閲覧に関連する重要判例紹介全文

○以下、交通事故刑事事件記録閲覧に関する重要判例紹介全文

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平成24年(し)第25号 検察官がした刑事確定訴訟記録の閲覧申出不許可処分に対する準抗告棄却決定に対する特別抗告事件
平成24年6月28日 第三小法廷決定
主 文
原決定を取り消す。
被告人A及び被告人Bに対する各組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件に係る刑事確定訴訟記録について,平成23年12月5日岡山地方検察庁検察官が申立人に対してした閲覧不許可処分を取り消す。

理 由
 本件抗告の趣意は,憲法違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反の主張であって,刑事確定訴訟記録法(以下「法」という。)8条2項,刑訴法433条の抗告理由に当たらない。

 所論に鑑み,職権で判断すると,本件は,申立人が,弁護士吉川拓威を代理人として,民事訴訟等の準備のために被告人A及び被告人Bに対する各組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件(以下「本件被告事件」という。)に係る刑事確定訴訟記録のうち本件被告事件の第1審の判決書(以下「本件判決書」という。)の閲覧請求をしたのに対し,同記録の保管検察官が,法4条2項4号及び5号に当たるとして閲覧を不許可とした(以下「本件不許可処分」という。)ので,申立人が準抗告を申し立てたという事案である。

 原決定は,申立人の本件判決書の閲覧目的について,申立人が代理人を務める株式会社甲(以下「依頼会社」という。)に対し,同社の株主であるCから株主の地位に基づいて株主総会の招集等の請求がされているところ,Cは,本件被告事件の被告人両名がそれぞれ代表取締役,専務取締役を務める株式会社乙(以下「本件会社」という。)の前任の代表取締役であり,被告人両名が本件会社の活動として行った本件被告事件の判決書を閲覧して,本件会社が以前から組織的に犯罪行為を行っていたことを明らかにすることによって,Cの依頼会社に対する請求が権利濫用であるとの主張を根拠付けるためというものであるとし,その上で,本件判決書の閲覧を許可した場合には,Cらとの間の民事裁判において本件判決書の内容が明らかにされ,被告人両名の前科の存在及びその内容並びに本件会社関係者が犯行に関与した事実が不特定多数の者の知るところとなるおそれがあるとして,法4条2項4号及び5号の閲覧制限事由に該当すると認めた。そして,弊害の内容及び程度と比較して,申立人に本件判決書を閲覧させる必要性は低いと言わざるを得ないから,閲覧につき正当な理由があると認めることもできないとして,準抗告の申立てを棄却した。

 しかしながら,本件で申立人が閲覧請求をしている刑事確定訴訟記録である第1審判決書は,国家刑罰権の行使に関して裁判所の判断を示した重要な記録として,裁判の公正担保の目的との関係においても一般の閲覧に供する必要性が高いとされている記録であるから,その全部の閲覧を申立人に許可した場合には,Cらとの間の民事裁判において,その内容が明らかにされるおそれがあり,法4条2項4号及び5号の閲覧制限事由に当たる可能性がないではないが,そのような場合であっても,判決書の一般の閲覧に供する必要性の高さに鑑みると,その全部の閲覧を不許可とすべきではない。本件では,申立人が「プライバシー部分を除く」範囲での本件判決書の閲覧請求をしていたのであるから,保管検察官において,申立人に対して釈明を求めてその限定の趣旨を確認した上,閲覧の範囲を検討していたとすれば,法4条2項4号及び5号の閲覧制限事由には当たらない方法を講じつつ,閲覧を許可することができたはずであり,保管検察官において,そのような検討をし,できる限り閲覧を許可することが,法の趣旨に適うものと解される。

 以上によれば,本件判決書の閲覧請求について,「プライバシー部分を除く」として請求がされていたにもかかわらず,その趣旨を申立人に確認することなく,閲覧の範囲を検討しないまま,民事裁判においてその内容が明らかにされるおそれがあるというだけの理由で法4条2項4号及び5号の閲覧制限事由に該当するとして本件判決書全部の閲覧を不許可とした保管検察官の処分には,同条項の解釈適用を誤った違法があると言わざるを得ない。そうすると,これをそのまま是認して準抗告を棄却した原決定にも,決定に影響を及ぼすべき法令違反があり,これらを取り消さなければ著しく正義に反するものと認められる。本件については,保管検察官において,「プライバシー部分を除く」との趣旨につき申立人に確認した上,法4条2項4号及び5号の閲覧制限事由に当たらない範囲での閲覧について改めて検討すべきである。

 よって,法8条2項,刑訴法411条1号,434条,426条2項により,原決定を取り消した上,更に本件不許可処分を取り消すこととし,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 大谷剛彦 裁判官 田原睦夫 裁判官 岡部喜代子 裁判官寺田逸郎 裁判官 大橋正春)