○追突等の交通事故によるむち打ち症(外傷性頚椎症候群)の具体的症状は,頭痛、頚部痛等から始まりめまい、耳鳴り、難聴等まで多彩・多岐に渡り、種々の病名がつけられることもあり、また、一般の整形外科医にとっては、交通事故との因果関係が判らず、安易に事故とは関係ないと断定して、被害者がその医師に不信感を持ち、医師を次から次へと変えるいわゆるドクターショッピングに陥る例が多数あります。
○そして最終的には「
頸椎捻挫治療の問題点−ある医者の感想に共感」で紹介した山口良兼医師の「
心療内科、精神科へとまわされ、本丸であるはずの脊椎に関する治療ができなくなり、患者は絶望してしまうのです。」との状況となって一人苦しむ被害者も多く、このような相談を受けた弁護士も、慎重に対処する必要があります。
○むち打ち症関連の症状は、「
交通事故による鞭打ち症(頸椎捻挫)関連症状医学文献紹介」で紹介していますが、その中で、胸郭出口症候群と胸鎖乳突筋炎症の備忘録です。
胸郭出口症候群とは
胸郭出口症候群(きょうかくでぐちしょうこうぐん、英thoracic outlet syndrome)は、腕神経叢と鎖骨下動脈、鎖骨下静脈が胸郭出口付近で頚肋、鎖骨、第一肋骨などや前斜角筋、中斜角筋、小胸筋などが圧迫・牽引されることで起きる症状の総称であり、症状としては、首肩こり、腕から手にかけてのしびれ、腕のだるさなどがあげられる。
頚椎、肩、末梢神経疾患の問題だけでは説明のつかない外傷にて発症した外傷性胸郭出口症候群の存在、或いは、胸郭出口症候群と頚椎症状が合併した病態の患者が多数存在することは既に学会で報告されている(整形外科と災害外科53(2)398〜401難治性鞭打ち損傷の治療方法−外傷性胸郭出口症候群(TTOS)を中心に−参照)。
整形外科と災害外科47(4)1169頁以下記載「外傷性胸郭出口症候群」の1171頁解説には、「外傷性胸郭出口症候群には2型あり、純粋に外傷のみで発症するタイプと、頸椎病変に外傷性胸郭出口症候群を合併したタイプがあり、発症メカニズムとして、先天素因(頚肋など)、体型(なで肩)上のものは軽微な刺激により胸郭出口部の狭窄を起こし発症することもある。
両胸鎖乳突筋とは
胸鎖乳突筋という名前は、胸骨と鎖骨を起始とし、側頭骨の乳様突起(及び後頭骨)に停止するところからつけられたもので、耳の下から鎖骨にかけての筋肉であり、胸骨及び鎖骨と繋がってはいる。むち打ち症状の一つとして、この胸鎖乳突筋の過敏化による痛みの発生を指摘する医師もいる。