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小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

任意保険会社への直接請求

加害者は任意保険(共済)契約締結で誠意ありと割り切る

○「対保険会社直接請求のきっかけ−保険契約の重要性」で「通事故損害賠償保険自体は、悲惨な交通事故被害回復に不可欠な重要なシステムと認識しており、このシステムに加入すること自体で自動車運転者は将来の被害者に一定の誠意を示していると評価すべきです。」と記載していましたが、このような記述をしたのは、被害者の中には、加害者から保険金の他に賠償金を取れないのでしょうかと疑問を呈する方が希に居るからです。

○このような例は、加害者は自分にこれだけひどい怪我をさせて、長い期間入院し、更に通院を続けて苦しい思いをしているのに見舞いにも来ない、挙げ句には、怪我の原因は、被害者にもあると酷いことを言い、賠償問題については全て保険会社に任せているので自分は関係ないと、自分が起こした事故なのにまるで他人ごとのようなことを言っている、こんな態度の加害者を絶対に許すことは出来ないと加害者自身の態度の悪さに酷く立腹している場合です。

○自動車保険契約の示談代行部分については一般に次のような約款になっています。
第5条(当会社による解決−対人賠償)
@被保険者が対人事故にかかわる損害賠償の請求を受けた場合、または当会社が損害賠償請求権者から次条の規定に基づく損害賠償額の支払いの請求を受けた場合には、当会社は、当会社が被保険者に対して支払い責任を負う限度において、当会社の費用により、被保険者の同意を得て被保険者のために、折衝、示談または調停もしくは訴訟の手続(弁護士の選任を含みます)を行ないます。
A前項の場合には、被保険者は当会社の求めに応じ、その遂行について当会社に協力しなければなりません。
B当会社は、次の各号のいずれかに該当する場合は、第1項の規定は適用しません。
(1)被保険者が損害賠償請求権者に対して負担する法律上の損害賠償責任の額が、保険証券記載の保険金額および自賠責保険等によって支払われる金額の合計額を明らかに超える場合
(2)損害賠償請求権者が、当会社と直接、折衝することに同意しない場合
(3)被保険自動車に自賠責保険等の契約が締結されていない場合
(4)正当な理由がなくて被保険者が前項に規定する協力を拒んだ場合


○上記約款は、任意保険契約を締結している加害者が交通事故を起こしてその損害賠償請求を受けた場合、保険会社がその加害者の同意の下に、保険会社が支払責任を負う限度で被害者と折衝し、示談、調停、訴訟手続を行うと言うものです。勿論、この約款は加害者と保険会社間の契約についてのもので、被害者を拘束するものではありません。被害者は保険会社との示談代行には応じないで直接加害者に請求することは可能です。

○しかし加害者が支払を拒否し或いは保険会社に任せていると交渉を拒否した場合、無理矢理直接加害者本人と交渉することは出来ません。加害者を相手に調停を申し立てたり訴えを提起する等の法的手続を取るしかありません。この場合、加害者側は保険会社の顧問弁護士を代理人として立てて来ますので、詰まるところ、実質的には保険会社を相手にせざるを得ないのです。

○調停や訴訟で損害賠償金額が合意・確定すればその金額は保険会社が支払い、加害者自身は全く支払不要です。保険会社がついている場合、その保険会社が倒産でもしない限り合意・確定した金額は100%支払われます。加害者本人だけの場合、例え1億円の支払を命ずる判決を得てもその支払能力がない限り実質回収できません。支払が確実になされることは、被害者にとっては当然のことですが、保険会社がついてないと、現実には回収できないことがよくあります。

○その意味でも支払が確実になされる交通事故任意保険制度は被害者にとっては大変有り難い制度です。加害者の態度が保険会社任せでけしからん、或いは見舞いにも来ないでけしからんなどと考えてイライラしても何にもなりません。イライラするだけ損です。加害者が任意保険に加入している場合、そのことだけで誠意ありと見なして、誠意がない、態度が悪い云々は考えず、保険会社から出来るだけ多くの賠償額を取得することに専念した方が賢明です。
勿論、保険会社から賠償金を取得した上で、加害者自身にも請求することは、保険契約での責任限度額が、適正賠償額より低い場合を除いては、到底、無理です。