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「症状固定後の治療費」で、「
症状固定後の治療費が損害として認められる要件は、症状固定後でも症状の内容、程度、治療の内容により、症状の悪化を防ぐなどの必要性があれば認められるとされており、神経症状の場合は、治療しなければ症状が悪化するとの特別の事情が必要であり、現実にはその事情が認められる例は少ない」と記載していました。
○現実には、後遺障害第14級、12級等比較的軽い後遺障害においては公刊された判例集では症状固定後の治療費を損害と認める判例は少ないですが、以下、14級、12級で症状固定後の治療費が認められた判例を紹介します。
昭和54年4月19日 東京地裁 昭50(ワ)3754号
後遺障害症状固定後の治療費の3分の1を事故と相当因果関係ある損害として認めた事例
被害者は33歳男性で後遺障害等級は第14級
症状固定後の治療費として約116万円請求し48万円が認められました。
【判決要旨】
①むち打ち症で3年4か月間に8か所の病院等で実日数160日治療を受けていた者の後遺症逸失利益算定につき、4か月後には完治の診断が出ていること、40日後には半日勤務、2か月後には1時間半程度なら自動車運転が可能であったこと等から、事故後4か月以降2年半、5%の労働能力喪失として算定された事例。
②右事案につき、治療費、交通費、雑費等は4か月後の症状固定まで全額、以降はその3分の1の範囲で相当因果関係が認められた事例。
③鍼灸、マッサージ治療は医師の指示にもとづくものではないことから、請求が否定された事例。
④むち打ち症に伴う通院雑費の認定事例。
<出典>
自動車保険ジャーナル・第317号
平成3年1月25日名古屋地裁 平元(ワ)3643号
症状固定後も左頸・背部、左上股などに神経症状が残る場合に、症状固定後の治療費等を認めた事例 男性
被害者は年齢不明の給与所得者
症状固定後の治療費として約67万円請求し約11万円認められ、更に義歯取替費、化粧台等も認められています。
【判決要旨】
①眉間から前額部にかけて5センチの皮下組織に達する裂創、左頬部に横走する8センチの骨に達する裂創と人中から上口唇にかけての擦過創(12級)のほか14級歯科補綴、14級神経障害を残す男子商社営業マンの後遺症逸失利益算定につき、実収入を基礎に10年間10%の労働能力喪失をホフマン式で算定された事例。
②症状固定後も苦痛をやわらげるため、健康器具を使用していること等から、1回5000円、月2回、1年分の将来の治療費が認められた事例。
③7年毎に義歯取り替えが必要とされ、余命の範囲内で5回、15万4500円の割で損害と認められた事例。
④顔面醜状を目立たなくする化粧品代が損害と認められた事例。
<出典>
自動車保険ジャーナル・判例レポート第95号-No,11