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小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

交通事故重要判例

脳梗塞既往症による後遺障害発症後のむち打ち症事例3

「脳梗塞既往症による後遺障害発症後のむち打ち症事例2」の続きです。
本件では,第12級後遺障害の有無が争われましたから、当然、第12級後遺障害に基づく逸失利益、慰謝料も激しく争われました。本件事故当時、Xさんには既に既往症として第14級後遺障害が存在していたことを認めていますので、この14級と12級の差額部分が損害賠償の対象となるもので、いわば当初から苦しい戦いでした。

さらに本件事故の3年前に発症した脳梗塞によって、本件事故当時も殆ど仕事が出来ない状況でしたから、逸失利益計算における基礎収入の算定についても、判決の事実整理には、被告らの主張として「争う」としか記載されていませんが、保険会社側は、元々収入がないのに逸失利益は生じるはずがないと厳しく争いました。

本件事故から症状固定まで、511日間ありましたが、そのうち1年(365日)分の休業損害として600万円近い請求をしましたが、一応、会社形式の建築関係自営業をしていたものが、3年前の脳梗塞による入院、リハビリ等で殆ど仕事が出来なくなり、体調が回復して,これから仕事に本格的に復帰使用としていた矢先の事故であったため,事故直前の収入を証明できる資料が殆どなく、この休業損害の立証にも大変苦労しました。
ところが、後日詳しく紹介しますが、判決は、一日当たりの休業損害額を請求額の3割引にするも、何と、請求した365日分を超える511日分もの休業損害を認めてくれ、大感激でした。

以下、判決文の争点部分後半です。

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(4)Xの損害額
(Xの主張)
ア治療費 45万3038円
イ交通費 55万7530円
ウ休業損害 590万3145円
 Xは,本件事故前,株式会社Eを経営し,マンションリフォーム等の業務に従事していたが,本件事故による傷害で仕事を全く継続できなくなり,事実上廃業状態になっている。Xの休業損害額は1日当たり1万6173円であり,休業期間は本件事故の日から症状固定日である平成17年12月13日まで551日間休業状態が続いているが,そのうち,1年(365日)分の休業損害として,590万3145円を請求する。

エ 慰謝料
(ア) 入通院分250万円
 Xは,本件事故による傷害で,上記のとおり,本件事故日である平成16年6月11日から症状固定の平成17年12月13日までの1年6か月の間に,36日間入院し,合計約353日実通院しており,これに対する慰謝料は,少なくとも250万円を下らない。
(イ)後遺障害分 180万円
 Xの後遺障害は,後遺障害等級12級に該当するものであり,その精神的苦痛を慰謝する慰謝料としては300万円が相当であるが,Xは,後遺障害等級14級相当の既往症があったので,後遺障害等級14級についての慰謝料額120万円との差額180万円が後遺障害に対する慰謝料として相当である。

オ 逸失利益 468万6627円
 年間の基礎収入を626万9400円(平成16年賃金センサス産業計・企業規模計・男性労働者・58歳による。)とし,ライプニッツ係数を8.306,労働能力喪失率を9パーセント(14パーセント−5パーセント)とする。

力 物損 50万円
 Xは,本件事故により,X車両(平成4年型□□□。平成5年11月約230万円で新古車として購入。)を失った。この車両の本件事故当時の再調達価格は少なくとも50万円を下らない。

キ 損益相殺 275万5910円
 被告Y1の任意保険会社より受領した275万5910円を控除する。

ク弁護士費用 140万円

(被告Y1の主張)
ア 治療費 否認する。

イ 交通費 否認する。

ウ 休業損害 本件事故前のXの収入が不明である。仮に,賃金センサスによる収入によるのであれば,賃金センサスを上回る収入があったとする蓋然性を明らかにする必要があるが,被告は,その立証もしていない。

エ 慰謝料
 入通院分 過大であり,争う。Xの治療期間は,受傷後1週間の安静,長くても受傷後3週間の経過観察が相当であり,入通院期間が過長であるし,Xの入院は希望入院,平成16年9月からのC整形外科への通院は希望通院とされている。仮にX主張の入通院期間を前提にするとしても,131万円程度が相当である。

 後遺障害分 Xに本件事故による新たな後遺障害は発生していないのであるから,後造障害を理由とする慰謝料は認められない。

オ 逸失利益 争う。

力 物損 争う。Xは,X車両が初度登録平成5年9月であるのに,初度登録平成6年7月の車両により価格を算定している上,X車両の走行距離が9万2037キロメートルであるにもかかわらず,走行距離4万2000メートルの車両についての資料に基づいた主張をしている。X車両の価格は,21万6000円が相当である。

キ 既払い金 395万5017円

ク 弁護士費用 争う。

(被告Y2の主張)
争う。

(5)被告Y1の損害額
(被告Y1の主張)
ア 物損
 本件事故により,被告車両につき,24万8500 円の損害が生じた(全損時価額)。本件事故についてのXの過失割合は2割であるから,Xの賠償すべき額は4万9700円である。

イ 弁護士費用 10万円

(Xの主張)
争う。

(6)被告Y2に対する請求額
(Xの主張)
 被告Y2は,被告Y1の自賠責保険会社であるから,自賠法16条に基づき,自賠法施行令2条所定の自賠責保険金額限度内において,本件事故により生じた人身損害のうち,149万円の支払を求める。

(被告Y2の主張)
被告Y2の支払額は争う。