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小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

交通事故重要判例

脳梗塞既往症による後遺障害発症後のむち打ち症事例2

「脳梗塞既往症による後遺障害発症後のむち打ち症事例1」の続きです。
 本件交通事故の争点は、先ず過失割合がありました。
 本件交通事故の事故態様は、道路進行中のXさんの自動車に、道路脇のマンション駐車場から道路に出て来たY1さんの自動車が側面衝突したもので、過失割合についてYさんはゼロ、Y1さんは、Xさん2対Y1さん8を主張していました。Xさんは、過失2を主張されたことに強く憤慨し、何としてもゼロであると激しく争いました。

 最大の争点はXさんの後遺障害の有無でした。
 Xさんは、本件交通事故の3年前に脳梗塞で倒れ、4ヶ月間入院し、退院後も通院を続け、事故の1年前から右肩上部の痛みと頚から右腕にかけてしびれが走り、検査の結果、第6、7頚椎椎間板の膨驍ェ原因で、頚椎症性神経根症と診断されました。その後Xさんは、1年間程通院し、その症状が相当和らいだ段階で本件交通事故に遭遇し、折角、和らいできた右肩上部の痛みと頚から右腕にかけてしびれが、一気に増悪し、36日間入院治療を受け、更に症状固定時までの約1年6ヶ月の間に353日間も通院しました。

 症状固定診断後も、右肩上部の痛みと頚から右腕にかけてしびれが続き、自費で通院治療を継続しながら、後遺障害認定申請するも自賠責保険会社からは、現在の症状は3年前の脳梗塞及びその後発症した第6、7頚椎椎間板の膨驍ェ原因で、頚椎症性神経根症によるものであり、本件事故による傷害を原因としたものではないとの趣旨で、後遺障害非該当と認定されました。

 保険会社側では,顧問医が非該当認定を裏付ける意見書を提出し、Xさんの現在の症状は、程度は軽いものであり、症状があるとしてもそれは、従前からのXさんの持病によるものであり、交通事故とは無関係であると主張して、Xさんの後遺障害の存在を激しく争いました。

 Xさんは、本件事故1年前には第6、7頚椎椎間板の膨驍ェ原因で、頚椎症性神経根症と診断され、右肩上部の痛みと頚から右腕にかけてしびれ等の治療のため通院中でした。そこでXさんは、本件事故当時は、「局部に神経症状を残すもの」として第14級相当の後遺障害であったものが、本件事故によって「局部に頑固な神経症状を残すもの」の第12級に上昇したとの理由で、加害者Y1さんに対する請求は、慰謝料、逸失利益等は14級と12級の差額分の請求となりました。
 そこで保険会社Y2への請求は、12級後遺障害保険金224万円から14級後遺障害保険金75万円を差し引いた菌159万円の請求となりました。

 以下、判決文の争点部分前半です。

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2 争点
(1)事故態様
(Xの主張)
 Xは,X車両を運転して,本件事故現場付近の路上を進行中,対面する信号機の表示が青色であったことから,時速30ないし40キロメートルの速度で進行していたところ,被告Y1が,被告Y1車両を運転してマンションの駐車場から出てくる際に,X車両の側面に衝突した。

(被告Y1の主張)
 被告Y1は,路外の駐車場から歩道上に進入し,一時停止して安全の確認をしていたところ,丁度,車道左方の信号機(本件事故現場の□△方面寄りにある信号機。以下「本件信号機」という。)の表示が赤色となって,前方車道を右方から左方に進行していった車両が同信号機手前の停止線手前で停止し,同車両に追従してきた2トンくらいのパネル型トラック(以下「本件トラック」という。)が間をあげて停止し,その運転手が被告Y1に対し前方通過を許す合図をしたので,被告Y1は,発進して車道に出て右折を開始したところ,上記パネルトラックの右後方を直進してきたX車両の左前部に被告車両の前部を衝突させた。

(被告Y2の主張)
 事故態様は不知。

(2)Xと被告Y1の過失割合
(Xの主張)
 被告Y1は,マンションの駐車場から道路に出る際,道路を進行してくる車両の有無を確認して進行する注意義務があるのにこれを怠り,進路前方右側から進行してくるX車両に気がつかないまま走行したものであり,本件事故は,被告Y1の過失で生じたもので,Xの過失割合はゼロである。

(被告Y1の主張)
 上記の本件事故の態様によれば,被告Y1とXの過失割合は,8対2とするのが相当である。

(被告Y2の主張)
 本件事故についての被告Y1の責任は争う。

(3)Xの後遺障害の程度
(Xの主張)
ア Xは,本件事故により,腰椎捻挫,頚椎捻挫,胸背部挫傷等の傷害を受け,平成17年12月13 日,症状固定の診断を受けた。

イ Xは,平成13年3月に脳梗塞で倒れ,4か月間入院し,その後しばらく通院したが,平成15年初めころから,右肩上部が痛んで首から右腕にかけてしびれが走るようになった。この症状は,脳梗塞とは無関係で原因不明なため,B病院で診察を受けたところ,第6,7頚椎の椎間板の膨隆があり,頚椎症性神経根症になっていることが判明し,治療を受け,本件事故直前には,右肩上部の痛みも 首から右腕にかけてもしびれも,相当軽快して楽になってきていた。

ウ Xは,平成18年3月30日 本件事故による後遺障害につき,後遺障害等級非該当の認定を受けた。この認定は,Xに,本件事故以前から中枢神経系の障害に伴う左肩麻痺及び頚部神経根症に伴う頚部痛が認められており,本件事故後の現存する神経系統の機能障害として,本件事故の障害による頚部痛,両側肩甲上部痛,右上肢痛は所見されているものの,当該神経症状が加わった結果,本件事故前における神経系統の障害が加重したものと捉え得る所見に乏しく,自賠法施行令別表上の等級を加重したものとは捉え難いことから,等級非該当とするというものであった。

エ しかし,Xの右肩上部の痛み,首から右腕にかけてのしびれは,他覚的に神経系統の障害が証明されるものであり,局部に頑固な神経症状を残すものとして,後遺障害等級12級13号に該当することは明白である。

(被告Y1の主張)
 本件事故により,Xには,事故前における神経系統の障害を加重したものと捉えうる所見に乏しく,自賠法施行令別表上の等級を加重したものとは捉え難いことから,後遺障害としての等級評価は困難とされており,本件事故による新たな後遺障害は発生していない。

(被告Y2の主張)
 不知ないし争う。