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小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

休業損害逸失利益

神経症状後遺障害14級と12級の違い−やや胸のすく判例

○神経症状について自賠責の認定が14級を12級に認めた判例をもう一例紹介します。
平成11年3月4日判決大阪地方裁判所(平成9年(ワ)第1903号損害賠償請求事件交民集32巻4号461頁)です。

判決要旨は以下の通りです。
@卸売会社経営者が事故で約2年3ヶ月間休業を余儀なくされたとする事案で、事故後230日間は100%、その後266日間は60%、その後の317日間は20%労働能力が喪失したものとして損害算定された。
A月額55万円の報酬を得る卸売会社経営者の収入算定につき、うち50万円が労働対価に当るものと、右50万円を基礎に算定された。
B自賠責での認定は14級10号相当であるも、広範囲に障害を残し、未だ疼痛が継続する被害者の事案につき、12級12号相当の14%の労働能力を12年間喪失したものと後遺症逸失利益が算定された。
C本件事故で12級相当の下肢神経障害を残す57歳男子の事案につき、事故前から糖尿病・右肩関節周囲炎等を患うことから被告が素因減額を主張するに対し、下肢神経痛や痺れ等があったとは認められないことから、相当因果関係による素因減額が否定された。


○自賠責は次のように述べて14級としました。
 右大腿骨(骨幹部)骨折等の受傷後多様な訴えの症状については、観血的整復固定術施行後の症状の経過等より、右下肢の神経症状として把握し14級10号に該当すると判断できるが、両肩・右中指・左膝痛については事故時に受傷機転なく治療経過上等から外傷によるとする診断根拠不詳にて事故に直接起因するものとは捉えがたく、また、両肩、右母指IP、示指〜小指DIP、両膝・右足関節部の運動機能低下については当該部に骨折、脱臼等の器質的損傷は認められず、かつ症状の経過等より自賠責上の後遺障害としての評価は困難である

○これに対し、原告側では、事故当日からの入通院状況を詳しく主張し、症状固定時の状況について
自覚症状としては、両肩痛、右中指痛、右股関節痛、両膝痛、右足関節痛、両膝の可動域制限があるとされ、他覚症状等として、右手背に腫脹あり、両肩に著明な圧痛あり、筋の硬化のため両肩関節に可動域制限を認める、握力右28s、左37s(右効き)、右手関節捻挫後の右手背の腫脹、右手の疼痛のため握力は低下している、右手の機能障害残存、右手指の可動域制限あり(物をつかむ動作に制限あり)、両膝に著明な可動域制限を認め、その原因は、右については大腿骨骨折に伴う筋の硬化、左については右下肢痛のため左下肢への負担増大のための筋の炎症

肩関節の可動域(自動)は、屈曲が右155度、左130度、伸展が右35度、左15度、外転が右115度、左95度、母指IPの可動域(自動)は、屈曲が右45度、左65度、伸展が右0度、左0度、示指〜小指DIPの可動域(自動)は、屈曲が右25度、左20度、伸展が右0度、左0度、足関節の可動域(自動)は、背屈が右5度、左10度、底屈が右25度、左35度


等を医師の診断書に基づき詳しく主張しました。

○これに対し判例は、次のように自覚症状中心と認定しながらも12級を認めています。 
 原告は、少なくとも総合的に判断して後遺障害等級12級に該当すると主張するところ、右認定の後遺障害の内容及びA医師が原告の症状は自覚症状が中心であると判断していることもふまえると、右下肢痛につき後遺障害等級表12級12号(局部に頑固な神経症状を残すもの)に該当すると判断するのが相当である。