本文へスキップ

小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

任意保険会社への直接請求

損害賠償請求を保険会社に絞って行う場合の注意点1

○私は「損害賠償請求を保険会社に絞って行う理由補充」で述べたとおりの理由で、交通事故損害賠償請求訴訟は、原則として加害者本人ではなく、任意保険会社のみを相手に訴えを提起しております。

○任意保険会社或いは農協共済相手の訴訟は、現在4件ほど係属していますが、その実務上の問題点の一つはは、直接請求のための要件である加害者本人に対する請求権不行使承諾書面の送付先です。訴状に記載することで請求権不行使承諾書面とするとの主張に対し、任意保険会社から加害者本人にも直接送付されたいとの主張をされて送付したものがあります。

○二つめの問題点は、任意保険会社はあくまで自賠責保険の上積み保険であり、その支払責任を負う損害賠償額は、自賠責保険によって支払われる金額を差し引いた金額であることです。約款は次のようになっています。
B前条およびこの条の損害賠償額とは、次の(1)の額から(2)および(3)の合計額を差し引いた額を言います。
(1)被保険者が損害賠償請求権者に対して負担する法律上の損害賠償責任の額
(2)自賠責保険等によって支払われる金額
(3)被保険者が損害賠償請求権者に対してすでに支払った損害賠償金の額


○既に自賠責保険金が支払限度額全て支払済みの場合は問題は生じませんが、自賠責保険金が全て支払済みでない場合が問題になります。私の交通事故事件処理の原則は、先ず最初に自賠責保険金を請求して取るべきものは取り、その後に任意保険会社に対して直接訴えを提起します。

○問題になるのは自賠責保険金の金額に争いがある場合です。具体的には、例えば70歳を過ぎた高齢者の死亡事故の場合、普通は自賠責保険金額は1000数百万円程度です。「高齢者死亡事故の場合の自賠責保険金額が少ない理由等」に記載したとおり、自賠責保険の慰謝料基準が裁判基準の2分の1以下に留まっており、更に高齢者は逸失利益として認められる金額が普通は小さいからです。

○高齢者の死亡事故で仮に自賠責保険金が1500万円支払われた場合、死亡保険金支払限度額は3000万円ですから支払枠が1500万円残っており、裁判基準では損害額全体が4000万円とした場合、任意保険会社に対する請求は、先ず自賠責保険金既払い額1500万円を差し引き、更に自賠責保険金支払限度額残金1500万円を差し引いた1000万円とするのが正確な請求になります(この話題後日に続けます)。