本文へスキップ

小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

過失相殺・損益相殺・消滅時効

交通事故保険金の支払と時効中断

○交通事故の損害賠償請求事件では治療期間が長引いた場合、時効が問題になることが良くあります。「交通事故損害賠償請求権の消滅時効起算日」に記載したとおり、交通事故損害賠償請求権の消滅時効は原則として事故日から進行し、僅か3年で時効が完成するからです。

○当事務所で扱った事案では4歳で事故に遭い、片方の足首付近を骨折し、8年後の12歳で5p以上の脚長差が生じ後遺障害8級認定を受けて8級自賠責保険金を受領し、その直後の手術により脚長差を1pまで短縮したのですが、成長に連れ再度脚長差が生じ、事故から22年後の26歳から27歳にかけ3度の手術をして最終的に事故から24年後の28歳で足首関節機能障害等で併合7級の後遺障害認定を受け、7級と8級の差額の自賠責保険金支払を受けた例もあります。

○私は27歳の最終手術後の自賠責保険保険へ後遺障害認定申請を担当して7級後遺障害の認定を得て自賠責保険金を受領し、28歳の時7級後遺障害に基づく逸失利益、慰謝料等の支払を求める訴えを提起しましたが、相手方保険会社は、当然、時効消滅しているので支払はしないと主張してきました。

○自賠法第16条は、「(保険会社に対する損害賠償額の請求)第3条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生したときは、被害者は、政令で定めるところにより、保険会社に対し、保険金額の限度において、損害賠償額の支払をなすべきことを請求することができる。」と規定し、交通事故被害者は自賠責保険会社に直接保険金請求が出来ます。

○ここで自賠責保険会社が7級の後遺障害を認定して自賠責保険金を支払ったことは債務の承認として時効中断事由になるかどうかが問題になります。この自賠責保険会社に対する被害者の直接請求権と被害者の加害者に対する損害賠償請求権は別個独立の請求権で両者の関係は不真正連帯債務ですが、自賠責保険金の支払は加害者への損害賠償請求権との関係では時効中断事由にならないと解されています。

○次に任意保険会社からの保険金支払については、保険約款上示談代行の規定がある場合は勿論、この規定がない場合でも、加害者から保険会社への委託があると認められ、任意保険会社の支払は即ち加害者自身の支払とみなされて加害者の債務承認として時効中断事由となります。

○前記紹介の事故時から24年後の訴え提起事件は、保険会社側の時効の主張が厳しく、何より事故時から20年の除斥期間を経過している等の不利な事情がありましたが、最終的には裁判官の和解斡旋である程度の金額を取得して和解で終了しました。