本文へスキップ

小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

損保会社顧問医意見書問題

損保会社側顧問医意見書への対策

○「損保会社側顧問医意見書とその問題点」で損保会社側顧問医意見書は、医師法第20条及び個人情報保護法に違反する違法証拠であると述べましたが、その対処法にについて更に検討します。

○形式面では損保会社側顧問医意見書は違法収集証拠であり証拠能力を認めるべきではないとの主張になりますが、内容面では信用性がないとの主張に尽きます。

○この問題に早くから取り組んでいる西川雅晴弁護士「交通事故電脳相談所」の「意見書問題を考える」で、意見書についての損保側の傾向として「従来、損保は因果関係が問題となったり、被害者の心理的要因、既往症により治療期間が延びたり、客観的な傷病名に比べて、被害者の訴えが重すぎるというような場合に限り、カルテを取り寄せ、意見書を医師に作成していました。
 しかしながら、現在、特段の問題が無いと思われる事案でも損保は取り合えず、カルテを取り寄せ、そこから何か有利な材料を寄せ集めて意見書を出してくるようになっています。人間の体は多少の波があるのですから、良いところを捉えて、その時点で改善をした筈だ、それ以降、また悪くなったのは事故とは別の要因である・・・と言うような言いがかり的な言い方もしてきます。
」と述べておられますが、私の取扱事案でも同様です。

○この意見書の信用性を弾劾するためには、実際被害者を診察して主治医から意見書に対する反論意見書を作成して貰う必要があり、私の場合は、先ず私自身が質問事項を検討・記載し回答書欄を設けた照会・回答書を作成して、被害者が直接主治医に持参し、回答欄に回答を記載して頂いて完成させるようにしています。

○ところが全ての主治医が被害者に好意的・協力的とは限らず、証人にさせられるなど争いに巻き込まれるのを嫌い回答を出したがらない方も居ます。この場合は弁護士照会(医療照会)手続によって主治医の見解を伺う必要があります。または裁判所からの照会手続による方法もあります。

○この意見書問題について「意見書問題を考える」の末尾に東京地裁27民裁判官のコメントが掲載されていますので転用します。
赤本2004年版、310頁(芝田俊文判事)
「・・・私は交通部は3度目ですが、今回久しぶりに交通部に来て感じた印象はカルテ等の医療記録の送付嘱託がかなり多くなっているということでした。
保険会社の代理人がカルテを取り寄せ、顧問医の意見書を提出するなどして争うことが多いようです。治療経過や後遺障害の内容・程度が問題となるケースがあることは認めるところですが、そうではなく、何か争うところはないかととりあえず証拠収集する等して、いたずらに医療訴訟化させることは問題ですし、これは訴訟を長引かせる原因ともなります。代理人としても、本当に医療記録等が必要なものについて、事件を選んで頂きたいと思っております。


赤本2003年版、265頁(河邊義典判事)
・・・保険会社の代理人をされる先生方への要望ですが、平素、交通事件を担当していますと、なぜ、このような事件でここまでする必要があるのかと思うくらいに、保険会社の代理人が、カルテを取り寄せ、顧問医等の意見書等を提出したりして、原告の請求を争う場合があります。保険会社が争っているからと言って、訴訟で何でもかでも争うというのではなく、法律の専門家と言う観点から事案を検討していただき、真に争うべき事件は争い、そうでない事件は保険会社を説得して早期に紛争を解決するという姿勢で訴訟に臨んでいただきますよう、重ねてお願いをいたします。