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小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

自賠責保険の話

自賠責保険金等内金返済の充当方法

○交通事故で傷害を受けて重傷を負い、入院や通院をして休業を余儀なくされている場合、症状が固定して損害額が確定する以前に加害者側任意保険会社から休業補償金等の損害賠償金内金支払を受けることがあります。交通事故が勤務中などで労災に該当する場合、任意保険会社からの支払だけでなくも休業補償労災保険金が支払われます。また症状が固定して自賠責保険会社から後遺障害保険金が支払われる場合もあり、これらは最終的が損害賠償金から既払金として控除されます。

○休業補償金や後遺障害自賠責保険金等の既払金を損害賠償額総額から控除する方法については、「交通事故事件損害弁済充当表作成」にも記載したとおり、これまで多くの弁護士は、損害総額元金から控除しており、私もそうでした。

○しかし平成16年12月20日最高裁判決の事案では、平成11年2月24日交通事故で死亡した被害者の遺族は平成13年2月28日に自賠責保険金約3000万円を受領し訴え提起に当たってこの3000万円は、まず損害金の全額に対する事故の日から支払日までの民法所定の年5%の割合による遅延損害金に充当され、次いでその残額が損害金の元本に充当されると主張しました。

○これに対し加害者側は不法行為による損害賠償請求権は、先ず損益相殺的な処理を行った後の真の損害額について成立し、その処理をする前の見掛けの損害額全体について損害賠償請求権が成立するものではないので、その見掛けの損害額全体について遅延損害金が発生するものではないと主張し、原審の平成15年12月17日東京高裁判決は加害者側の主張を認めました。

○これに対し平成16年12月20日最高裁判決は、交通事故による損害賠償債務は事故日に発生し且つ何らの催告なく遅滞に陥るもので(昭和37年9月4日最高裁判決)、自賠責保険金等によって填補される損害についても、既に事故時から自賠責保険金等の支払日まで遅延損害金が発生しているのであるから、自賠責保険金等が支払時における損害金の元本及び遅延損害金の全部を消滅させるに足りないときは先ず発生済み遅延損害金に充当されるべきであるとして前記原審判決は法令の解釈適用を誤った違法があると断じました。

○ここでポイントは、「自賠責保険金等によって填補される損害」と「等」が入っており、自賠責保険金に限定されていないことです。前記の通り、事故で休業した場合、損害賠償全額支払時前に任意保険会社からの休業補償金等の損害内金支払を受けるのが普通であり、この最高裁判決の理屈からはこれらの内金支払全てが先ず事故日から発生している遅延損害金に充当すべきことになります。「交通事故事件損害弁済充当表作成」記載の通り、この充当方法の違いにより最終的損害金額が大きく異なる場合もありますので、これからは内金充当は先ず遅延損害金からとすべきでしょう。
注:ただし「社会保険給付については元本充当すべきとの最高裁判決2」記載の通り、平成22年9月13日最高裁判決では、各種社会保険給付に関しては、「その制度の予定するところに従って,てん補の対象となる損害が現実化する都度ないし現実化するのに対応して定期的に支給され,又は支給されることが確定したものということができるから,そのてん補の対象となる損害は本件事故の日にてん補されたものと法的に評価して損益相殺的な調整をするのが相当」としており、事故日に元金から充当すべきことになります。