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小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

任意保険会社への直接請求

交通事故被害者の任意保険会社に対する直接請求

○「被害者の保険会社に対する直接請求−原則は不可」に記載したとおり、被害者は自賠責保険会社に対しては自賠法によって直接請求が認められましたが、任意保険会社に対しての直接請求は規定が無く、解釈上も出来ないとされていたため、当初は加害者への損害賠償請求と併合して保険会社に対する加害者の保険金請求権の代位訴訟が提起されていました。

○それが昭和49年3月1日発売家庭用自動車保険(FAP)に初めて対人事故について被害者の保険会社に対する直接請求権の規定が設けられ、以降、これが昭和50年2月1日発売業務用自動車保険(CAP)、昭和51年1月1日発売自家用自動車保険(PAP、BAP)と続き、更に昭和57年10月1日発売自家用自動車総合保険(SAP)で対物事故についても直接請求権が認められ、今日に至っています。

○自家用自動車総合保険(SAP)で認められる被害者の保険会社に対する直接請求権は、保険会社と保険契約者との間で締結される責任保険契約で、被害者に対して直接請求権を付与する第3者のためにする契約(民法第537条)が成立し、被保険者が被害者に対して負担する損害賠償債務を保険会社が重畳的に債務引受をして、第3者である被害者の受益の意思表示は、保険会社に直接請求をしたときになされたものとされ、この被害者の直接請求権は、自賠法第16条の規定する直接請求権と同様損害賠償請求権であり保険金請求権ではないとされています。

○この直接請求権の発生要件は、
@対人事故により加害者(被保険者)が法律上の損害賠償責任を負担すること
A保険会社が被保険者に対してん補責任を負うこと
ですが、@は必ずしも賠償額の確定を意味するものではなく、Aの要件具備の場合、事故発生と同時に直接請求権が発生するとされています(最判昭和57年9月28日民集36-8-1652)。

○但し直接請求権が発生しても権利行使するには「被害者の保険会社に対する直接請求−可能な3要件」に記載したとおり、約款第6条2項各号の要件充足が必要でまとめると以下の通りです。
@損害賠償責任額の確定(1,2号);判決の確定、裁判上の和解、調停、示談の成立
A損害賠償請求権不行使の書面による承諾(3号);これが「保険会社示談代行員による免責証書での示談契約」です。これについては別項で詳述します。
B損害賠償額の保険金額超過(3号);この場合保険会社は保険金相当額を支払い事故処理から解放されます。
C被保険者の破産または生死不明と相続人なくしての死亡(5号);この場合被保険者と被害者との間で損害賠償額確定が不可能になるので直接請求が認められます。

○被害者の直接請求権と加害者の(被保険者)の保険金請求権は、当然、被害者の直接請求権が優先します。