○「
被害者の任意保険会社に対する直接請求1」で紹介した昭和54年10月30日 東京高裁 昭53(ネ)2214号・昭54(ネ)924号判決の第1審判決の一部が判りましたので、ご紹介します。
また東京高裁判決の理由の「四 被控訴人保険会社に対する請求について」の全文も判りましたので、補充しておきました。出展は、判例時報998号57頁の他に
自動車保険ジャーナル・第284号(原審)と
自動車保険ジャーナル判例システムデータです。
○これらの判例については現在検討中ですが、ポイントは以下の通りです。
・家庭用自動車保険普通保険約款第6条第1項によって
被害者が保険会社に直接保険金請求権を有しない。
・同約款による保険会社の責任の法的性質は、
保険者会社が、被保険者即ち加害者に対し、同人が被害者に支払うべき損害賠償金債務の引受けを約したものである。
・被保険者が保険会社に対して有する
保険金請求権の代位請求も債権者代位権の行使要件たる債務者の無資力がない限り出来ない。
東京地裁 昭和53年8月31日判決
事件番号 昭和51年(ワ)第9268号
<出典>
自動車保険ジャーナル・第284号
六 被告保険会社に対する請求について
1 請求原因6の一の事実は当事者間に争いがない。
2(証拠略)によれば、本件保険契約の内容をなす家庭用自動車保険普通保険約款第6条第1項に「対人事故によって被保険者の負担する法律上の損害賠償責任が発生したときは、損害賠償請求権者は、当会社が被保険者に対しててん補責任を負う限度において、当会社に対して第3項に定める損害賠償額の支払を請求することができます」旨の規定がある。
右規定の形式は同条第2項と独立し、内容上も第2項所定の事由がある場合に限定していないことが明らかである。その他の諸規定の関係からいっても、第6条第1項の規定を損害賠償請求権者が保険会社に対し、第2項所定の事由がある場合に限定されないで損害賠償請求権を行使することを容認した趣旨と解して矛盾を生ぜず、その外被告保険会社が右趣旨と異なる意思で右規定を設けたと解しなければならない根拠もその証拠もない。
3 原告訴訟代理人が力説するのは保険金の直接請求であるが、右6条1項で支払われる金員の法的性格に対して誤解がある模様で、要するに、被告保険会社が原告らに対し、直接、損害賠償すべきことを求める趣旨と善解できないわけではない。
従って、原、被告のその余の主張について判断するまでもなく、以下の結論に導かれる。(以下略)