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小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

任意保険会社への直接請求

損害賠償請求を保険会社に絞って行う理由等

○私は、訴えを提起する場合、約款6条A(3)に基づき「被保険者に対する損害賠償請求権を行使しないことを被保険者に対し書面で約束し」、被告は任意保険会社だけに絞り、加害者自身は被告にしない方が戦略的にも有効ではないかと考えております。

○その理由の第1は、加害者側に保険会社が付いている場合、加害者の代理人としては保険会社の費用で保険会社の顧問弁護士が、最終的には加害者の利益のためではなく、保険金支払を可能な限り少なくすると言う保険会社の利益のために審理を行っている実態に合わせることです。

○第2の理由は、加害者本人の民事訴訟における証拠方法としての違いがあります。先ず加害者自身を被告にしない場合、例えば事故態様や過失割合等に争いがあり、加害者自身の供述が証拠として必要な場合、加害者自身は被告本人ではなく証人として証拠方法となります。証人とは、自己の経験によって知った事実を訴訟において供述する第三者(訴訟当事者及び法定代理人や代表者以外の者)をいい、証人尋問は、質問に答える形で証人に供述させる取調べの方法です。

○加害者自身が証人となった場合、原則として「宣誓書良心に従って本当のことを申し上げます。知っていることを隠したり、ないことを申し上げたりなど、決して致しません。右のとおり誓います。」と記載した宣誓書を朗読し、これに署名押印させた上で、質問と回答に入り(民訴則§112B等)、偽証した場合、刑法第169条で「法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、3月以上10年以下の懲役に処する。」と規定された偽証罪になります。

○加害者自身が被告となった場合は、当事者としての証拠方法となり、当事者尋問(当事者本人の尋問)がなされます。当事者本人も原則として証人と同様に宣誓はしますが、それでも証人ではないので虚偽の陳述をしても刑法の偽証罪に問わません。民事訴訟法第209条で「宣書した当事者が虚偽の陳述をしたときは、裁判所は、決定で、10万円以下の過料に処する。」と規定されているだけです。

○このように加害者本人を証拠方法とする場合、被告としての当事者尋問よりは第3者としての証人尋問の方が偽証罪という罰則付きのため真実発見に資するのではないかと考えられることが加害者本人を被告にしない理由の一つです。

○また加害者(被保険者)側は、あくまで万が一交通事故加害者となった場合、被害者に適正な損害賠償金を保険会社から支払って貰うために保険料を支払って保険契約を締結するわけですから、保険会社に適正な保険金を支払わせるのが加害者側の正当な権利であり、この権利意識の自覚を持って貰うことも被告から外す理由の一つです。要するに被害者と加害者が一体となって保険会社に適正な損害賠償金を支払えと要求することが最終的な目的です。